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    #司類
    TsukasaRui

    ワンライ『愛を込めて』『手作り』(2023/02/15) 二月十四日…カレンダー上は特に祝日でもなんでもないただの平日。それでも学校にいる生徒の多くが浮き足立った雰囲気を作り出している。女子は集まりコソコソと話をしているし、男子は何事もないかのように靴箱や机の引き出しを覗き込んでは一喜一憂している。恋人や家族など大切な人に贈り物をするという日が派生し、好きな人にチョコレートを送る日となっているこの日はチョコと共に告白し結ばれるカップルも少なくない。
     しかし周りの浮ついた雰囲気に呑まれる事無く通常運転の天馬司は、それでも上履きに履き替えるべく開いた靴箱から零れ落ちてきた小さな箱を慌ててキャッチする。予め用意しておいた紙袋を広げ、靴箱の中に詰め込まれた小箱を入れると教室へ向かう。変人いう不名誉な肩書きを与えられている司だが、それはそれとして女子に好意的な目を向けられることも少なくなかった。昔多量の箱に困惑していた時、他の男子が持参した紙袋に箱を詰めているのを見て以降は、バレンタインデーは必ず紙袋を持参するようにしている。貰える数以上に、貰った想いを落としてしまったりして無下にしたくないからだ。バレンタインならば周りにバレることなく好意を伝えることの出来る絶好の機会な為、こうして直接手渡されることは少なくとも沢山の好意を紙袋に詰める日となっている。
     教室に入り自席に向かうと、たどり着く前から見える小箱に周りからの視線が鋭く刺さる。バレンタインデーチョコを貰った数で人間の価値を決めんとばかりに日々戦っている一部の男達からすれば、そのような気配を見せていないくせに沢山の『価値』を手に入れている男は敵にあたってしまうのだろう。先程の紙袋に、引き出しの中にも入っていた小箱を入れる。
     靴箱の分も含め同封されている手紙の数に少しだけ焦りが生じる。放課後は委員会が有るし、えむにセカイに来るよう呼ばれてもいる…出来れば放課後前に読み切ってしまいたい。今日中の休憩時間で全て読み切ることが出来るだろうか…いや、読み切らなくてはならない。それが、好意を貰った人間がするべき責務だ。相変わらず周りから向けられている敵意の視線を無視して、最初に目に付いた手紙から読み始めた。

    「――それで、今も忙しそうにしているという訳かい」
    「あぁ…すまないな、食べている最中だというのに」
    「僕は別に構わないよ。司くんがやりたいようにするべきだからね」

     昼休憩…本来は昼食を摂る為に長めに設定された時間。
     屋上で、朝コンビニで買っておいたサンドイッチを五分で胃に押し込み、手紙を読み進めた。隣でのんびりと昼食を食べている類もそれなりな量チョコレートを貰っていたようだが…この落ち着きようを見るに授業中に読んでいたのだろう…
     貰った手紙の内容は、ほとんどがショーキャストとしての司への応援メッセージやクラスメートらからの感謝のメッセージで、クラスメートの男子達に羨ましがられる甘い内容はそこまで多くなかった。小箱の数に対して多くないだけで、無い訳では無いのだが…これに関しては早急にお断りの手紙を出し、応えるしか無いのだろう。せっかく向けてくれた好意に応えることが出来ないのは心苦しいが、そんなことは言っていられない。司が応えることが出来るのは、後にも先にも愛しの恋人ただ一人だけだからだ。
     そのまま特に言葉を交わすこと無く、今日の昼休憩が終わった。

    ―――

     無事に手紙は読み切ったが委員会で皆を待たせてしまいながらも集まったセカイで、えむから手作りのチョコ人形、寧々から手作りアロマキャンドルを受け取る。まさか寧々からもバレンタインの贈り物をされるとは思わなかった…ホワイトデーには気合いを入れてお返しをしてみせなければ。
     えむと寧々からの贈り物にセカイで笑顔が溢れている中、ふと寧々と会話している類が目に入る…正確には、指先だが。
     二人の会話が一段落し寧々が離れた頃を見計らい、類に声を掛ける。

