One Month Loversストーカーされてる🏛の仮彼氏になるとこから外堀埋める🌱の話
高校生現パロ軸
🌱🏛🍄⚖️は男子校に通ってる
🏛と🍄と⚖️は高三
🌱だけ高二
🌱と🏛は近所で今は下宿先で同居
4人とも塾が同じだったから仲がいい
◈◈◈
注意事項:現パロ高校生のアルカヴェです。
友情出演のティナリくんとセノくんがいます。
あと普通にみんな友人友人してる。
捏造1000000%です
◈◈◈
「そういえば、最近よく落とした記憶も無いのに物が行方不明になるんだ。大抵は二日三日したら職員室の拾得物箱の中に入っているんだが、ちゃんとロッカーに仕舞っていた筈の体操着が無くなっていて僕は唖然としたね、あんなもの一体どこに落とすんだ」
行きつけのファーストフード店でジュースを飲みながらカーヴェはそう切り出した。
夕方、高校が終わって塾が始まるまでの空き時間にこの店で、アルハイゼン、カーヴェ、ティナリ、セノの4人で集まって夕食を取りつつ宿題を進めるのが彼らの日課だった。
向かい側でナゲットをマスタードソースに浸していたティナリが怪訝そうに耳を揺らしてノートから顔を上げる。
「体操着が無くなったって、どんな風にだい?」
「月曜日の五限まではロッカーの中にあったんだ。けれど、終礼を終えて僕がそれを持ち帰ろうとした時には既にそこに体操着は無かった」
おかしな話だろう?五限が終わって終礼が始まるまでの掃除の時間にそんなもの使わないのに。
「……君、ロッカーにはちゃんと鍵をかけていたのか?」
宿題をやるつもりはさらさらないのか、とりあえず教材を出すだけ出して本を読んでいたアルハイゼンは、そう言ってカーヴェの前にあったポテトを一つ摘み口の中に放り込む。
「かけていたよ、でもまぁその鍵も先週一度二日程行方不明になっていたんだがな……あ!それは僕のポテトだ」
「君に今日体操着を貸したのは俺だろう、これくらい貰っても許されると思うが?」
「ゔ……わ、わかったよ、ならもう一本おまけしてやる」
そう言ってカーヴェはもう一本自分のポテトを摘むとケチャップにそれを浸してアルハイゼンの口に押し付ける。
その様子を見ながら、先程までだんまりを決め込んでいたセノが問うた。
「……ここ最近で、何か他に困ったことやおかしいと思ったことは?」
「関係があるかは分からないけど、机の中に何処かの生徒からの手紙が入ってる事があってね。交際の申し出なんだが、宛先不明だから断ろうにも断れなくて何か良い方法はないか困っていたんだ。僕はそういったことに興味は無いからね。でもまさかこんな男しかいないこの学校でこんな手紙を貰うなんて思ってもいなかったよ」
あ、あと何故か最近無言電話が増えたのと、帰り道とか誰かに後ろから見られてるなって思うことが増えたんだ。なにかあるんなら直接言ってくれれば良いのに。
そう続ける彼を三人はしばし驚いたように見つめ、そして深い溜息を吐いた。
そこまでいけば完全にストーカーだ。被害にあっているというのにどこまで鈍感なんだ、この男は。
「君、その手紙の主からは他に何も貰ってないだろうな」
「いや、今日手作りのクッキーを頂いたぞ。今朝学校に来たら机の中に入っていたんだ。ちゃんと礼を言いたいから面と向かって渡してくれれば良かったのに。ほら、これだ。あっ……!」
カーヴェがごそごそと鞄から取り出した小さなクッキーの包みを、アルハイゼンは手に取ると立ち上がってそのまま店内の燃えるゴミ箱の中に突っ込んだ。
「何するんだ!いくらなんでも捨てることは無いだろう!!」
「君、もしかしてこの菓子を食べるつもりだったのか?」
そう言って怒るカーヴェに、至極不思議そうな顔でアルハイゼンは首を傾げ席につき、読書を再開する。
「……当たり前だ。折角、手間暇かけて僕の為に作ってくれたものなんだ。たとえ作り主の顔が分からなかったとしても、それが礼儀というものだろう?」
「君はその人の申し出を受け入れるつもりは無いのだろう?それならその菓子を食べることは不誠実では?それこそ、些か礼儀に欠けると思うんだが」
迂闊に人を勘違いさせて、期待を持たせるようなことはするべきでは無い。
そう続ける彼の言葉に、食べ終わったハンバーガーの包み紙を丁寧に折り畳んでいたティナリも、さっさと一つ課題を済ませた様子のセノも深く頷いた。
「そこに関しては僕もセノもアルハイゼンに同意だね。それに何より、見ず知らずの人の手作りなんて何が入っているか分かったもんじゃないし」
「ゔ……確かにそれは一理あるな。………なぁ、彼に諦めてもらう方法は何かないか?」
彼のその問いに3人は暫らく考え込んで、やがてぽつりとアルハイゼンが呟いた。
「……俺が君の彼氏を演じる。そしてそれを学内に広める。そうすれば向こうも脈ナシだと思って諦めるんじゃないか?」
丁度君と俺は下宿先が同じだ、現実的にも一番有り得そうだろう?
