無自覚と自覚 それはいつも通りの週末のはずだった。蓋をしていた『それ』に気づいてしまうまでは。
「なあ、夕メシどうする?」
金曜日の夕方、もうすぐ定時という頃合い──この特別捜査班にも定時という概念はあるのだ──に、ダニーはメインテーブルの向こうで武器庫に施錠しているスティーヴへ声をかけた。
いつもならスティーヴは子どもたちの当番ではない日のダニーを当然のような顔をして自分の行きたい店へ連れ出すのに、その日のスティーヴは何も言ってこなかった。
軍の予備役のミーティングだとか、恋人がいる時にはその約束だとか、何か予定がある時にはあらかじめスティーヴの方からダニーに報告があるものだ。
ダニーは「別にあいつの予定をいちいちおれに知らせろなんて言ってねぇのによぉ」と言うものの、それと引き換えに言外にダニーのスケジュールも全て教えろと圧をかけるスティーヴに大人しく従っていた。
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