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    「来年は負けないよ?」
    「それはこっちの台詞だ!」

    #司類
    TsukasaRui

    ワンライ『鏡開き』『カードゲーム』(2023/01/11) 新春ショーで忙しかった日々も落ち着きを取り戻し、緩やかに日常がもどり始めたある日の夜。
     端末が振動し文字が浮かび上がった…類からだ。

    「もしもし、オレだ」
    『司くん。夜遅くにすまないね。早速なのだけれど………明日の休みの予定はあるかな?』
    「明日か?……別に、無いな」
    『……もし良ければ、明日僕の家に来ないかい?』

     類からの急な誘いに思わず体温が上がる。
     実は明日の休みはデートに誘おうとしたが、連日忙しかった為休みも大事だろうと遠慮していたのだ。
     類に誘わせてしまうとは…まだまだ類の勉強不足だな。

    「ああ、いいぞ。なにをするんだ?」
    『それは明日のお楽しみ…かな。特別な荷物は要らないから、明日昼過ぎにガレージまで来てくれ』
    「そうか、わかった。では明日、そちらに向かう」
    『うん、ありがとう。気を付けてきてね。…おやすみなさい。司くん』
    「あぁ、おやすみ。類」

     通話が終わり、端末に充電器を繋ぐ。
     明日の為に早く寝なければとベッドに潜り込んだが、暫くは心臓がうるさかった。

    ―――

    「よ、かった……」

     司との電話が終わり、ソファに座り込む。
     実は正月明けの休みに向けて、準備はとっくに出来ていた。
     しかし、なかなか司に声を掛ける勇気が出ないまま前日になってしまったのだ。
     来年も休みがあるとは限らない…明日を逃したら一生機会が訪れないかもしれない…そんな思いが、最後の最後にコールボタンを押す勇気に繋がった。

    「司くん、喜んでくれるかな…」

     明日の計画を再確認しながらソファで横になり、瞳を閉じた。

    ―――

     翌日、母親に土産を持たされ類の家へ赴く。
     類の家に何回か訪れた際「直接ガレージに入ってきてしまって問題ない」と言われて以降、家のチャイムは鳴らしていない。
     ガレージは開いていたので声を掛ける。

    「類、来たぞ」
    「やぁ、司くん。そのまま上がってくれるかい」
    「ああ」

     靴を脱ぎ、ガレージに入る。
     妙に壁の辺りがごちゃごちゃしているように感じていると、足元になにか広げられているのに気づく。
     何も書かれていない長方形の紙がいくつか散りばめられており、近くには鏡餅と大中小の大きさの槌と見覚えの無い機械が置いてあった。
     これらを配置するために、普段地面に散らばっている物が壁に追いやられているのだろう…あとで、片付けを手伝わなければ。

    「これは…」
    「司くん。早速だけれど、一緒に運試しをしないかい?」
    「運試し…これを使うのか?」
    「そうだよ。物は試しさ…司くん、面子をやったことはあるかな」
    「面子…つまり、この四角い物をひっくり返せば良いのか」

     類から床に散らばっている物と同じ長方形の厚紙が手渡される。
     とりあえず目に付いた長方形に向かって、厚紙を叩きつけた。
     パシンと気持ちのいい音を響かせ、床に散らばっていた厚紙がひっくり返る。
     ひっくり返った面子に書かれていたのは…金色の槌の絵だった。

    「さすが司くんだね。いきなり金の槌を引くとは」
    「金の槌だと何が起こるんだ」
    「金の槌ではこの三つの槌の内、一番大きいサイズを使用できるんだ。その槌で、鏡餅を叩いてくれるかい」
    「まさか、鏡開きか…?ご両親の分は?」
    「親とは別に鏡開きをしたよ。これは、司くんとのために用意しておいた鏡餅さ」

     オレとの、ために。
     それはつまり…正月の時から、この時のために用意をしていたという…こと……
     思わず類の方に視線を向けてしまうと、類は照れくさそうに目を逸らした。

    「……司くん。早く叩いてくれるかい」
    「…え、あ、あぁ、すまん!いくぞ!!」

     一般的によく見るサイズの槌――一番大きいサイズと類は言っていたが、ほかの二つが異様に小さいだけだ――を受け取り、鏡餅に振り下ろす。
     ゴン、と鈍い音と共に鏡餅にヒビが入り、欠片が生まれた。
     類は生まれた餅の欠片を手に取ると、機械の蓋を開ける。
     蓋が開いた先にはホットプレートのような板が配置されており、類は餅の欠片を置くと蓋を閉じた。
     ピッと音が鳴ったかと思うと、機械からもくもくと湯気が浮かび始める。

