名前を呼んで「降魔大聖、今日は共に任務に当たれて良かった。またいずれ」
「あの、帝君」
「では旅人、また会おう」
いつもなら望舒旅館でしばし茶を飲み休憩してから璃月港に帰るところを、旅人が口を挟む暇もなく常人ではないスピードで、帝君は帰離原に向かって去って行った。旅人も、なんとなく気まずい空気が流れているのを感じ取っていたのであろう。指で頬を掻き、どうしたものかと魈に尋ねてきた。
「魈……その、先生と喧嘩でもしたの……?」
「喧嘩……?」
喧嘩とは、お互い譲れないことがあり、折り合いがつかなかった場合にそうなるものだ。しかし、帝君と口論をした覚えはなく、不手際があり叱責された覚えもない。何について謝罪すれば良いかわからない状態なのだが、何か確実に帝君の機嫌を損ねていることはわかっていた。
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