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    春巻@はわい

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    頬を触る②、軍人ギャレット×ジェフリーズ。

    #マクダノ
    mcdano.

    リリコイ あるショッキングな──大学教授が殺害され、豚の餌となって発見された──事件の捜査で、ハワイ州のタスクフォース、ファイブオーのリーダーであるスティーヴ・マクギャレットはオアフ州立大学に入り浸っていた。
     教授の周りに何かトラブルはなかったか、彼が死んで得するのは誰か、そういった情報を得るにはやはり聞き込みが必要だろう──そうスティーヴは言う。だが、実際のところ若者の多い大学構内ではスティーヴよりも学生に馴染むだろう同僚のコノの方が適任だと誰もが考えたのだが、スティーヴは頑としてその役割を譲らない。
     なぜ敢えてスティーヴが大学にそうも出入りするかの理由は、足取りも軽く薄暗い廊下を進む彼の手に抱えられたピンク色の箱にあった。

     軽いノックを三回し、返事も待たずにスティーヴはドアを開ける。
    「よう、教授。ちょっと良いか?聞きたいことがあって」
     良いとも悪いとも部屋の主が返事をする前に、長い脚はズカズカとデスクの後ろのブロンドの男に近寄っていく。
    「ダメだと言ったってあんたは聞かないだろ」
    「ああ、任務だからな。そしてあんたにはそれに協力する義務がある」
     いつのまにか自分の横に立ち、チェアの背もたれに肘をつくスティーヴを見上げるブロンドの男はベン・ジェフリーズ、殺された男の後任のミクロ経済学の教授だった。
     三十代の若さで突然教授に抜擢されたジェフリーズは当然捜査対象になった。だが、動機はなくアリバイは十分すぎるほどある彼はすぐに捜査対象から外れ、その後なぜかタスクフォースのボスから協力を強いられることになったのだ。
    「私だって暇じゃないんだ。慣れない土地で慣れない仕事に悪戦苦闘する余所者を労ってはくれないのかねぇ」
     そう言ってブロンドの睫毛を瞬かせるジェフリーズを笑顔で見下ろしたスティーヴは、後ろ手に隠していたピンク色の箱を彼の鼻先までゆっくりと差し出した。
    「なんだ、じゃあコレは食べないか。情報のお礼にと思ったんだがな」
     甘く香ばしい匂いに鼻をひくつかせたジェフリーズはその箱を受け取ると、いそいそと開ける。
    「これは……ドーナツか?」
    「そう。マラサダというんだ。もともとポルトガルのドーナツで、今じゃハワイの名物だ」
     そのマラサダが半ダース入った箱の右端を指したスティーヴに「こっちから食べてみろ」と言われるがまま、ジェフリーズは砂糖がまぶされた狐色の塊に齧り付いた。
     行儀よく並んだ小さな前歯が、きらめくグラニュー糖と薄く歯応えのある表面を越え、もっちりとした生地に到達すると、ジェフリーズの目は僅かに見開いた。その一口分を齧りとり、数回咀嚼して飲み下す。それを何回か繰り返すと、マラサダはあっという間にその白い手の中から消えた。
    「うっっまかった……」
     そう呟いて再び自分を見上げるベイビーブルーを、スティーヴは口の端を上げて見下ろす。
    「次はこっちだ」
     スティーヴが箱の反対端を指差すと、ジェフリーズはまた大人しくマラサダを取り出し、齧り付いた。その一口めを飲み込むと、薄い唇に付いた黄色いクリームを舐め取りながら、目線も上げずにスティーヴに尋ねる。
    「甘酸っぱい……これは?」
    「リリコイ。パッションフルーツをハワイ語ではリリコイと言うんだ」
     へえ、とだけ返事をし、ジェフリーズは一つ目にも負けない勢いでリリコイのマラサダを腹に収めた。
     最後の塊を飲み込んで、ジェフリーズはようやく息をつく。
    「こっちもめっちゃくちゃ旨かった……」
     教授様もそんな言葉遣いをするのかとからかおうとしたスティーヴは、だが、ジェフリーズの頬に付いたものの方に気を取られた。
    「パッションフルーツなんて酸っぱいだけで美味しいと思ったことなんてなかったよ」
     そう言いながら、さらにもう一つ食べようと箱の中を物色するブロンドの男に、スティーヴはゆっくりと手を伸ばす。
    「パッション、というくらいだから情熱的な旨さだろう?」
    「少佐、それは違う。パッションフルーツの『パッション』は『受難』だ」
     目も上げずにマラサダを吟味するジェフリーズは、頬に軽く触れる指の感触に顔を上げる。スティーヴは、その唇の端に付いたクリームを指で掬うと自らの舌に甘酸っぱいクリームを塗りつけた。
     目の前の軍人の突飛な行動に驚くジェフリーズの頬はみるみる赤くなり、口が小さく開いた。小さい前歯と紅い舌がちらりと見え、なぜかそれが生々しく感じてしまったスティーヴの背に衝撃が走る。
    「なっ、なにっ、しょ……⁉︎」
     思いもかけない行動に固まってしまった大学教授の手を掴み、軍人はそれもまた自分の唇に持っていく。書類仕事でかさついた指先の先に付着した、ささやかに光るグラニュー糖を分厚い舌でべろりと舐めとった。
    「んっ……なっ……」
     あまりの羞恥にジェフリーズの目尻に涙が光るが、スティーヴの舌は指先から徐々に指の股に向かって這っていく。手を引っ込めようとする大学教授の力など、軍人の前ではものの数ではない。
     何故か嫌悪ではない、甘やかな痺れが指からジェフリーズの腹に溜まっていく。抵抗の力が抜けたのを感じたスティーヴの手がジェフリーズの腰に周り、立つように促す。
     ピンストライプを纏った身体をすっぽりと腕の中に収めたスティーヴは、ようやく唇をジェフリーズの指から離した。
     改めて顎を掬い、小さく震える薄い唇を食む直前、スティーヴは小声で囁く。
    「あんたにとってコレは『受難』かもしれないが、俺にとっては『情熱』なんだよ」
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