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    TRAININGつづき
    新着に乗せないをデフォルトにできんのか
    酒のやつ03この美酒は、生まれるべくしてこの土地に生まれたというのが、酒精に満ちた2人の頭が弾き出した答えだった。おそろしくグロテスクな見た目をしていたカラフルな物体も、割り開くと毒々しい色味をしていた芋も、あたかも生肉のような色合いの果肉も、何をどうしても美味かったのだ。この土地に実る食べ物は、どうやら全て美味いらしいので、それを元にもっと美味くしたものは、それはそれは美味しいと言うのが当然の帰結だと、興奮気味に喋る2人は既にキッチンを荒らし放題のまま放置し、できたつまみに買ってきた食べ物、そしてついでに希少種の酒瓶をこれでもかとリビングスペースのソファとローテーブルに運び込み、次から次へと口へ運んでいた。もはやテイスティングと言うには苦しい本数を空けているが、そんなことに構っていられなかった。全くと言っていいほど釣れない態度の恋人が、酒やつまみの旨さに随分とガードが緩んでいる。この機を逃すわけにはいかなかった。自分の店のために購入した分の封を次々と切り、上機嫌のクリプトの杯へ注いでいく。難しい顔をしてレイスの名前を出して杯を断ったのは最初の方だけで、今は進んでおかわりを求めてくるようになった。もう一押し、と言うところで、話題が逸れるということを幾度も繰り返し、やきもきするミラージュが何度も居住まいを正す中、その時は急に訪れた。小気味良い音を立てて封を開け、とくとくと瓶を通して伝わる空気の入り込む音を楽しんでいた時。
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    TRAININGつづき
    酒のやつ 02レイスはクリプトにどうやって交渉したのか。
    酒場での話から2日と経たずにミラージュのスケジュールに日程が記載され、いつの間にか往復路のチケットがポストにねじ込まれ、ご丁寧にルートから離発着の時間からまとめられた資料が捨てアドレスから届いていたんだから、感心を通り越して不気味である。資料には集合時間が記載されていることからして、クリプトはどうやら同行にOKを出したらしい。
    恋人のお願いは聞いてくれないのに、同僚の依頼は引き受けるのか。ミラージュはますます面白くない気分を大きく膨らませながらクリプトと落ち合い、道を間違えたりしながら何とか現地へと向かったのであった。
    予想通り、道中の雰囲気はいいものではなかった。レイスの顔を立てるべく、努めて明るく振る舞い話題も投げかけてはいるのだが、クリプトはと言えば一向にこちらを見ない。返事も上の空だったり、詰まっていたりで散々だ。おまけに少しでも目が合えばすぐに逸らされる。そんなにそばにいたくないのかとつまらない気持ちで何となく距離を取れば、ほんの少し離れただけで睨みつけられ、姿が見えなくなろうものならすぐさまドローンの羽音が聞こえ、人混みの向こうから鬼の形相のクリプトが現れるときた。全くもって真意が読めす、ミラージュは困惑するしかなかった。
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