クロスオーバー小説「久しぶりだな、了見」
「何故ここにいる。藤木遊作」
「ここはファミレスだ。俺がいても何もおかしくはないだろう」
そう言いながらドリンクバーを注ぐ遊作の姿に、了見は頭痛がしそうだった。
「あ!リボルバーさん!」
「は?ロボッピ、いくらなんでもこんな真っ昼間の街中にリボルバー先生が……げぇ!? いる!!」
騒々しくも失礼な言葉で、眉間に皺がよりながら了見はギロリと、要注意監視対象たちを睨み見つけた。
「随分な言い草だな。闇のイグニス。人をアカウント名で呼ぶとは、余程学習機能が低下しているらしい」
「にゃんだとぉ!?」
「よせ、Ai。さっきのはお前が悪い」
コップを片手に遊作はAiの肩にポンと、手を置いた。
「遊作ちゃんまで味方してくれないなんて!酷いっ!」
と言いながらAiはシナを作りながらもたれかかる。だが、遊作は気にした風もなく、むしろ邪魔臭そうに一瞬顔を顰めながらも、特に何もいうことなく了見に向き合った。堂々とした放置である。
「了見も昼食か?」
「リ…了見さんが外食なんて珍しいっすね!スペクターさんはどうしたんすか?」
「あ、あぁ……備え付けのキッチンに不具合があってな。スペクターはメンテナスに立ち会っている」
淡々とした質問の後にロボッピのキラキラした目と共に続けられた世間話に、了見は動揺も隠せないまま言葉を返す。それを気にかけることもなく、遊作は「そうか」と何かを納得したかのように頷いた。
「ちゃんと定期点検はしないと駄目っすよ!」
「そーだ!そーだ!家電のメンテナスは人間の義務だー!」
真剣な顔をしたロボッピに続いて茶々を入れるAiに思わず反論を返そうとして、了見はグッと抑え込んだ。今はそんな細事に関わっている場合ではないのだ。
「藤木遊作、本当にお前はここがどこかわかっているのか?」
眉間に皺を寄せながら、了見は再び遊作へと視線を向けた。
遊作はその表情を訝しみながらも、淡々と受け応える。
「だから、ファミレスだろう」
「そうっす!ネコ型ロボットさんが配膳をしてくれるファミレスっす!しかも、ただのファミレスじゃないっすよ!オイラのためにごしゅ……遊作さんが連れてきてくれた特別なお店っす!」
「なぁに言ってんだ!お前はオマケ!俺と遊作ちゃんのシンコンリョコーに勝手についてきやがって!ねぇ〜!ゆーさくちゃーん!」
「黙れAi。意味もわかっていない言葉を使うな。それと、旅行に勝手についてきたのはお前もだろう」
甘えた声を出しながら抱きつこうとするAiを押し退けながら、遊作は声を潜めて了見に訊ねる。
「それより了見、お前がそこまで警戒しているということは…何かあるのか?」
チラリと心配そうにAiをみる遊作を見やりながら、了見は嘆息した。
遊作の懸念事項は確かに重要だが、今回のこの場所においてはあまり意味をなさないものでもある。
「何かある方がまだマシだったろうな……」
「それはどういう……」
どこか遠い目をした了見に疑問を投げかける前に、答えは突如としてやってきた。
「キャーーーーーーーーー!!!!」
突如響いた甲高い悲鳴に、Aiは遊作を抱え床に伏せる。
「あっ」
突然のことに遊作の手から溢れたコップは地面を濡らしながらコロコロと転がった。
「どうやら、起こってしまったらしいな」
「起こってしまった…てどういうことだよ」
剣呑な目つきで了見を睨みつけるAiを見下ろしながら、了見は淡々と告げた。
「事件が、だ」
「し、死んでる…!?」「おい、アンタ大丈夫か!?」「きゅ、救急車を早く呼べ!」「それよりも警察が先じゃないか!?」
一気に慌ただしくなった店内に、Aiは茫然とした。
「は?」
「おい、Ai……いい加減に」
「ちょちょちょ!ちょっとどういうこと!?!?じ、事件って言った!?何それ事と次第によっては遊作のことは絶対離さないから!」
「なんだ。そんなことも知らずにこの町にきたのか?」
剣呑な目つきで見下ろす了見を遊作は見上げた。先程まで騒ぎ立てるAiを押し上げようと奮闘していたようだが、ピクリとも動かない体に諦めたのか地面に這い蹲りながらも、その様はどこか堂々としていた。開き直ったのかもしれない。
「俺たちは偶々この町に立ち寄っただけだ。そんなに事前知識のいる場所なのか?」
遊作のその質問に了見は少し視線を彷徨わせた後、