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    hisoku

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    hisoku

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    # sgo1000文字第12回のお題『イベント前夜/イベント/イベントその後』をお借りして書きました。以前書いた1000文字掌篇「先ずは謝れ」「こうやってするものなのか」と同じ杉や尾の話で、恋愛経験はないのに拘りだけはあるピュア尾の話です。

    #sgo1000文字
    sgo1000Characters
    #杉尾
    sugio
    #現パロ
    parodyingTheReality

    クリスマスとか大晦日とか正月とか誕生日とか 慣れてはきたが、ともすると連中は直ぐに俺の家へ集まろうとする。その上、年末年始はイベントが多くて少し適わない。
     今夜の鍋はすき焼きで隣を陣取って座る杉元の横顔を見つめる。今夜も鍋奉行を務めていて愉しそうに見えた。

    クリスマスなのにすき焼きかぁ。

     胡座から正座になった白石が言葉とは裏腹に愉しそうな声で呟き、それを聞いた房太郎がビールを手酌しながら、チキンよりも牛肉の方が豪華で良いじゃないか、と云って白石の背中を景気好く叩く。
     クリスマスねえ。普段は信仰心の信の字も持ち合わせていないくせになんで皆クリスマスに集まるのだろう。

    見ず知らずの他人の誕生日に酒飲んで飯も気合いを入れて用意して愉しいか?

     食台に肘をついてグラスを揺らしながら呟くと杉元が苦笑いをする。
     鍋の中を見て、うし、出来たぞ、食おうぜ、と杉元が野郎共に声を掛ける。待ってましたとばかりに各々が生卵を割り、かき混ぜて、いただきます、と手を合わせて鍋に箸を入れ始めた。ほら、尾形も食えよ、取ってやろうか、と云われて取り皿を差し出すと、具材一通りを取り分けて手渡してくれた。ん、と礼の代わりの音を出して自分も食べ始める。

    尾形ちゃんは来月でしょ? 誕生日。

     白石に肉を頬張りながら訊かれて頷く。

    何料理が好き?

     そう房太郎に尋ねられて、鮟鱇鍋、と答える。透かさず、二十二日だっけ、と確認しながら杉元がスマートフォンをチェックし、あっ、日曜日じゃん、当日に祝えるな、と云って微笑んだ。

    待て、また集まる気なのか?

    集まるだろ?

     他の三人がほぼ同時にそう返事してきて、春菊を食べようとしていた手が止まった。

    えっ? 嫌? 駄目? なんで?

     杉元が矢継ぎ早に訊いてきて顔を見る。

    それを口実に飲み食いしたいだけなんだろ?

    いや、尾形の(尾形くんの)(尾形ちゃんの)お誕生日だからでしょ?

     また三人が同時に返事をしてきて戸惑う。

    あっ、あっ、もしかして尾形ちゃん、彼女出来たとかっ。

     白石が大袈裟に口元に手を当てて訊いてきて、残る二人が何故か噎せ返った。

    いねえ。

     それを聞いて杉元が固まり、房太郎が俺と杉元の顔を交互に見る。

    なんで嫌なの?

     房太郎に再び訊かれて、杉元を見ながら溶いた卵液に浸かった春菊を箸で摘まんで口に運び、態とそれを頬張りながら答える。

    ふぎもほほふはりれふごひはい。

    えっ? 何? なんて?

     食いついてきた杉元を無視して口を閉じて春菊の苦味を味わう。今日だって本当は杉元と二人きりが良かった。     
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    Replies from the creator

    hisoku

    DOODLE過去作
    湯沸室で杉と尾がお茶を飲む話です
    前世記憶あり現パロ
    尾語り
    湯沸室 喫煙をする習慣はないので、就業中の休憩といえば緑茶だ。あるいは珈琲。それと少しの甘いものかしょっぱいものを一口頬張るのが日課で、デスクワークに根が詰まり、肩も凝りそうだったので仕事の効率が落ちる前に気分を変えようとひとり湯沸室に向かった。買い置きのドリップコーヒーを淹れるために湯を沸かそうと薬缶のことを思い、買い置きのミネラルウォーターはまだ残っていたっけと思い起こしながら廊下を行く。
     スタッフルームのあるフロアの一角、廊下奥の角の階段と廊下を挟んだ少し離れた斜向かいにトイレが、その対角線上の奥まった場所にひっそり湯沸室はあった。そこは小会議室の並びでコの字に壁と壁と窓に挟まれた造りになっていて、二畳半程の広さがあり、冷蔵庫と棚、その棚の上に電子レンジ、隣に小さな流し台があった。流し台にはガス台が二口と壁にガス給湯器が備えつけてある。どうってことはない必要最低限が備え付けられている極普通の湯沸室だが、流し台が木目調の引き出しのついた懐かしい感じのする流し台で、ばあちゃん家の台所を彷彿とさせて、そこを緑茶を飲みながら眺めているだけでも癒しを覚えた。面積の狭さも落ち着く。
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    related works

    hisoku

    DOODLE作る料理がだいたい煮物系の尾形の話です。まだまだ序盤です。
    筑前煮 夜の台所はひんやりとする。ひんやりどころではないか。すうっと裸足の足の裏から初冬の寒さが身体の中に入り込んできて、ぬくもりと入れ換わるように足下から冷えていくのが解る。寒い。そう思った瞬間ぶわりと背中から腿に向かって鳥肌も立った。首も竦める。床のぎしぎしと小さく軋む音も心なしか寒そうに響く。
     賃貸借契約を結ぶにあたって暮らしたい部屋の条件の一つに、台所に据え付けの三口ガス焜炉があるということがどうしても譲れず、その結果、築年数の古い建物となり、部屋も二部屋あるうちの一部屋は畳敷きになった。少し昔の核家族向けを意識して作られた物件らしく、西南西向きでベランダと掃き出し窓があり、日中は明るいが、夏場には西日が入ってくる。奥の和室の方を寝室にしたので、ゆったりとしたベッドでの就寝も諦め、ちまちまと毎日布団を上げ下げして寝ている。また、リフォームはされているが、気密性もま新しい物件と比べるとやはり劣っていて、好くも悪くも部屋の中にいて季節の移ろいを感じることが出来た。ああ、嫌だ、冬が来た。寒いのは苦手だ。次の休日に部屋を冬仕様をしねえとと思う。炬燵を出すにはまだ早いか。洋間のリビングの敷物は冬物に替えとくか。気になるところは多々あれど住めば都とはいったもので、気に入って暮らしてはいて、越してきてもう三年目の冬になった。
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