終着点 (スレライ)風が、色とりどりの花々が咲き乱れる草原を優しく通り抜けて行く。
自分の手をみればその手は若き頃のモノで、老いた体ではないという事はつまりそういう事で、体から不思議と力が抜けた気がした。
今思えば長い、気の遠くなる様な旅路だった。
意思を引き継ぎ、旅に旅を重ね、そして次の世代に全てを託してきた。
旅の終着点は初めから決まっていたのかもしれない。
真っ直ぐと、草原の先を見据えればそこには懐かしくも愛おしい後ろ姿。ずっと秘めてきた思い。もう、遮る必要などなかった。
「ライラ」
その名を呼べばゆっくりとこちらに振り向く。
あの時と同じ柔らかで照れたような表情で微笑み返してくる。
「遅かったわねスレイ。もちろんお土産話、たくさんもってきたんでしょうね?」
乾いた心に水を与える様に、その声が、ずっと求めていた陽だまりのような声が届けばもう止まらない。走り、その体を強く、強く抱きしめる。
「会いたかった」
柄にないが心から溢れた本心。
回された腕の暖かさ。もはや言葉はいらなかった。
寄り添う二つの光は 交わり溶け合い
やがて一対の蝶となって 風の中に消え去っていった。