    「何が、起きているんだ…?」
    「中で水蒸気を作って、餅に水分を与えているのさ。加工しやすい柔らかさに戻しているんだよ」

     加工という言葉が気になったが、ひとまずは機械が停止するのを待つ。
     機械からの音が止み類が蓋を開けるとそこには、平らになり程よい焦げ目の付いている餅があった。

    「醤油を塗って、即席煎餅の出来上がりさ」
    「鏡餅から、煎餅を作るとは……」

     類がどこからか刷毛と醤油を取り出すと、出来上がった煎餅に醤油を塗る。
     そして出来上がった煎餅が皿に移され、手渡された。
     火傷してしまわないよう少し様子見をして、手に取り口に含む………うん、旨い!

    「もう気付いていると思うけれど、金の槌が描かれている面子をひっくり返せば通常サイズ。銀、銅と徐々に小さくなっていくよ」
    「いや、他の二つは小さ過ぎるだろう…金の槌を引かないと煎餅を手に入れるのは難しくないか?」

     二つ合わせて掌に乗る程に極端な小ささをしている二つの槌を眺めていると、類が立ち上がる。

    「それはどうだろうね?次は僕の番だ……よっと」
    「おぉ……銀の槌か」
    「では、この二番目に大きい槌で…!」

     コン、と軽い音が響いたが…先程の影響が残っていたのか欠片が出来上がる。
     どうやら槌の大小が全てでは無さそうだ。
     類が再び、出来た欠片を機械に入れ電源を入れる。
     餅が煎餅になっている間に、次の面子をひっくり返した。

    ―――

     影も形も亡くなった鏡餅の跡地を眺めながら、ソファに座り司が土産に持ってきた蜜柑を食す。
     勿論毎回面子をひっくり返せた訳でも無いし、必ず欠片が生まれた訳では無い。
     だが、鏡餅煎餅にありつけた数は五分五分だった。
     勝負は引き分けだ。

    「まさか、お前がここまで手の込んだ遊びを用意しているとは思わなかった」
    「楽しんでもらえて何よりだよ」

     本当は、鏡開きは親とはやっていない…家に鏡餅は一つしかなかった。
     元々きちんと鏡開きをする家庭ではなかったため、「友人と鏡開きをするために」残してもらっていたのだ。
     あとは、リビングで流れていたテレビ番組から少しずつインスピレーションを受け…今回の面子遊びの為の用意をしていたのだった。

    「来年の鏡開きは、オレに企画させてくれないか」
    「来年、かい…?」
    「あぁ!来年は、今年に負けないくらい面白い鏡開きにしてやるぞ!」

     まだ今年は始まったばかりだと言うのに、既に来年に向け期待を膨らませている司の姿に笑みがこぼれてしまう。
     そして、来年も類と共に鏡開きをすることまで司の中では確定事項なのだと思うとむず痒くなる。
     もう既に案が浮かんでいるのかアレコレと喋り出す司の姿は、夕陽に負けないくらい輝いていた。
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    たまぞう

    DONE先にポイピクに載せます。
    日曜になったら支部に載せます。
    将参のお話。この間のとはセカイは別になります。
    ちょっと痛いシーンがありますがそこまで酷くないです。
    寧々ちゃんが森の民として出ますが友情出演です。
    最初と最後に出ます。
    何でもいい人向けです。
    将校は参謀と同じ痛みを感じて(物理的)生きたいというよく分からないお話ですね。
    誤字脱字は見逃してください。それではどうぞ。
    将参(友情出演寧々)「ねぇ、その首の傷痕どうしたの?」
    「っ、っっ!?」

    仕事の休憩中に紅茶を飲んでいた時のこと。
    正面の窓から現れた少女に私は驚き、口に含んでいた紅茶を吹き出しそうになった。

    「っ、ごほ…っ、げほっ、ぅ………。来ていたのですか…?」
    「うん。将校に用事があって……というか呼ばれて」
    「将校殿に?」

    森の民である緑髪の少女ーーー寧々は眉を顰めながら、私の首をじっと見つめている。そこには何かに噛み千切られたような痕があった。

    あの日のことを話そうか、少し迷っている自分がいて。
    どうしようかと目線を泳がせていると、寧々が強い力で机を叩く。

    「ほら!話して!」
    「………わっ…!わかり、ました」








    あまりの気迫に押された私はぽつりと語り始めた。
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