特殊性愛リゾット
カニバリズム(食人性愛)
「愛してる、愛しているんだ」たった今息を止めた女の横で囁くように告げる。膝をついてその薄い腹をゆるく撫で、一つキスを落とした。そして、腹に歯を埋め柔い肉を喰み暖かな血を舐めとる。「本当に、愛してる」男は幸福と興奮を感じながら生暖かい肉を噛み締めた。
彼に愛されるには息を止めるしかなかったの。
プロシュート
コーリオフィリア(舞踏性愛)
踊る踊る女が踊る。しなやかに軽やかに艶やかに。くるくる舞ってふわふわ跳ねる。
あの柔らかな身体を自分の思うままに歪められたら、きっと___。男は酷く熱い息を吐いて思い描いた空想を本物にすべく、まだ、何も知らぬ女の元へ足を進めた。
彼女は踊り続けます。
ペッシ
エメトフィリア(嘔吐性愛)
俺を庇って攻撃を受けて敵を殺しつつも蹲って。苦しそうに眉を顰めてごぼりと胃の中身をブチまけた。嘔吐物の真ん中で何度も咳き込み喉を焼く胃酸に目を潤ませて口元を汚す君が___今まで見た何より綺麗だなんて、絶対に言えやしない。
本音を吐いてくれない彼女の中身。
ホルマジオ
サディズム(加虐性愛)
革製の拘束具でギチギチに戒められた身体にリングギャグで無理矢理開かされた口、不安そうに寄せられた眉。そして、何より恐怖を色濃く映す瞳。余りに甘美なそれに思わず笑顔が溢れる。その恐怖を更に美味しくする為に男は震える女にゆっくりと手を伸ばした。
彼に惚れられたのだから帰り道はいりません。
イルーゾォ
ソムノフィリア(睡眠性愛)
ギラついた視線の先には深い眠りにつく想い人。服を剥ぎ取っても身体を撫でても薬のおかげで彼女が起きることはない。いつからだろう意識のないお前にこれ以上ない興奮を覚えるようになったのは。そんな思考もすぐに溶け覚醒することのない身体を夢中で貪った。
彼女が永遠に目覚めなくなるのはそう遠くはないでしょう。
ギアッチョ
ダクライフィリア(泣哭性愛)
泣く姿なんて今まで見せたこともなかったアイツの涙は知らなくてよかったオレの欲に炎を灯した。あの、頬を滑る雫がオレの為であったなら___あぁ、きっと知らないほうが幸せだっただろうにオマエもオレも。
彼女は病めるときも健やかなるときも涙を流すことになりました。
メローネ
アガルマトフィリア(偶像性愛)
人間を愛したことは一度もない__なかった筈なのに。あの子が欲しくて堪らない。でも、生きた人間は駄目だ。良くないとても良くない。だって人間は熱くて動いて思考する。きっと裏切る。だから、だからあの子を材料に人形をつくろうと思うんだ。皮も骨も髪もきっといい材料になる。なぁ、いい考えだと思うだろ
彼女の微笑みはもう崩れることはない。
ソルベ
オキュロフィリア(眼球性愛)
肩にもたれ掛かった彼女の瞼へ口吻を落とす。テレビをぼんやり眺めていた目がこちらを向く。瞼を甘噛するとくすぐったいと笑った。穏やかな日常に見える。__彼女の片目が真っ暗な虚になっていること、眼球の行方が彼の腹の中であることを除いたら、ね。
彼らにおかしな所はないのです。
ジェラート
オードントフィリア(歯牙性愛)
彼女の歯が好きだった。白くて歯並びも良くて八重歯が可愛い。なのに何処かの野郎がその歯を欠けさせやがったきっと頭は伽藍洞で目も節穴なんだ。怒りのまま犯人を見つけ出して嬲り殺す。あの子の歯はいずれ俺のものになるんだから責任はとって貰わないと。
何も知らない真白の君。