掬った日、君がかけた魔法にはあれは、凄く暑い日、だったと思う。
何故ならば記憶にある僕は、酷く汗をかいていたから。
冷や汗で、室内用に調達された長袖のワイシャツが背中にべったりと貼り付いていたのを覚えている。
大丈夫、ここならきっと見つからない───。
3度目の逃亡で見つけたそこは、とある森であった。
図鑑に載っていた青い鳥や、木や、花を見て、思わず飛び込んだのが始まりだった。
Shuは自然が大好きな少年だった。
図鑑を見ることだけは学習の一環として許可されていたものの、外出はほとんど学校と家を行き来するのみであり、実際にこんなにたくさんの生き物を見たのは文字通り人生で初めてのことであった。
胸には収まりきれないほどの感動と希望が詰まっていて、興奮で周りが見えなくなった僕は、飛び立った青い鳥を衝動そのままに追いかけた。
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