君の好きなものを教えて玖楼国から移動した先は特に争いもなく、穏やかな国だった。
留まる間の資金の確保、寝床の確保を終えて、ようやくひと息。
翌日から本格的に活動をしようかと話した矢先に、この国の伝承について調べてくると小狼は1人、部屋を出てしまった。
「…ねぇ、黒様、気づいてるでしょ?」
ソファに項垂れるように座っていたファイは向かいに座る黒鋼に問いかけた。
「何にだ?」
向かいの黒鋼は天井に向けていた視線をファイに移して応えた。
「小狼君が俺たちに遠慮してるというのか、余所余所しいというのか…」
「んなの、この旅始める前からだろ」
「…だよねぇ」
「小狼…前の旅の時もあんまりモコナたちとお話しなかったよね…」
部屋を見て回っていたモコナもファイの頭の上に着地して同意した。
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