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    シカイ

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    シカイ

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    “それ”は救いの呼び水足り得るか

    みゃく密輸チームの一人が海外から運んできたモノと共に消えた。組織への裏切りである、殺せ。

    その任務から全ては始まった。











    なんでもない任務の筈だった。海外…運ばれて来たのはアメリカから、だったか。つくられたのはジャポーネらしい。歴史的価値のあるだの、好事家からは求められているだの、こちらとしてはどうでもいい情報。簡単に言えば金になる。交渉の材料に使える。そういうことだ。それを持ち逃げしたバカを殺すだけ。いつもの通りにオレとソルベで対象の情報を調べてリーダーに渡す。他のメンバーは任務地が遠方だったり時間帯の都合だったりで出れないそうでリーダー自らヤるらしい。オレらが出てもいいって言ったんだけど分かりにくい労りと共に断られた。そう、リーダーが行くまでもないそんなチンケな任務だった。







    疑心を抱きあるいは不安げに、もしくは冷静さを失わず暗殺を生業とする男たちはアジトとしている建物に集まっていた。いつもその視線の先にいる人物だけが、不在だった。
    「リーダーから連絡こないってマジなのか」
    「任務梯子してるとかじゃないの」
    「分かりきったこと訊くんじゃねえ。そうだとしても全く音沙汰無しってのは有り得ない」
    仕事に対して生真面目な質なのはメンバー全員が知ること。無駄な連絡はないが必要な連絡をしないことだけはないと断言できた。
    ここに集まった時点で異変を感じていない者などいないのに。あのリゾットが、と飲み込めきれぬ感情を無理矢理喉に押し込んで話は進んでいく。

    「任務概要、難易度、現状」
    「密輸チームからの裏切り者の始末。
     C−。
     昨日12時、現地からの経過報告を最後に連絡が断たれる。完了の報告もなし」
    「今この時点では生存死亡行方全てが不明」

    「B−以下っつーことは戦闘とかも担当してないターゲットだろ。可能性は限りなく低いがスタンドを発現したところでリーダーに勝てるとは思えねー」
    「隠してたとかは?」
    「ジェラート達の調査でナシって出てんだからあるわきゃないだろが」
    「雇ったとか」
    「そういう人脈も見つかってない。組織が、オレ達が把握しているプロフィールから見るに何人でもいる最末端の構成員だ」
    「…なんだァ!!??このキモチ悪い感じはよ!明らかに可怪しいだろ!!」
    「ギアッチョ、落ち着け。先に言っとくが間違っても蹴ってソファーのバネを飛び出させたり灰皿を机に叩きつけるんじゃあないぞ」
    「相変わらずうるっせえなあ。でも気持ち悪いってのには同意するぜ。言葉では表せないが…変、だよな」
    「…兄貴?」
    「…オマエ等!動け、時間がねえ」
    「え、あ兄貴何か、知って…」
    「いや。だが、時間がないことだけはハッキリと『理解る』!!取り返しのつかないことが起こってると確信できるぜ、なア、ホルマジオ」
    「…あ〜〜〜しょうがねえなあップロシュート、とジェラート、ソルベ後頼むぞ。オイ、他の奴らはやること割り振るからこっちこい」


    「パソコンの方はどうなってる」
    「ソルベとメローネでやってる。もうちょいかかるって」
    「メローネに死ぬ気でやれって言っとけ」
    「やってるし」
    「うるせえ!!!チッ書類系はホルマジオになげとけ。アイツはリゾットの筆跡で書ける。確認したが重要性はない書類だバレたとしてもさして問題ねえ」
    「さっき枚数見て顔引き攣らせてたけど」
    「しょうがないだろうがリゾットの筆跡書けるのアイツとソルベしかいねぇぞ」
    「イルーゾォは?」
    「ペッシ連れて移動用の鏡置きに行った。ひとまず、最後の任務地とその近隣の目星つけた所。先に捜しに行ってるギアッチョと後で合流することになってる」
    「…見つかると思う?」
    「………ないな。勘だが」
    「やっぱりぃ?はぁプロシュートの勘当たるからやだな」
    「こっちのセリフだ。金にならない仕事をソルベがやってる時点で本気でヤバいのが分かんだよ」
    「あは、ひどい認識。間違いないけど」

    「上はリゾットが消えたと知ったらどう思う」
    「最近報酬の支払いも特に悪いし、邪魔だと思われてるのが丸わかり。消えたのがチームのリーダーだとしたら真実はどうであれきっとこう言うぜ」
    「「『暗殺チームは裏切り者だ』」」
    「飼い殺しかな?それとも古参のオレらは口封じ兼見せしめに殺されるかな?」
    「さぁな、少なくとも栄光には程遠い」
    「急がなくちゃ」
    「知ってるさ」
    「…プロシュート」
    「分かるだろ、危険はオレ達の隣人だ。そういうことはリゾットが見つかってから考えても遅くはない」
    「ん…。ソルベにも言っとく」
    「そぉしろ。オレはオレで情報収集する。進展があれば連絡よこせ」











    足首までの水が揺れる。
    ここはいったい、どこだ。
    日常になっている筈の暗闇に目を彷徨わせる。
    地は水で満たされ、どう立っているのかさえも分からない。
    オレは、なにがあったのか、なぜ、どこに。
    揺蕩う思考を掻き集め情報を得ようとなんとか一歩踏み出した。水の入り込んだ靴は重く、踏みしめる度にがぽりと音がする。不快。不快?いいや不快じゃあない。冷たい水は人間を歓迎している。いやなにを。オレは何を考えた?うれしい。密輸チームの。水は涸れない。ターゲットは。


    果たす。
    みなを。
    任務を。
    まねかなくては。


    水瓶。


    ひとつ ゆうすい かれることなし
    ふたつ であえば ぼうしついたす
    みっつ めぐりて こちらにおいで




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