話を少し「ガチャ」
斧を研いでいる途中でドアの開く音がした。
「来たよー 赤ずきんちゃん 待ってたー」
いつもの職員だ。毎日欠かさずここに来る。
急に突拍子の無いことをしてきたり、癪に障る発言ばかりしてきたりと、
アブノーマリティの怖さを全く理解していないような野郎だ。
「待ってる訳無いだろ。」
「えー、そんなこと言わないでー。ぼくは赤ずきんちゃんに会うのを
ずーっとずーーーーっと待ってたんだよ?」
「お前が勝手に待ってるだけだろ。」
「そうなんだけどねー!」
だが、最近、あのくそ野郎の遠吠えも聞こえない。奴らの気配もしない。
依頼もなかなか来ない。正直…斧を研ぐことぐらいしかやることがない。
つまり……くそ暇だ。本当に暇だ。
だからせっかくだし、ウザイ職員と会話してみることにした。
「お前はどうしてここに来たんだ?」
「急にどうしたの?僕に興味湧いてきちゃった?僕の恋心分かってくれた」
……相変わらず…ウザイ…掴み所がない事ばかり言う…
こんな奴と会話してみようと思った私がバカだった。
「ハァ…やっぱいい…とっとと作業を終わらせろ。お前ウザイ」
「いやいやいやちょっと待って冗談だって!答えるから!」
「……分かったよ…聞いてやる。」
…まぁ…いい暇潰しにはなるか…
「えーっと…どうしてここに来ただっけそれはねぇ…」
どうせ度胸試しとか、給料高いから、とか言うんだろ。こいつの事だ。
「一言で言うと、ただ寂しいからだったんだよねー」
んっどういう事だ?
「ぼくの心の隙間を埋めるための出会いを探してたからねぇ」
「友達がいたんだけど、その友達がここの会社に入社したあと、居なくなったんだよね」
「で、ぼくは友達が心の拠り所だったから、寂しかったの。ただひたすらに。」
「人を殺しても、犯罪を犯しても、心の拠り所が見つからなかったの。」
「だから、ここに入った。友達に会えるかもしれないっていう一心で。」
おい…
「だけど、今は全然寂しくないよ!なんだってアブノーマリティ達がいるからね!」
「特に赤ずきんちゃん!君のお陰でぼくこんなに幸せなんだよ!」
「友達はもうどうせ死んだし。哀悼ぐらいはしてあげなくちゃだけど。」
「………」
やっぱりこいつは本当に掴み所がない。不思議な野郎だ。