リカピュアvs触手怪人の戦い ドォォンッと建物が真っ二つに割れた。
ガラガラと崩れた瓦礫の中で倒れた怪人が蠢くのを一筋の純白の光がレーザーのように射出して穿つ。
ここは関東にある某K県内、S市。
何の変哲もない普通の街中だがここでは日々、純白に光る正義のリーダー、秩序のリカピュアと無秩序でふしだらな悪との戦いが繰り広げられていた。
巨大化の特殊能力を持つ怪人がビルほどに大きくなれどリカピュアの力には及ばない。
「このぉッ! ジャスティス・チャージ! これで終わりだ! 正義の光よ……私に力を、ミラクルホワイト!」
リカピュアの持つスティックに膨大な正義の力が集まると、先に光るクリスタルから光のヴェールが怪人に向けてオーロラのように美しい帯を放ちながら降り注いだ。
『ぐぉおおおおおぉぉぉっ!』
怪人の断末魔と共に爆音が響く。
木っ端微塵になった怪人の肉片がキラキラと光に包まれながら消滅していく。最後に、壊された街までもがリカピュアの力により浄化され元通りに修復されていった。
「よし、これでいいな……」
安全な場所に避難をしながらもリカピュアの活躍を見守っていた街の人々の歓声が起こるのを眺めながら、今日も平和と秩序が守れたことにリカピュアは嬉しそうに笑った。
「そう、秩序を乱すものは死刑だ!」
そんなリカピュアの活躍を影から苦々しく見つめる者たちがいた。
リカピュアが言うところの無秩序でふしだらな悪。
地球を侵略しようとしている悪の組織に所属する怪人たちだ。今日もまたひとり同胞が死体を残すことも許されずに殺されて消滅させられてしまった。
下っ端の手下たちもかなりの数を減らされて、組織のボスからもお怒りの言葉をいただいてしまった。
「どうする? 思った以上に手強いな」
「いや、あやつにも弱点があるそうだ……」
「その声は触手怪人……いつ地球に来ていたんだ」
「ふん、ついさっきだ。今までのデータからリカピュアの弱点を本部が見つけて俺に話が来たのさ」
ずる、と蠢く身体を持った肉肉しいドス黒いグロテスクな怪人がヒッヒッといやらしい声を上げる。
「奴は女性に弱い。救助するのに身体を触るのを躊躇うほどにな……俺が皆の屈辱と仇を晴らしてやろうじゃないか……そう触手怪人の俺が!」
「そうか、お前にはアレがあるのか。それに下っ端たちを増やすチャンスでもあるな……頼むぞ、触手怪人」
「キャーッ! 助けて、リカピュア!」
今日も人々の叫び声を聞きつけてリカピュアが空から舞い降りる。
「大丈夫ですか!? さぁ、早く安全なところに避難して下さい!」
白が基調の中にリボンと一瞬に黒のラインがはいる。タイトなスカートから覗く白のタイツに包まれた足はカモシカのように逞しくてしなやかだ。成人男性ながらも細く美しい秩序ある肉体とミラクルな純白パワーを使い今日も人々を悪から守る。
そう、その筈であった。
人々が避難を終えたところに怪人が現れた。身体を白い布で覆いながらも、その内側で蠢く醜悪さにリカピュアは顔を歪ませた。
「来たな、無秩序でふしだらな悪党め! このリカピュアが秩序ある世界から貴様らを追い出してやる!」
いつもならば下っ端の手下たちがワラワラと現れるはずが今日にかぎっては、その怪人がひとり佇むのみであった。
一体、何を企んでいるのか。
少しの違和感を感じながらリカピュアはユニコーンステッキを振りかざし、殲滅すべき敵を見据える。
「私は触手怪人! 貴様にやられた怪人たちの仇を取りにきた!」
「しょっ、しょく、触手ぅーッ!? そ、そんな不埒なっ、ダメだ! いけない! 秩序が乱れている!」
白い布を取り払った怪人は肉色の卑猥な姿をリカピュアに見せつけるように晒した。
一気に顔を赤くさせたリカピュアに触手怪人は下劣な笑みを浮かべた。
「ふふふ、俺の特殊能力を喰らえ!」
ピカッと目潰しのような強い光に包まれる。身体を何かが通り抜ける感覚に身震いをさせたリカピュアはメガネの下の瞼を器用に擦った。
「っ、一体な、に……ッ!?」
普段よりも高く細い声に喉に触れる。ごつりとした喉仏の感触が消え、きめ細かく柔らかい肌が手に触れた。
「えっ!? なっ!」
ギチッと細身の服が悲鳴を上げて、バチバチと千切れる音がした。胸のボタンが弾け、胸元を飾っていたリボンが落ちる。
「ええ!? ちょっ! なんですこれ! おっp!? ハアッ!? ぎゃぁぁ女性の身体ァッ!?」