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    貴方の手で象って

    #司類
    TsukasaRui

    ワンライ『コーディネート』(2023/03/30) カチ、カチ、時計が時を刻む静かな空間の中、天馬司は頭を抱えていた。
     悩ましげに視線が投げられた先には、様々なロゴがプリントされた袋が鎮座しており解放される時を今か今かと待ち続けている。
     明日は類が、台本の最終確認のために家に来ることになっている。
     最終確認を行う時は、司の部屋、類のガレージで交互に行なっていたため、いつもの流れで了承してしまった。
     類が来る前にこの袋たちをどこかへ隠したい気持ちと、類の前で袋を解放したい気持ちがせめぎ合い、時間だけが過ぎていく。
     ふと、時計に目を向けると、ベッドで横になり夢の世界へと旅立っているはずの時間を過ぎていることに気が付き溜息が漏れる。

    「先送りにする理由は、無いな」

     司は自嘲すると、人知れず決意を胸に夢の世界へと旅立った。

    ―――

    「…うん、大丈夫だね」
    「ああ。これでまた一つ、オレ達のショーが増えるな」
    「フフッ、楽しみだね」

     完成した台本達を忘れてしまわないよう鞄へとしまい込むため立ち上がる。
     メンバーの前でそれぞれの台本を渡す楽しみは、密かな座長特権だった。
     そして、鞄へしまった足でいくつかの袋を手にし戻る。

    「話が変わってしまってすまないが、これを…見て欲しいんだ」
    「司くんにしては珍しく片付いていないように見えて不思議だったのだけれど、それはなんだい?」
    「……………あけてくれ」

     頭に疑問符を浮かべた類が手渡した袋を開け、中から薄い空色のパーカーが取り出される。
     胸元の黄色のロゴと袖に走る薄紫色の線が特徴のそれは、この袋の山の中で最古参の物だった。
     突然生まれた袋を部屋の片隅に置いた時から、自分の中の何かが抑えられなくなって行った。

    「普通の、服…だね?司くんが着るような感じはしないから、誰かに贈るものかい?」
    「…るい、に……」
    「……僕?」
    「……その服が目に入った時…類に、着て欲しいと…思ってしまったのだ」
    「……もしかして」
    「………ああ」

     類が驚いた表情で部屋の隅に鎮座している袋の山を見る。
     十に届きそうな数のそれは、全て司が類に着て欲しいと感じ衝動的に購入してしまった服が詰められた袋の山だった。
     ショーケースが目に入る度に生まれる衝動を晒しているようで、恥ずかしさのあまり言い出せずにいたのである。

    「結構、あるんだね」
    「…自分勝手な欲望だとわかっていたはずなのだが、なんだか止まらなくなってしまってな」
    「それで、どうするんだい?」
    「……嫌で、無ければ…なのだが。着ては、貰えないだろうか」
    「うーん。君のイメージの僕は、恋人の頼みを受け流すような人間なのかい?」
    「……………着て、欲しい」
    「君が選んでくれたものならば、喜んで」

     自分自身制御が効かなくなっていた感情を笑顔で受け止めてくれた類が、立ち上がり袋を運び始める。
     ベッドに袋の山が出来上がると、袋の開封作業が始まる。
     最初に渡したのはパーカーだが、上衣やズボン、スカーフ等様々な物で衝動は生まれていた。
     色も物も様々で、自分はこんなに統一性のない物を買い漁っていたのだなと他人事のように考えながら、開封を終える。
     パーカーだけでも三種類、上衣はもっとあるのでいくつか厳選しなくてはならない。
     一先ず近くにあったカジュアルシャツを手に取り立ち上がった類に合わせると、雷が落ちたかのような衝撃が身体中を駆け巡った。
     それから、服を手に取っては類に合わせ取っては合わせを繰り返し、厳選を終えた司は一度部屋から去ると洗面所へと足を運んでいた。
     乱れた思考を取り戻すべく冷たい水で顔を濡らす。
     服を軽く合わせただけで心臓がバクバクと煩く叫びを上げだしたというのだから、身に付けてくれた彼を目にした時、果たして己は正常でいられるだろうか…否、正常でいなくてはならない。
     彼が己の欲望に答えてくれたのだから、そんな彼に失礼な事は絶対にしてはならない。
     何度も深く深呼吸をし、両頬を叩くと自室へと戻った。

    「おかえり、司くん。なんだか着ることの無いようなものばかりで着心地に違和感が多いのだけれど…どうかな?」
    「ああ…凄く、似合っている」

     勿論お世辞なんてものでは無い。
     先程のパーカーの下に、白と黒の縦ボーダーが入ったカジュアルシャツ、橙色のチェックが入ったベージュのスカーフが首元を隠し、黒のテーパードパンツが足の形が細く綺麗に見せている。
     姿見の前で自分の姿を確認していたのであろうその格好は、確かに司が買い集め選んだ物だった。
     想像上の姿の何万倍もの仕上がりを見せたのは、己のセンスか彼のセンスかはたまた両方か。

    「相当お気に召して頂けたみたいだね」
    「…あ、ああ、すまん。見とれていた」
    「別に謝ることは無いさ。ちなみに、君が突然僕に服を着て欲しくなった理由…なんだけれど。恋人に服を贈るのには『その服を脱がせたい』という意味があることを知っているかい」
    「なっ!?ち、違う!断じてそんなつもりは無いぞ!?」
    「勿論分かっているとも。ただ、無意識下でそういう気持ちが芽生えていてもおかしくないのかな、と思っただけさ」
    「…否定は、出来ないが」

     確かに最近忙しく、恋人らしいことがあまり出来ていない事は確かであって。
     ただ、己の夢に向けて、学びを得て成長する日々に充実しているのも確かであって。

    「オレは、スターになるためにこれからも日々経験を積んで行きたい」
    「うん」
    「それでも、今回のような…自分でも制御が出来ないような感情が芽生えた時は、付き合って貰っても良いだろうか」
    「それは、どちらの意図かな?」
    「うっ……それ、は…またその時、だ」
    「フフフッ、今度は抱え込まないでね」

     迷いなく返事を返してくれた恋人の笑顔に、溢れる愛おしさを込めて思いっきり抱きしめた。
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    たまぞう

    DONE先にポイピクに載せます。
    日曜になったら支部に載せます。
    将参のお話。この間のとはセカイは別になります。
    ちょっと痛いシーンがありますがそこまで酷くないです。
    寧々ちゃんが森の民として出ますが友情出演です。
    最初と最後に出ます。
    何でもいい人向けです。
    将校は参謀と同じ痛みを感じて(物理的)生きたいというよく分からないお話ですね。
    誤字脱字は見逃してください。それではどうぞ。
    将参(友情出演寧々)「ねぇ、その首の傷痕どうしたの?」
    「っ、っっ!?」

    仕事の休憩中に紅茶を飲んでいた時のこと。
    正面の窓から現れた少女に私は驚き、口に含んでいた紅茶を吹き出しそうになった。

    「っ、ごほ…っ、げほっ、ぅ………。来ていたのですか…?」
    「うん。将校に用事があって……というか呼ばれて」
    「将校殿に?」

    森の民である緑髪の少女ーーー寧々は眉を顰めながら、私の首をじっと見つめている。そこには何かに噛み千切られたような痕があった。

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    「………わっ…!わかり、ました」








    あまりの気迫に押された私はぽつりと語り始めた。
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