それに君がそういった事に興味が無いのも俺は十分承知している。変なことにはならないだろう。
アルハイゼンがそう続ければ渋々といったふうにカーヴェは首肯した。
「………それもそうだな。とりあえず一ヶ月でいいか?流石に、それだけあれば向こうも引き下がってくれると思うんだけど」
せめて顔を合わせて話をしてくれたらなぁと言うカーヴェを尻目にセノとティナリは机の上を片付けはじめる。
時計を見れば六時二十分前。
そろそろ塾の教室が開く頃合いだ。
取っている授業がアルハイゼンとカーヴェより一コマだけ早い彼等はそろそろ教室の席取りをしておかなくてはならない。
「僕達にもできることがあったら手伝うよ」
「そうだな、ただあまり酷いようなら先生に相談することを勧める。何か問題があってからじゃ遅いからな。じゃあまた授業後に」
そうやって去っていく二人を見届けて、カーヴェはアルハイゼンに尋ねた。
「君は、僕たちと違って高校二年だから委員会もあるし、忙しいのにほんとに良かったのか?……助かるけれど」
「それを言えば高校三年の君達だって受験を控えているのだから同じだと思うが?」
そう、カーヴェ、セノ、ティナリの三人とアルハイゼンではひとつ学年が違う。
三人とも幼稚園からの幼馴染で、特にカーヴェとは家が隣で高校に上がってからの下宿先も同じ、そんな腐れ縁みたいな関係が続いているから先輩と後輩の関係であるにもかかわらずタメで話しているが。
そして、彼の受験が終われば、このままの関係であれば、とうとう彼と離れ離れになってしまうことをアルハイゼンは理解していた。
文系の言語学科を志望しているアルハイゼンと理系の建築学科を目指すカーヴェでは進路があまりにも違うから。
この話をもちかけたのもだからこそだ。
先程はカーヴェに、変なことにはならないだろうと彼は言ったが、下心が無いと言えばそれは真っ赤な嘘になる。
十数年来の付き合いを通してアルハイゼンはカーヴェに恋慕とも言える感情を抱いていた。
そしてそれを伝えられないままだらだらと月日は過ぎ、もう十一月も下旬である。あと一ヶ月もすれば世の受験生はこれから二ヶ月後に控える共通テストと滑り止めや本命の私大の受験に向けて忙しくする頃合だ。
だからこの騒動は外堀を埋めるのには丁度良かった。
「……それもそうだね。ありがとう。それじゃあこれからよろしく頼むよ、僕の恋人さん?」
そう言ってカーヴェは作業する手を一度止め、左手をそっとアルハイゼンの方に差し出した。悪戯っ子のように彼の柘榴石のような紅い瞳がきらきらと輝く。
ふ、とアルハイゼンは口角を持ち上げ、近くにあったストローが入っていた紙の袋を手に取ると彼の白くて細い薬指にそれを巻き付け蝶結びにした。
「勿論だよ、俺の愛しい人」
かくして一ヶ月の恋人ごっこが始まった。
◈◈◈
「今日の君、いつもに増して顔が赤いけど、大丈夫?風邪を引いてるなら家で休むべきだと思うんだけど」
アルハイゼンとカーヴェが仮の恋仲となって三週間程経ったある日のホームルームと一限の授業の移動時間。
肩を叩かれ後ろを振り向けば、少し心配そうな顔をしてティナリがカーヴェの方を見ていた。
「……最近アルハイゼンが怖い」
教科書の束を抱えたままカーヴェは嘆息して後ろをついてくるティナリとセノにそう返す。
「へぇ………一体何があったんだい?」
少し面白そうな笑みを浮かべて尋ねてくる彼に、あ、これ完全に揶揄われているな、と思いつつカーヴェは嘆息した。
「さっき、通りすがりにキスされたんだよ。……あいつ、あんな積極的になれたんだな。びっくりしたよ」
手洗いに行こうと高校二年の教室の前を通りかかったら、たまたま図書館から戻ってきた彼に出くわしたんだ。手を振ったら普段なら無視か、たまに手を振り返してくれるくらいなのに、今日はいきなり近づいてきたかと思ったら頬に口付けされたんだ。
何するんだって聞いたら、まだ見られてるかもしれないだろう、気を抜くなって。
「それにこの間なんか、いきなりあいつの教室に呼ばれてさ、一体何をするんだって思ったら自分のロッカーの中、半分ぐらい空いてるからそこを代わりに使えって話だったんだ。……まぁ確かにそうするようにしてから何も物が無くなったりはしなくなったけれど」