    「類、お前……その指はどうした」
    「…っ!……司くんには、バレてしまったね。実は昨晩……機械をいじっていたら軽い怪我をしてしまって」

     そう言いながらもそっと手を背に隠す類に、腑に落ちない気持ちがふつふつと湧いてくる。そういえば今、類の手がセーターに隠れていなかっただろうか。
     流石に寒くなると腕まで捲らなくなるが、それでも可動域がどうとかで手首が見える程度までは捲っていたはず。

    「…全く。怪我には気をつけろといつも言っているだろう」
    「……ごめんね、気をつけるよ」

     類の言葉を信じたと思われたのか気を抜いたらしい、隠された手首の辺りが少し見える。
     やはり手首はセーターで覆われていて、指はその中に隠されていた。

    「そういえば、後で話があるから屋上に来てもらってもいいか」
    「屋上、かい?…うん、わかったよ」

     今深追いしても逃げられてしまう可能性があるので、逃げ道を塞ぐことにした。

    ――皆が思い思いに感想を言い、感謝を伝え合い解散となった後、司と類は屋上で顔を合わせていた。
     昼食を食べる時のように、フェンスを背に座る。
     なんて切り出したものかと考えていると、我慢出来なくなったのか類に促される。

    「それで、話ってなんだい?」
    「あぁ、その…寧々に貰ったアロマキャンドルを、オレのと見比べたくてだな…」

     口実に使用してしまったことに申し訳無さを感じつつ、切り出す。そして重ね重ね申し訳無さを感じつつ……類が鞄に手を伸ばした所を狙って腕を掴み、セーターを剥がした。
     セーターから出てきたのは、とても軽い怪我とは思えない絆創膏だらけになった手だった。
     先程違和感を感じるきっかけとなった指先は、絆創膏で覆いきれなかった部分だったようだ。

    「…軽い、怪我だと言ったな?」
    「………その、これは………」
    「…ちゃんと、正直に話してくれ」
    「…………嘘、ついて…すまない。その、ね……あの………」

     類が珍しく吃ったので頭を傾げる。
     一先ず逃げる意思はないようなので手を離すと、その手は鞄へ入っていった。
     しまった、何か道具を使われ―――

    「……これを………作って…いた時に、できた傷なんだ…」
    「………これ、は……」
    「その…日頃の、感謝を……込めて……」

     手を離した事を後悔しようとしたところで差し出されたのは、弁当箱程の大きさをした箱だった。今日紙袋に詰めたどの箱よりシンプルな無地の生地で包まれた…この箱は…

    「…………………」
    「……いや、だったよね。いいんだ、いくら恋人とはいえこんな長身の男からのバレンタインチョコなんて何の可愛げも――」
    「――類!」

     思わず思考停止してしまった事を悪い意味で捉えられてしまったようで慌てて制止し、差し出された箱を受け取る。
     少し萎縮してしまった類の頭を撫でてやると、伏せられた顔が上がる。

    「開けてもいいか?」
    「…………どうぞ」

     許可を貰い、貰った箱を早速開封する。
     シンプルな箱に入っていたのは…星型、ハート型、ダイヤ型…様々な形をしたチョコレートだった。
     所々欠けているそのチョコに、愛おしさを感じる。

    「食べていいか?」
    「……体に害は無いと誓うけれど……味の保証は、できないよ」

     一番最初に目に入った星型のチョコを手に取り、一口サイズほどのそれを口の中に入れる。
     此方の様子を伺ってくる類に笑ってみせると、彼は漸く笑顔を見せてくれた。
     絆創膏だらけの類の手を、両手で包み込む。
     少しでも早く、良くなりますように。

    「……ありがとうな、類。残りはゆっくり食べさせてもらう」
    「………こちらこそ…受け取ってくれて、ありがとう。司くん」
    「ホワイトデー、期待していろ!」
    「……ありがとう」

     受け取ったチョコを紙袋ではなく鞄にしまう。
     あまり物の優劣は付けたくは無いのだが…恋人からの贈り物を特別扱いする事くらいは、許して欲しいと思う。

    ―――

     ガレージにたどり着くと、ソファの足元に鞄を置きソファの上に倒れる。
     視線の先では、ラッピング用素材が床中に散らばってしまっている。
     後で片付けなければと思考しながらも、今はもう少しだけこの余韻に浸っていたい気分だった。

