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    ParAI_t

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    ParAI_t

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    予期せぬエラーが発生しました / クロアス

    みみみさんのツイートを思い出し笑いしてたら、興が乗ってしまったので書きました
    予定では前者を採用するはずだったのにおかしいな…?🤔
    いつも以上にやらかしているクロービスさんをお楽しみください←

    ##クロアス

    ------------------------------------------------------------------------------------




    書庫の貸し出しカウンターの奥にある、司書室の休憩スペースにて。平素はグランロットの死神と恐れられる黒魔道士が、生気を失いテーブルに突っ伏していた。

    「いっそ殺してくれ……」

    クロービスとは長いつき合いになるがこんな顔は初めて見るかもしれない、とサシャとリーンハルトは苦笑する。
    先日レースで出くわした魔物からアステルをかばった際に、クロービスは一時的に記憶をなくしていた。現在は記憶を取り戻したものの、喪失中に恋人へ酷い態度をとった事が忘れられないらしい。顔を合わせるのが気まずいためか、ここ連日アステルから逃げ回っている。

    「魔物の影響ですし、彼女も気にしないといってましたよー?」
    「だからといって許されることではないだろう……!」
    「そもそも普段から、落差を感じられるほど優しくもしていないでしょうに」
    「……うるさい」

    キッと睨み付けるクロービスに、彼女から聞いた話が元なんですが、という言葉をリーンハルトは飲み込んだ。代わりに、このちょっとした空元気の後の、少し寂しいですけどね、と付け加えたときの恋する乙女の姿も教えてはやらないと決める。まあ、どの道クロービスが自分で確かめるべき事柄ではあるのだが。

    「それならなおのこと早く謝った方がいいのではー?」
    「逃げ回っていても解決はしませんよ?」

    両者から畳みかけられ、反論の余地がないクロービスは轟沈する。謝罪は早い方がよい、などということは、言われなくとも重々わかっていた。実際何度も試みてはいるのだ。だが、この任務の達成には1つ大きな障害が立ちはだかっていた。

    「……わからないのだ」
    「んー? なにがですかー?」
    「彼女とどう接していいか、わからない」

    アステルと過ごした思い出は鮮明である。むしろ問題なのはそこだった。クロービスとアステルはじっくりと絆を深め、紆余曲折を経て晴れて恋人同士になったのだ。その長い年月が早送りで戻ってくるということは、その間の膨大な感情の波が一斉にフラッシュバックしたということでもある。
    頼りなさが誇らしさへ、気楽さが切なさ、そして恋しさへと一気に変わり、自分の抱えていた想いの大きさに、クロービスは狼狽するしかなかった。きまりが悪いなんて程度ではない。エストレア杯の時と同じく、いやそれ以上に、今のクロービスはアステルに対して何をするかわかったものではなかった。詫びてから行うべきの様々な衝動を抑え込みながら会話をすることは、困難を極めている。

    「彼女を目の前にすると、愛しさがこみあげて何を言っていいかわからなくなるのだ……」
    「それをそのまま言ってしまえばいいのではー?」
    「そんなことできるわけがないだろう……! それに……」
    「それに?」
    「もう、とっくに愛想を尽かされているかもしれぬ」

    絞り出すように言葉を発したクロービスは、よく眠れていないことも相まって憔悴しきっている。謝罪を優先した結果、言えないままに時が過ぎ、アステルを完全に放置する形となっていた。遅れたからにはきちんと誠意を見せねばと意気込むほど、合格基準は天井なしに上がっていく。元々の口下手さからすれば、正直なところもはや手が付けられない有り様である。段々と、拒絶された場合の嫌な想像も加速度的に膨らみ、ますますアステルと対面する事が躊躇われていた。
    そんな意気消沈するクロービスに、その心配はひとまず必要ない、と二人が宥めるより早く。この場に割って入る声がある。

    「それだけは絶対にありえません!」
    「あっ」
    「あー……」
    「…………は?」

    クロービスは声が聞こえた方向を室内で探す。そして、サシャとリーンハルトの影に、起動中の魔道交信機を発見した。クロービスは震える手でそれを指差し、最早明らかな事実の確認を行う。