どうせ住んでる場所も同じなんだ。ロッカーを共用にしたところで何も変わらないだろうってね。
僕とあいつが同じ下宿先で同居していること、君達と先生達以外には隠してたのに、あいつったら教室の中で大声で言うんだ。もう僕はどうしていいか分からなかったよ。
「ふーん、まあでも周りはそんなに君たちのことに注意を払ってないと思うけど?」
「僕は学年が違うから、まだいいけどあいつは違うだろう?」
何せ授業中ずっと本を読むか内職しかしていないのに学力テストや期末はいつも成績トップを維持してるんだから。
そりゃあ目立つし僕だってそんな人がいたら顔と名前はすぐに覚えるさ。
「だから何人かの下級生からびっくりしたような目でこっちを見られて、それはすごく気まずかったな……」
「だが、俺らはあと三ヶ月後にはこの高校を卒業している。そんなに気にすることもないだろう?……それで、ものが無くなることは減ったとしてお前、無言電話は大丈夫なのか?」
それについてもなんだけどさ、と死んだ魚のような目でカーヴェは渡り廊下の外からアルハイゼンのいる教室の方を見やる。
「こないだ塾から帰ってきて遅い夕食を作っていたら電話がかかってきたんだ。ほら、電車が遅れて塾前にご飯を食べれなかったあの日だよ。両親すら僕には殆ど電話を掛けてこないし、時間は夜の十二時過ぎだし、恐らくまた無言電話なんだろうなって思ってたところであいつが電話を勝手にとったんだ」
待ってとカーヴェが制止する暇もなく彼は応答ボタンを押し、そして何も言わない相手に向かって言ったのだ。
カーヴェなら俺の隣で寝てるが?
と。
当然カーヴェは羞恥と焦りで顔を耳まで真っ赤に染めて、鍋にかけていた味噌汁のことも忘れアルハイゼンに掴みかかった。
勿論二人とも受験に向けて勉強を優先順位の一番にしている学生であるため、仮とはいえ恋人の関係でも体の関係にまでは至っていない、当たり前だ。
「ば、ばばば、莫迦ハイゼン!!変な誤解をされたらどうするんだ!不純異性交友は学則で禁止されてるだろ!」
あんな事を言われたら絶対この二人はそういう関係なんだと思われてしまう。
交際までなら兎も角「そういうこと」は未成年たる自分たちにはまだ早ければ、変に先生に伝われば大変なことになりかねない。
たとえば停学とか退学とか。
しかもカーヴェに懸想している相手は学内の人間だ。変な噂を広められたらたまったものではない。
そう慌てるカーヴェに対してアルハイゼンはどこまでも冷静だった。
「別に、俺と君は同性だから何も問題は無いだろう、あと味噌汁が吹きこぼれかけてるぞ」
「ああもう、そういうことじゃないんだって
、君って奴は!あああ、火を止めなきゃ!」
「……嫌だったのか?」
アルハイゼンの問いにしばらく沈黙し、煮えたぎってしまった味噌汁の液面を眺めながらカーヴェははにかみつつ、ぽつりぽつりと呟いた。
「それは……別に、この一ヶ月を抜きにしても君とだったらそういう関係になってもいいとは思ってはいるけど、あの、今のはさすがに恥ずかしかった……悪いな、少し煮えてしまった。少し味は落ちるかもしれないけど許してくれ」
「大丈夫だ問題ない。君の作る味噌汁ならどんな味だったとしても毎日食べていたいからな」
それって確かプロポーズに使う言葉じゃなかったっけ、そう思ってカーヴェがアルハイゼンの方を見遣れば、既に彼は何事も無かったかのようにリビングの椅子に座って黙々と本を読んでいた。
「…………っていうことがあって、あの時から今までは無言電話も掛かってきていないよ」
そこまでカーヴェが話したところで、ティナリは思い出したように彼に訪ねた。
「それで彼が怖いって言うのは?」
「ああ、あいつが僕に気があるのかなって、僕が誤解しそうで怖いんだよ。恋人を演じてくれって言ったのは僕だよ、僕からだけど、あまりにも本気すぎて演技なのかたまに忘れそうになる」
「確かに彼、演劇部からスカウトがかかることもあったし、そういうの上手いからね。まぁでも案外上手くいくかもしれないよ、君と彼。
別に君はアルハイゼンのことが嫌いじゃないんだろ?」
「……それはそうだが、これが人に恋をすることかって言われたら、まだよく分かっていないんだ」
