ハルシャルはらすめんとその日、屋敷の縁側でなんぞ溜息を吐いてぼんやりしている、屋敷主の弟子である青年が居た。
どうも今朝方「チィ」と喧嘩をした――というか一方的に乙女心を悪戯に揺さぶるような事でも言って怒らせた――らしく、妹分だと親しくしてきた娘から大きな紅葉を頬に頂いてしまったらしい。
ひりひりと痛む頬を治療もせずそのままにしている時点で、反省の色は見えるが、「何故」が分からない辺りがまだまだ朴念仁。
人生経験の浅い少年という面があるということなのだろう。
チィの世話が第一の使命、己の存在理由である。
だが仲間を認識する程度の知能はあるのと、チィがムネチカと出掛けている以上、彼女の世話が今は必要ないという理由の複合から、凹んでいる仲間を慰めるというモードに判断が切り替わった。
1419