初めてのお菓子作り「……い!…きて……!」
もう、だめだ。この薬を飲んで私も死ぬしか……
そう思ってた頃に誰かの、声が聞こえる。
「しっかりしろ!」
「この声……貴方、お姉ちゃんの……」
「そうだ。ここから出るぞ」
「無理よ、あいつらがいる限りそんなこと」
「あいつらはもう捕まった。ここにはこない」
「え?それってどういう……」
「いいから出るぞ」
「ちょっと……!」
それからライ──あとから赤井秀一だと教えられた──に連れられて、気づいたら2人で私の家で暮らすことになっていた。
組織はライ自身により警察に突き止められ崩壊したと本人から聞かされた。
あれから数年。
気持ちも落ち着いてきて、赤井さんと暮らすのにも慣れてきた。
お姉ちゃんのことを思い出したときや気が落ち込む時は彼が支えてくれている。
「志保、お菓子作りをしてみたいんだが……よかったら手伝ってくれないか」
「いいけど、いきなりどうしたの?お菓子作りなんてしたことなかったじゃない」
「ちょっとな」
少し待ってみたが、それ以上の返答は返って来る気配がない。
「?まぁ、いいわ。それで材料とか下準備は終わったの?」
「一応用意と準備はした。つもりだが……あまり自信はない」
そう赤井さんがキッチンに向かい始めたので、私も一緒についていく。
そこには砂糖、薄力粉、ベーキングパウダー、バター(無塩)、卵 があった。
どうやらバターと卵を常温にするのは知っていたらしい。
「基本のバウンドケーキでも作ろうと思ってな」
「いいかもね。」