「一緒にいて嫌じゃないんだろ?なら残りの一週間で君が彼に向けてる感情について、じっくり考えてみなよ」
確かにそれもそうだ。期限は残り一週間。七日もあれば答えを出すには十分だろう。
「わかった、そうするよ」
そう呟くカーヴェの顔はほんわりと赤く上気していて、柘榴石の紅の双眸は何処か物思いに耽るように夢見るような色をしていた。
……なんだ、一週間、彼への気持ちを考えるようになんて言わなくてもちゃんと君は彼に恋をしてるじゃないか。
早くくっついてしまえばいいのに、ティナリとセノは顔を見合せ、それから深い溜息を吐いた。
◈◈◈
ファーストフード店で仮の恋人になろうという約束を結んで今日で一ヶ月。
丁度十二月二十四日、クリスマスイブだ。
とはいえ、受験生にそんなものは要らないとばかりに塾は相変わらずあるのでそんなムードはなかったが。
塾の授業が終わればもう夜の十時過ぎで、そこから最寄り駅までのイルミネーションで飾られた人気の無い道を二人は無言のまま歩く。
時間も遅く人っ子一人居ないその通りに聞こえるのは、どこかの店から繰り返し流れ続けているジングルベルの音楽と遠く聞こえる電車のごとごとという音の他には彼らの息遣いだけ。
「あと三週間で共通テストだってさ」
ぐず、と寒さで赤くなった鼻を鳴らしてマフラーに顔を埋めながらカーヴェは後ろを歩くアルハイゼンを振り返った。零した溜息が白い靄となって宙を流れる。
「……君の成績なら八割は余裕だろう?二年の俺だって六割は取れるのだから」
そう言いつつアルハイゼンはポケットに入れていた右手をそっと彼に差し出した。
そこにカーヴェが己のそれを重ねればかなり冷えていたのか、じんわりと熱が伝わってくる。
温かな手に白皙の細い指をきゅ、と絡めて彼はそっと呟いた。
「今日で、終わりだな」
空いてる右手で彼はがさがさと自分のブレザーのポケットをまさぐり白い指輪を取りだす。
紙製のそれは丁度一か月前のファーストフード店の中でアルハイゼンがカーヴェの左薬指にはめたものだ。
「……まだ持っていたんだな」
「まぁね。だって、期間限定だったとしても恋人からのプレゼントなんだ。とっておいて当たり前だろ。この関係が終わったら返すつもりだったしね」
そう言って彼は目を伏せて微笑むと、まるでそれが大切なものであるかのように、恭しくその指輪に唇を落として、再びそれをポケットにしまった。
「俺に返すんじゃなかったのか?」
その様子をみて怪訝そうに尋ねるアルハイゼンの翡翠の瞳にカーヴェは笑いかけ、それから至極真面目な顔をして口を開く。
「『だった』って言ってるだろ?
………アルハイゼン、この一ヶ月で気づいたんだ。
僕、どうやら君の事が好きみたいだ。……その、恐らく恋愛という意味でも」
だから、この関係をまだ終わらせたくはない。
震える声で彼は続ける。
「君への感情が長い間ずっと僕の中心にあるんだ」
最初はただの友達という関係だった。それが腐れ縁になって、その関係もどこかの地点で性質を変えた。
イルミネーションの明かりに照らされた柘榴石の紅い瞳は寒さのせいかそれとも別の理由でか少し涙で潤んでいるようにも見えた。
嗚呼、そんなことはもうずっと前から知っていた。
「……奇遇だな」
実は俺もそうだったんだ。
そう言ってアルハイゼンは彼と繋いでいた右手をぎゅっと自分の方へ彼ごと引き寄せると、左手でカーヴェの淡く赤く染まった頬にそっと触れる。
一瞬驚いたように柘榴石の瞳が見開かれ、それから彼が何をするのか察したのか、ふっとカーヴェの目尻が緩んだ。
唇と唇が重なる。
薔薇のように艶やかな淡紅の薄い唇を舌端でほんの少しつつけば、ねだるように彼は口を小さく開けた。
それを了承の印と受け取ってアルハイゼンがそこに舌を投げ込むと、まるで飴玉でも舐めるかのようにカーヴェはちろちろと分厚いそれを舐め回す。温かで薄い彼の舌のその動きがあまりに可愛らしかったので反対に舐め返してやれば擽ったかったのか逃げられて、意趣返しとばかりに歯列をなぞられた。
互いの口腔でできた小さな空間の中で二つの熱が互いを求めて動き回る。
聖夜の契りは濃厚で幸せな味だった。