    「……これは、いつから?」
    「クロービス殿の『いっそ殺してくれ……』の辺りからですかね」
    「それはほぼ最初からだな……!?」

    どういうことだ、とクロービスが更に問い詰めようとしたところで、騒々しい足音が貸し出しカウンターの方向から聞こえてくる。元々はクロービスから謝罪の一つでも引き出せれば事態は解決すると見立てての一連の行動だったが、この様子なら後は彼女がうまくやるだろう。そう判断したサシャとリーンハルトは、部屋の出口へと向かった。クロービスも立ち上がり、その後を追う。

    「それでは邪魔者は退散しますね」
    「移動魔法で逃げちゃ駄目ですからねー。そもそも王国の書庫では魔法は使えませんがー」
    「待て! まだ話は……!」

    いい笑顔で立ち去る2人を呼び止める声は、暗い廊下に虚しく反響した。
    すれ違いに、交信機の声の主の姿が近付いてくるのが見える。明るい室内にいるクロービスからは、顔に影が落ちていて表情がよく見えない。ただ一つ確かなことは、記憶が戻ってからというもの、遭遇することを躊躇していた人物が迫って来ているということだ。クロービスは自然にじりと僅かに後ずさる。心臓の鼓動がうるさいほどの音を立てて早まっていくのがわかった。謝罪の言葉はとっくの昔に用意していたが、やはり今もまともに言える自信はない。後退する速度よりも早く、ずんずんと歩み寄った人影は、クロービスの前でぴたりと止まる。息を切らし頬を紅潮させたアステルの瞳には、涙が滲んでいた。

    「クロービスさん……」
    「な、なんだ?」
    「良かったぁ……!」

    アステルはぽすん、とクロービスの胸に顔を埋める。背に手を回しクロービスをゆるく抱きしめると、肩が静かに震えていた。
    アステルにしてみれば、恋人に記憶が戻ったというのに、中々満足に話をすることができない状態だった。目を見れば何事かに悩んでいる様子は察せられたので、クロービスを待つと決めたものの、ここ数日は一向に進展する兆しが見えず。記憶が戻ったら元の関係に戻れるという自信が日に日になくなっていっていた。
    交信機ごしに聴けた声に安堵した気持ちはもう止めることができない。ぽたり、ぽたり、と寂しさが雫となって、頬を伝っていく。
    クロービスは、熱い息を吐くと、ぎゅっとアステルを強く抱きしめた。落ち着かせるつもりの行動に反して、アステルは声をあげてしゃくりあげ始める。完璧な謝り方の計画は既に破綻していた。

    「その、すまなかった……」
    「…………」
    「謝っても許してもらえることではないが……」
    「…………」
    「許して、ほしい」

    アステルが泣き止む気配は一向にない。クロービスは、抱きしめ返される腕の力が以前と同じになるまで待つことに決めて、静かに頭を撫で続けることにした。
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    ParAI_t

    MOURNING11月のカレンダー没案です。
    クリスタニア編でリーン様が不穏なこと言ってた印象が濃い辺りの頃に書いたので、今思うと「とにかく無事に終われ!?」みたいなノリをひしひしと感じる←
    アプリ版だと第一部のラクリモッサでしばらく三柱でお茶会してないみたいな話があったので、こんな風な日常に戻ってたらいいよねぇみたいな願いを込めてます。
    いやぁ、今週のクリスタニア編も楽しみですね☺️
    11月カレンダー没案(サシャ・リーンハルト) ほう、とついた息が白く漂う。もうそんな
    季節になったんですねー、としみじみとして
    サシャは陶器の音をテーブルに響かせた。
     本日の茶会は鮮やかに色付いた秋を
    鑑賞しようと屋外で行うことになっている。
    外気での冷却も計算に入れてあるから、
    ティーポットの中身はそろそろ飲みごろに
    なるはずだ。あとは二人を待つだけですね、
    と視線を上げれば、はらりと赤や黄が高い
    空に散っていた。かつての戦いと同じ季節が
    これほどまでに穏やかに過ごせているのだ、
    とサシャはゆるりと目を細める。
    「おや、あいつはまだ書類と格闘中かな」
    「年の変わり目も近いですからねー。魔道
    交信ではもうすぐ来ると言ってましたがー」
     そうしてさらりと金の髪を揺らす赤い鎧も、
    358

