「久しぶりねミサト」
ドイツから未踏の地日本に来国した時真っ先にあたしの視線に入ったのはミサトだった。
本当はあたしの事覚えているか心配だったけどあたしが声をかけるとミサトは嬉しそうな顔をしてあたしを出迎えてくれた。
「二年ぶりじゃないアスカ。
大きくなったわねぇ」
たった二年のうちにあたしは身長も少しだけ伸びて大人っぽい印象になったと思う。
ミサトはあたしの頭に手を置いてよしよしと頭を撫でてくれてあたしは嬉しさで笑顔がこぼれ出る。
でも、それと同時にちょっとした後ろめたさも心にあった。あたしはミサトにも誰にも言えない秘密を持ち抱えているから。
αとβ。そしてΩという三つの姓が存在するこの世界。αとβがほとんどのこの世界だけどこの世にはΩと呼ばれる姓を持つ人間がいる。
あたしはそのΩだった。
αとβにとってΩは絶好の巣作りの対象で、あたし達は性別関係なくセックスによって簡単に子供を産める。要は奴隷みたいなものだ。
ヒートというめんどくさい発情期があったりして何かと生活に不便が出てしまっているけど抑制剤のおかげで今のところは何事もなく過ごしていた。
ミサトの姓はβ。どこにでもいる。ごくごく普通の姓。
変なαに抱かれて妊娠させられるのはいやだけどβのミサトならいいかなとは最近思い始めていた。でも、ミサトにはミサトの人生がある。
ミサトにだって好きな人はいる。
それを思えばあたしみたいなΩは邪魔になる。
あたしはそうしてミサトと恋仲になるわけでもなく特別な存在になるわけでもなくただの「上司と部下」の関係で過ごす事に決めた。
その後、ミサトの家であたしのちょっとした歓迎会が開かれた後、あたしはミサトに言われた部屋で静かに過ごしていた。部屋の外からはミサトがシンジにビールを飲ませてとせがんでいる声が聞こえる。
他人の声は嫌だけどこういうのは悪くない。
日本という知らない土地であたしは誰にも言えない秘密を抱えたまま無事に生活出来るのだろうか。
全てはあたし次第か…
そう思いながら眠気に任せて目を閉じる。
翌日からあたしの日本での生活は始まった。
初めての学校は正直言って退屈そのもの。
全部わかるけど答えるのも何だか面倒臭い。
「はぁ…」
休み時間になればあたしは自分の席でゲーム機を出してゲームをする。
たまにクラスの男子があたしに話しかけてくるが誰とも話したくないのでキックをお見舞いしてやった。どうせあたしと付き合いたいとかなんでしょ。バレバレだっつーの。
昼休みは大人数がいやで屋上で一人シンジの弁当を黙々と食べていると電話が鳴り電話の相手はミサトだった。
「もしもし」
「あ、もしもしアスカ?今お昼食べてるの?」
「うん」
「どう?初めての日本の学校は楽しい?」
「つまんない。早く帰ってエヴァに乗りたいわ」
「そうよねぇ…もう大学卒業してるんだものそりゃそっか。」
「ミサトはお昼食べてるの?」
「ううん、休憩時間使って貴方に電話かけてるの」
「そう…」
「今日NERVに来たらエヴァにたくさん乗せてあげるから我慢してね」