クリスマスとか大晦日とか正月とか誕生日とか 慣れてはきたが、ともすると連中は直ぐに俺の家へ集まろうとする。その上、年末年始はイベントが多くて少し適わない。
今夜の鍋はすき焼きで隣を陣取って座る杉元の横顔を見つめる。今夜も鍋奉行を務めていて愉しそうに見えた。
クリスマスなのにすき焼きかぁ。
胡座から正座になった白石が言葉とは裏腹に愉しそうな声で呟き、それを聞いた房太郎がビールを手酌しながら、チキンよりも牛肉の方が豪華で良いじゃないか、と云って白石の背中を景気好く叩く。
クリスマスねえ。普段は信仰心の信の字も持ち合わせていないくせになんで皆クリスマスに集まるのだろう。
見ず知らずの他人の誕生日に酒飲んで飯も気合いを入れて用意して愉しいか?
食台に肘をついてグラスを揺らしながら呟くと杉元が苦笑いをする。
鍋の中を見て、うし、出来たぞ、食おうぜ、と杉元が野郎共に声を掛ける。待ってましたとばかりに各々が生卵を割り、かき混ぜて、いただきます、と手を合わせて鍋に箸を入れ始めた。ほら、尾形も食えよ、取ってやろうか、と云われて取り皿を差し出すと、具材一通りを取り分けて手渡してくれた。ん、と礼の代わりの音を出して自分も食べ始める。
尾形ちゃんは来月でしょ? 誕生日。
白石に肉を頬張りながら訊かれて頷く。
何料理が好き?
そう房太郎に尋ねられて、鮟鱇鍋、と答える。透かさず、二十二日だっけ、と確認しながら杉元がスマートフォンをチェックし、あっ、日曜日じゃん、当日に祝えるな、と云って微笑んだ。
待て、また集まる気なのか?
集まるだろ?
他の三人がほぼ同時にそう返事してきて、春菊を食べようとしていた手が止まった。
えっ? 嫌? 駄目? なんで?
杉元が矢継ぎ早に訊いてきて顔を見る。
それを口実に飲み食いしたいだけなんだろ?
いや、尾形の(尾形くんの)(尾形ちゃんの)お誕生日だからでしょ?
また三人が同時に返事をしてきて戸惑う。
あっ、あっ、もしかして尾形ちゃん、彼女出来たとかっ。
白石が大袈裟に口元に手を当てて訊いてきて、残る二人が何故か噎せ返った。
いねえ。
それを聞いて杉元が固まり、房太郎が俺と杉元の顔を交互に見る。
なんで嫌なの?
房太郎に再び訊かれて、杉元を見ながら溶いた卵液に浸かった春菊を箸で摘まんで口に運び、態とそれを頬張りながら答える。
ふぎもほほふはりれふごひはい。
えっ? 何? なんて?
食いついてきた杉元を無視して口を閉じて春菊の苦味を味わう。今日だって本当は杉元と二人きりが良かった。