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    rechi_taya

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    rechi_taya

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    すーーき 浮奇の吐息を閉じ込めておきたいスハの話

     浮奇ってどうしてあんなにも甘いんだろう。
    私に微笑む表情も、ちょっと踏み込んだおねだりも、腕に触れるその細い指も、全部甘ったるい。特に甘いのはその声に混じる吐息。
     浮奇は私のところに縛り付けられない。一緒に暮らして、寝室から先へはいけないよう足枷をつけて一生私以外見れないようにしてやりたい。あぁ、でも足枷は浮奇の白い肌に痣を作ってしまうな、それはよくない。自分が付けた跡ならいいけど、無機質な金属が付けた跡が一生残るかと思えばそんな方法は取りたくないと思った。もし浮奇を閉じ込めておけたら、なんていう妄想はいつも浮かんでは消え、浮かんでは消えの繰り返しだ。
     そもそも、浮奇の心が移ろいやすいのは彼の魅力でもあるから、それを無くしてしまえば私の好きな浮奇じゃなくなってしまう。「私だけの浮奇」には一生ならないんだ。

      でも、そんな浮奇の吐息だけでもガラス瓶に閉じ込めておけたらどんなに幸せだろう。浮奇の話す声はいつも吐息混じりで、その吐息に色がついてるんじゃないかって思うくらい魅惑的だ。
    例えるならきっと浮奇の目みたいなピンクと紫が混ざった幸せで素敵な色。それだけでも留めて置ければ、私から離れないで欲しいというこの思いも、少しは満たされるかもしれない。

     金平糖みたいに、一つ一つを小さな砂糖菓子にしてとっておきたい。琥珀糖でもいいな。光にかざせばキラキラ光ってより大切にできそう。
    今だって私の隣に座る浮奇はSNS上でほかの男に甘く、それでいて挑発的な言葉を送ってるけど、これを見て沸き立つこの醜い嫉妬心も、その砂糖菓子を1つ口の中に放り込んでしまえば甘さでなくなってしまいそうだ。

    「どうしたの」
    一通りSNSをチェックし終えた様子の彼は、私の方に顔を向け、そう尋ねた。
    「浮奇のこと考えてただけだよ」
    「俺のどんなこと?」
    「浮奇の吐息は甘くて綺麗な色がついてるんだろうなって」

    「俺、そんなこと言われたの初めてだよ」
    驚きと呆れとほんの少しの恥ずかしさを混じらせたような、そんな声で返される。

    「そう?私はずっと思ってたよ、私にちょっかいかける時の声もイライラしてるときにつくため息も全部甘そう」
    きっと触れたら綿あめみたいになるんだろう、じわっと溶けてより色濃く私の指に残り続ける。綿あめ、金平糖、琥珀糖、全部砂糖でいっぱいなお菓子たちは浮奇から出てくる息にそっくり。

    「浮奇の吐いた息を閉じ込めておけたらなって」

    そう言う私の膝の上に跨ると、首の方へと腕を回す。浮奇はこの格好が好きだ。主導権を握れて、それでいて甘えられるからお気に入りらしい。

    「俺の吐息だけ掴まえておいても俺はそこに居ないよ」
    そう言いながら私の首を爪先でなぞりあげる。ゾクゾクとした痺れにも似た感覚に、やっぱり浮奇がくれるものは全部甘いんだと感じる。

    「そうだね、でも今はそれでいいんだ」
    「へぇ?“今は”ってことはそのうち俺を傍において全部スハのものにしてくれるの?」
    私のつい出てしまった言葉に目ざとく反応した浮奇は楽しそうに声を弾ませる。
    「それは浮奇次第かな」
    「俺はいつでもスハのものだよ」
    そう言って短く唇を触れ合わせる。
    やっぱり吐息まじりの声で浮奇は思わせぶりな言葉を私に与えては惑わせてくる。

     きっと私は浮奇のその吐息に絡められ身動きが取れなくなってるんだろう。それでもいいな、と思い2人の息が零れないように再び唇を合わせた。
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