国際郵便土曜日部活が終わって帰宅するとポストに不在通知が入っていた。
【国際郵便】と書いてある。
「コクサイユウビン?」
海外に知り合いなんていたかな?
もう一度名前を確かめると間違いなく
受取人 桜木花道様
と書いてある。
「あ!えーじか!」
えーじ。
沢北栄治。
山王戦の後、なぜだか山王メンバーに気に入られて連絡を取るようになった。
そこで沢北とも仲良くなったわけだが思いの外沢北が花道を気に入って、バスケ留学する前にわざわざ神奈川に寄って花道のスマホにスカイプのアプリを入れていった。
なのでたまに沢北から連絡がくる。
花道はイマイチ使い方とか時差とかよくわからないので自分からは連絡した事はない。
国際郵便の再配達依頼をして家事をしていると「ピンポーン」インターホンが鳴った。
気づけば再配達を依頼した時間帯。
荷物を受け取り中身を確認する。
「おぉ…」
なんだかオシャレで高そうなTシャツが3枚とシャツ、そして手紙が入っていた。
手紙には
花へ
久しぶり、元気にしてるか?
河田さんから聞いたんだけどなんか花、みんなからお下がりもらってるんだって?
オレもそれに乗っかってこれ花に送るわ!
オレの大学のロゴ入りTシャツと ⚪︎⚪︎のTシャツ。
オレもこれ着てるんだけどめっちゃ汗吸うし、速乾だし、肌触り最高!
花も着てみて。
そんじゃX月X日に連絡する!
えーじより
と書いてあった。
X月X日…て、今日じゃねーか!
時差とかよくわからないけど確か12時間以上はあった気がする。
だから大体向こうが朝、こっちが夜の時間帯に連絡がくる。
案の定午後9時を過ぎた頃スマホが鳴った。
「花〜!」
「えーじ!元気か!?」
「元気元気!花は?背中大丈夫?」
「おう、ゼッコウチョウ!」
「良かった」
ほっとした顔の沢北。
山王メンバーは沢北に限らずみんな背中のことを心配してくれる。
ほんとに優しい。
「えーじ、服届いた!ありがとな!」
「Tシャツはバスケやる時でも私服でも使えるように選んだんだけど…どう?」
「おう!めっちゃ肌触りキモチよかったぞ」
「ファッションショーしてよ。花が着たとこ見てみたい」
「わかった」
そういわれて着てる服をスマホの前で脱ぎ始める。
「は、はなっ、ちょっ、まて!わ、ちょ、刺激強すぎるー…バカ花!」
「ぬ…着替えろって言ったのえーじだろ」
画面を見ると赤面している沢北の顔。
「えーじ、顔赤いぞ?大丈夫か?」
「…花のせい…人の気も知らないで…」
ぷーっとむくれる沢北。
「へんなえーじ。なぁどう、コレ?」
沢北から送られてきた白に沢北の大学名のロゴの入ったTシャツを着てみる。
「うん、やっぱ似合う」
満足そうな沢北。
だってコレ花が着てたら間違いなくオレからの贈り物ってみんな気づくだろ?
「花はオレのもの(まだ仮だけど)」ていう沢北なりの可愛い自己顕示欲。
あとのTシャツ2枚はなかなかいいやつなのか、沢北の手紙にも書いてあったが肌触りが最高。
赤と黒、どちらも花道に似合っている。
「うん、やっぱ全部似合ってる。さすがオレ!」
「ほんとありがとな。でも高かっただろコレ…オレよく知らねーけど、これユーメーなやつだろ?」
このロゴ見たことあると花道。
「なんか日本で流行ってるみたいだな」
そこからバスケのこととかアメリカのこと、色々話していたらあっという間に2時間くらい経っていた。
「あ、もうそろそろジョギング行かねーと」
「そっち今何時?」
「ぼちぼち朝7時になるとこ」
「わりぃ、えーじとの話し楽し過ぎて長話しちまった」
「うん、オレも楽しかった!な、また連絡していい?」
「いいぜー」
ニコと笑う花道。
「フフ、やっぱ花の笑顔最高」
「な、なにへんなこといってんだよ」
照れて顔が真っ赤になる花道。
そのどれも全部好きな顔で沢北の胸がキュっと締め付けられた。
「花、帰国したらさお前に一番最初に会いに行く」
「オレじゃなくてまず親御さんに会いに行けよ」
「一番に花に会いたい」
「…じゃあ天才自らおむかえにいってやるよ」
「ほんと!?」
「おうよ、トクベツだぞ!」
「花大好き!」
「お、おうよ」
ちょっとビックリしている花。
その顔も好き。
このオレの『大好き』は花が思っている『大好き』とはきっと違うものだけど、
でも絶対花を振り向かせてみせる!
「じゃぁお互いバスケがんばろーぜ!」
「おう!えーじも体に気をつけろよ」
そういってスカイプを切った。
アメリカで頑張ってる沢北を感じて花道も自分自身に気合いを入れる。
絶対次は負けねーぞ、えーじ!