ドク……ドク……。
自身の鼓動とは異なる音に、ノースディンは薄く目を開けた。
「目を覚ましたか、ノースディン」
頭の上から声がする。緩やかに頭を動かすと、大きな手に遮られた。
「あまり動かない方がいい」
「クラージィ……?」
ロボットがノースディンを見下ろしていた。頭がずきりと痛む。
「動かない方がいい」
同じ言葉を繰り返して、ノースディンの動きを押しとどめる。それを妨げるようにノースディンが手を払った。
「何が起きた」
硬い声音で問いかける。泥の中から掬いだすように記憶がだんだんとよみがえってくる。私は意識を失っていたのか。ノースディンは愕然とする気持ちを内に押し込めた。
朝から体調が悪かったのは認めよう。ロボットの心無い言葉に少々……ほんの少々ダメージを負ったことも。しかしそれだけで気を失う程軟弱になった覚えはない。認めたくない。よりにもよってこの私が。
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