終着点 (スレライ)風が、色とりどりの花々が咲き乱れる草原を優しく通り抜けて行く。
自分の手をみればその手は若き頃のモノで、老いた体ではないという事はつまりそういう事で、体から不思議と力が抜けた気がした。
今思えば長い、気の遠くなる様な旅路だった。
意思を引き継ぎ、旅に旅を重ね、そして次の世代に全てを託してきた。
旅の終着点は初めから決まっていたのかもしれない。
真っ直ぐと、草原の先を見据えればそこには懐かしくも愛おしい後ろ姿。ずっと秘めてきた思い。もう、遮る必要などなかった。
「ライラ」
その名を呼べばゆっくりとこちらに振り向く。
あの時と同じ柔らかで照れたような表情で微笑み返してくる。
「遅かったわねスレイ。もちろんお土産話、たくさんもってきたんでしょうね?」
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