死者の約束なにもなかった
父は私の能力に夢中だった、私は他の"子"と比べて優秀だったらしい
だから父は私のその優秀な能力とやらに依存し、殺人鬼として育て上げようとした
痛かった、苦しかった、何を言ってもなにをやっても、練習台の人形にただただナイフを握って振りかざす毎日
飽き飽きした、いや、今考えればそういう感覚だったと言うだけで、当時はそれが何かすら感じれなかった
…私にはなにもなかったのだ、感情を感じ取ることさえできなかった
生まれた時から今まで……だからなぜ父が私の依頼を途中でやめてしまったのか、なぜ私を普通に育て始めたのか分からなかった
「…お前には、間違った道を歩ませてしまった。これからは普通に生きなさい」
「…?めいれい、ですか?」
「…そうだ……っ、すまない」
なぜ謝るのか、なぜ泣くのか…どうして父は…私に
「あいちゃん」
…そういえば、なんで私は、それを疑問に思うようになったんだっけ、なんで…感情なんてものを感じるようになったんだっけ
「あいちゃんは…純粋なんだね」
「…純粋?わたしが?」
「そうだよ、君は心が綺麗だから、そんなふうに人を傷つけないように生きてきたんじゃないかなぁ…その人の分まで…今まであってきた人の分まで傷ついてきたんだよ、そんなことができるあいちゃんは優しい子だよ」
…あぁ、この人のおかげだったな
この人はいつも優しい声で、やさしい言葉をかけてくれる、…しおんくん
「あいちゃん…あいちゃんごめんね…」
泣かないでしおんくん、私こそ
「おいていってごめんね、しおんくん」
あなたをおいて死んでしまってごめんね、生きてる時に勇気を出せずに放置してごめんね
「ごめんね…愛してるんだ…ほんとに…!ほんとにごめん…!だいすきなんだ…!」
「わかってるよ、大丈夫だよしおんくん」
あなたとならどこまでだって堕ちていける、どこまでだってついていくよ
「あなたは私の光だから」
あなたは私のみちしるべだから
地獄に焼かれてしまっても、ついていくよ
「つれてってしおんくん、わたしあなたの」
お嫁さんだから