宣戦布告 すっかりあいつの出前に慣れてしまっているが、たまには自分から出向こう。そう思い〈楽園〉へと向かっていた道中、海と陸の境であるコンクリートの上に、目当ての人物の姿を見つけた。
「かず……」
声を掛けようとして口を閉じる。なんだか様子がおかしい。僕は何かに急かされるように走り出した。
「総士、どうしたんだ?」
僕の気配に気づいた一騎は、海へと向けていた瞳に僕を映すと驚いたように二、三度瞬きをした。良かった、いつも通りだ。
「……昼食を食べに行こうとしていたところで、お前を見かけたから」
「わざわざ上がってこなくても……呼べば良かっただろ?」
呆れたように笑う一騎はやはり普段通りの様子だ。僕の思い過ごしだろうか。研究が思うように進まない焦りから神経質になっているのかもしれない。
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