    「つかさくん……よろこんでくれた」

     ボロボロになってしまった類の手を包みながら向けてくれた笑顔が、脳裏に焼き付いている。
    ――イベントに肖って司に感謝の気持ちを伝えたいと思い、文明の利器を利用し情報を集めた。
     包丁を使う機会が少なかったせいで、チョコを刻む際己の指にも傷を入れてしまうアクシデントは多発してしまったが…それでも、形にしたい気持ちは痛みに負けることなく完成までこぎつけた。
     簡単なラッピングを行い、あとは翌日…昼休憩辺りの周りに誰もいないタイミングを狙って、チョコと共に感謝を伝えるだけとなった。
     なったの、だが…司の元にはそれはもう沢山の想いが贈られていた。
     司は「せっかくの好意だが…断らせてもらわなくてはな…」と言いながら読み進めていたので、いくつか本命のものも含まれていたのだろう。
     類の我儘で周りにこの関係は伏せているというのに自分が皆の司を独り占めしてしまっている罪悪感が生まれ、そのうえで己の想いを伝えることは…出来なかった。
     それでも司は、周りが気づかなかった類の怪我にいち早く気づき…そして、類の想いを鞄から取り出させてくれたのだ。
     明日、司を部屋に呼んで改めて感謝を伝えたい…頭に浮かんだ欲を助けるべく、部屋の掃除に取りかかった。
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    たまぞう

    DONE先にポイピクに載せます。
    日曜になったら支部に載せます。
    将参のお話。この間のとはセカイは別になります。
    ちょっと痛いシーンがありますがそこまで酷くないです。
    寧々ちゃんが森の民として出ますが友情出演です。
    最初と最後に出ます。
    何でもいい人向けです。
    将校は参謀と同じ痛みを感じて(物理的)生きたいというよく分からないお話ですね。
    誤字脱字は見逃してください。それではどうぞ。
    将参(友情出演寧々)「ねぇ、その首の傷痕どうしたの?」
    「っ、っっ!?」

    仕事の休憩中に紅茶を飲んでいた時のこと。
    正面の窓から現れた少女に私は驚き、口に含んでいた紅茶を吹き出しそうになった。

    「っ、ごほ…っ、げほっ、ぅ………。来ていたのですか…?」
    「うん。将校に用事があって……というか呼ばれて」
    「将校殿に?」

    森の民である緑髪の少女ーーー寧々は眉を顰めながら、私の首をじっと見つめている。そこには何かに噛み千切られたような痕があった。

    あの日のことを話そうか、少し迷っている自分がいて。
    どうしようかと目線を泳がせていると、寧々が強い力で机を叩く。

    「ほら!話して!」
    「………わっ…!わかり、ました」








    あまりの気迫に押された私はぽつりと語り始めた。
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    はぱまる

    MOURNING昔書いたのを思い出して読み返してみたのですが、これ今から続き書くの無理だな……となったのでここに置いておきます
    後悔 酒は嫌いだ。正気を失うから。ショーに気を狂わせている方がよほど楽しい。
     そう笑う彼の瞳が輝いて見えて、ああ大きな魚を逃したなと思ったのだ。惜しいことをしたと思い知らされたのだ。
     司とは逆に酔う感覚がそれなりに好きな類は口惜しさにアルコールを摂取し、摂取し、摂取し、そこからはもうダメだった。もう一度僕に演出させてほしいと、君の演出家になりたいと、ズルズルと子供のように縋ってしまったのだ。はたまた恋人に捨てられそうな哀れな男にでも見えたろうか。なんにせよ、醜い有様であったことに変わりはない。
     類は知っている。高校生の頃、嫌になるほど共に過ごしてきたため知っている。司は人が好く頼み込まれれば基本的に断れないタチだ。しかも酷く素直で単純で、その気になれば口車に乗せることなど容易い。しかしこの男、どうにも頑固で仕方がないのだ。こうと決めたことは梃子でも曲げない。どんな話術を使おうと泣き落としをしようと首を縦に振らない。そして、司はワンダーランズ×ショウタイムからキッパリと縁を切っていた。
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