大好きな彼「もう!!!はるた先生の目こわいよ!!なんでおめめ普通じゃないの!!!きもちわるいよ!!!」
「喧嘩をしてしまった、相手が仲直りさせてくれない」そう泣かれて、相手の子を説得しに行った。その時に言われた言葉だった。癇癪なのだと思う、この時期の子にはよくあることだ、自分の意見が通らずむしゃくしゃしたのだろう。相手の子ばかり尊重してしまったのかもしれない、その子にとって傷つく言動や対応をしてしまったのかもしれない、でも、今回の件はこの子に非がある。何を言われても冷静に、慎重に、平等に対応を
「…はるたせんせい?」
大丈夫、今までだって言われてきた言葉だ、今は動揺している場合じゃない、余裕のない表情をこの子に見せてはいけない、よけい不安にさせてしまう
「せんせいないてるの…?」
「…ううん、大丈夫だよ。泣いてなんかいないよ、大丈夫」
他にもっとかける言葉があるだろう、言葉を選ぶべきだろう。いまはこの子に集中してあげないと、僕のことなんて二の次でいい
「せんせ、、ごめんね?おめめね、、そんなことおもってないよ、、、わたしね、よくわかんなくていっちゃてね、いいたくなくてね…」
【言いたくないってことは、そう思ってる時があったのかな】
そんな余計なことが頭によぎる、
「うんうん、そうだよね。先生もちょっと怖く言い過ぎちゃったね、ごめんね。でも、先生よりも誰にごめんねしないといけないかな?」
「…--ちゃん」
「うんうん、じゃあいっしょにごめんねーってしにいこっか」
「いっしょにいってくれるの、、、?」
「もちろん!」
「ありがとうせんせい…」
「いえいえ、」
バレなくてよかった、涙で視界が霞んでいたこと
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『はるたってさ、イケメンだし、やさしいしさ、良い奴なんだけど…目がやっぱり怖いよなぁ。あれ病気なんだっけ?』
『私最初コンタクトかなんかなのかなぁって思ってたのよね。けどそうじゃないって聞いて、差別してる訳では無いんだけど…少し可哀想だなぁって思ったわ…さすがに…』
『目も見えなくなるんだろ?最悪じゃんw』
高校の頃、忘れ物を取りに教室に戻った時に聞いた話し声。今でも記憶に残っている、なんとなく教室に入りずらくて、ドアの前でもたもたしていたのも覚えている。…でも1番記憶に残ってるのは
『ぶっちゃけるとさ、、、あの目"気持ち悪い"んだよね…今は慣れたけど、俺最初見た時________』
"気持ち悪い"
その言葉は鮮明に覚えているのに、嫌なほど記憶に残っているのに、先の言葉の記憶がカラッと消えている。その日、気づいた時には泣きながら家の前に立っていた。翌日休んだことも、覚えている
「……わかってるんだよなぁ、ふつうじゃないこと」
そんなことをボソボソ呟いて、ボーッと帰り道を歩きながら過去のことに身を耽けていた。そしたらいつの間にか家に着いてしまって、もしかしたらざんじくんが先に帰ってきてるかも、なんて期待をしながらドアノブを回す。…鍵がかかっていたのでまだ帰ってきていないのだろう。その事実にため息を吐いた
「…ただいま」
シーンと静まり返っているリビングに帰ってきたという挨拶をしても、何も返ってこない。…体が重くて仕方なくて、手も洗わずにそのままソファに沈み込む。
「……ざんじくんはやく帰って来ないかなぁ」
ご飯の準備しなくちゃ、…でもざんじくんならピザとかウーバーとかでも許してくれるよね、あの子ジャンクフードとか好きだし。
…前にウーバーで頼みまくって食べきれなかったんだよね、だから今回は考えないと、でもパーティーみたいに沢山頼むのも楽しいんだよな。…あの子といるといつも特別に感じて楽しいんだよね。…いつまでもくよくよしてちゃだめだな
「…そうだよね、よし!お風呂入って!ざんじくんのことまつか!さぁ、!さっさ…と…」
意気込んで立ち上がった先に、リビングに置いてある鏡に目がいってしまった
『俺最初見た時、』
他の人とは違う、真っ黒な目
『あっ、こいつ"普通じゃねぇんだな"とか思ったもん』
普通じゃない、気持ち悪い、
「………ぼく、ぼ、く」
僕は鏡の前で縮こまって
「……ふつうじゃないんだ、」
動けなくなってしまった
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あったかい
いい匂いがする
落ち着くような、優しい匂い
これは…
「…ざんじ、くん?」
「ん、、?起きちゃいましたか?はるたさん」
「…あれ、ぼくいつのまに着替えてベットに…?」
「鏡の前で縮こまって寝ちゃってたので、俺が運びました」
泣き疲れて、いつの間にか寝てしまっていたらしい。…気持ちがすっきりしないまま起きてしまった、それがいやで、ざんじくんの胸に顔を埋める。
…見透かしたように彼はこう言い放つ
「…はるたさんこっち向いて」
「……いまは、ちょっと」
「お願い、こっちみてください、はるたさん」
「……」
僕はざんじくんのお願いという言葉に弱い。少し不安になりながら顔をあげる。
【気持ち悪い目】
もし、ざんじくんに、そんなこと、、、いわれたら、
「…はるたさんの目は、やっぱりすごく綺麗ですね。出会った頃と全然変わらない」
「…うそだよ、ぼくふつうじゃないもん」
彼はいつも甘い言葉を吐く
「普通の人なんかよりずっと綺麗です」
彼はいつも僕を見てくれる
「…きもちわるくないの」
彼はいつも
「出会った頃から今までそんなこと思いつきもしませんでした」
僕を
「…まっくろで、ふつうじゃないし、すごくきもちわるいに、きまってる」
「……告白した時もいいましたが」
僕のことを
「あなたの目はとても綺麗で、宝石みたいに透き通っていて、魅力的で」
包み込んで
「だから俺の事をずっとみていてほしいって、あなただから、あなたの瞳だから言えました。」
愛してくれる
「きもちわるくなんかないですよ、とっても綺麗で特別で大好きなはるたさんの目です。…だからもう泣かないで」
その日は辛くて、どうにもできなくて、悲しくて最悪な日から、
嬉しくて、幸せで、大好きなざんじくんとの
思い出の日になった。
次に眠る時には、暖かい寝床に涙が落ちることはなかった
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翌日、保育園のあの子から、ごめんなさいの手紙と、だいすきなはるたせんせいへという手紙をくれた。その事が嬉しくて、また少し泣きそうになってしまったけれど、幸せな気持ちがそれを上回ってしまって、笑顔でありがとうと言えたのが嬉しかった
「ざんじくんみてみて!あの子からね!お手紙もらっちゃった!だいすきだって、ふふ、かわいいなぁ」
「ふふ、よかったですね、はるたさん」
「うん!...ねぇざんじくん」
「?はい」
「だいすきだよ、これからもずっと」
大好きな彼に、僕のことを綺麗だと語ってくれる彼に、言葉を紡ぐ
「俺もですよ、ずっと愛してます」
「えへへ」
ぼくもずっと君のことを愛しているよ、ざんじくん
終わり