一緒に毎年、彼は薔薇とメッセージカードを贈ってくれていた。私も彼の好物といいワインを用意して愛してるって腕を広げるの。そうしたら包み込むように抱きしめられてオレも愛してる、って。
大好きだった。愛してた。でも私と一緒に生きてはくれなかった。ある日、目が覚めると彼と彼に関するものが全て消えていた。彼が使ってたカップも置いていた服も何もかも。もう、彼が私と生きた証拠は一つもない。
それでも私は彼が忘れられないでいる。
彼が消えてから二度目のバレンタインがやってきた。私は変わらず彼の好物とワインを用意して薔薇を飾った。ぼうっとしていたせいで冷めたそれを口に運ぶ。
「まず」
こんなに味がしなかったっけこれ。今まで何回も作ったのにな。
馬鹿みたいだ。いや、馬鹿なんだろう。彼が戻ってこないことなんてとっくに知っている。最後まで教えてくれなかった仕事もなんとなく分かってる。分かってるのに。こんなに彼の体温が恋しい。
生きてなんて、言えない。でも一緒に死にたかった。