    ParAI_t

    DONEドロライ参加作品です。お題は「いい夫婦の日」。
    モブ秘書がクロアス夫婦+子供を観察してる謎の話になります。需要は私にある(澄んだ瞳)
    キャラスト3話で父さん母さん呼びしてたのに、なんか今は父上母上呼びしてるから、つまり結婚後はこんなんじゃない?みたいなノリで書きました。
    いずれ職場で「パパは〜」とか言っちゃう話も書きたい。結婚後でなくても天惺獣関係ならスレイヤー全員やらかせる余地はあるしな…!←
    困惑メラビアン−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−































     どうも直属の上司は厳しい人柄、らしい。風の噂でそんな評判を聞きつけて、グランロット王国宮廷魔道士長、クロービス・ノア付となった新任秘書は、緊張に身を固くして部屋の扉を叩いていた。出迎えた予想と違わぬ鋭い眼光に気圧されつつも、準備をしていた甲斐もあり用件は滞りなく進んでいく。
     魔王との長きにわたる戦いを終えたグランスレイヤーともなればこの威厳も当然か。多方面に渡る業務内容を迅速かつ正確無比にこなしていく姿に、秘書は自分なりに答えを得て、一礼し退出しようとする。そうして顔を上げた刹那、廊下からかすかに幼子の声が聞こえてきた。
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    ParAI_t

    DONE※いつも以上に原作の行間にクロアスをねじ込んでいます
    ※※特に本筋ではないのですが、若干ガレル・パレル編のネタバレを含みます

    オトメ勇者初恋Webアンソロジー寄稿作品になります
    ほぼほぼ謎の青年C(AとBがないのが作為的とか言わない)が活躍しているクロアス(?)な雰囲気ですが、お楽しみいただければ幸いです
    今週のクリスタニア編と矛盾しないといいなあ…(直し入るとめんどいなという顔)
    キャンディタフトは甘やかに揺れる / クロアス----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
















     その名の通りに飴で出来ているかのように、小さな白い花は甘く香っていた。

    「クロービスさん。頼まれてたもの持ってきましたけど、どこに置いておきますか?」
    「ああ、机に空きがあるだろう。そこに頼む」
    「はーい」

     年代物の深緑の図鑑から目を上げ指示を出したクロービスは、すぐに意識を机に戻すとリストへチェックを入れる。本日この時間のクロービスの業務は、実験室での魔法薬の調合だった。王城に併設された植物園から運んできた花の色と香りに、何かを思い出したアステルはなんの気なしに口にする。
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    ParAI_t

    DONE※オトメ勇者最新話(第57話)ネタバレ
    お題は「神無月」です
    今週もまたすごい展開でしたねえ
    推しの心情深掘り第2弾ということで、今週の展開を踏まえた今回もまるで先行きが明るくはないお話です
    毎週のお題に合わせて可能な限り続けていきたいけど、多分そのうち矛盾すると思う(確信)
    書いてて思ったけど、メインストがトゥルー爆走してるなあと思うと同時に箸休め回をくれ…!
    イチャコラさせる暇がないんだよなあ
    裁きの光は虚ろにて / クロアス----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------



















     勇者は、死んだ。エルドアの淡々とした発言を聞いたクロービスは、しばし呆然と立ち尽くしていた。六天魔という異常事態を片付けねばならない、と理性が警告を発しているものの、目の前の光景はとうに現実味を感じられなくなっている。
     いつかの悪夢のように魔物に命を狙われたとしても、守ってやれるはずだった。それがこの現状はどうだろう。女神の声を聴く者は、これほどに呆気なく希望の光を握りつぶし平然としている。傷つき悩み、憂い惑い、それでも譲れないもののために何度でも立ち上がって剣を振るっていた少女を切り捨てる事が、この聖なる地の正義だった。
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