「ただいまー!」
三日ぶりの帰宅。だが返事が返ってこない。
あたしは街の修繕費やらなにやらで3連勤になってしまいろくに帰れてもいなかった。いつもの事だから慣れてはいたけど昔とは違う。
今はアスカという大切な恋人がいるから。
まだ付き合って間もないけど順調にやっていけてると思う。
3連勤になってしばらく家を空けてしまうと言った時「あっそ」と素っ気なく返事をするだけだったけど2日目ぐらいに突然アスカから電話が来て「早く帰ってきて」と言われた時には嬉しくてニヤけが止まらなかったけ……
アスカとも会う時間も減ってしまったからあんなに素っ気なくても内心心配しているだろうなと思いながら家のドアを開け声をかけたが返事はない。おかしいな電気はついてるハズなのに…
「アスカ?お風呂なの?」
リビングに通じてるドアを開けてリビングに足を踏み入れるといつもあたしが座っている所でアスカがスヤスヤ眠っていた。片手にはやりかけのゲーム機とリモコン。電気はつけっぱなしでテレビもついたまんまんになっている。
どうやらあたしを待つ中で眠くなって寝てしまったらしい。可愛いなぁと思いながら驚かせてあげようとアスカを起こそうと近づく。
「アスカただい……」
でも驚かす直前であたしはアスカが泣いていることに気づきさっきまでイタズラする気満々だったあたしの顔が一瞬で曇る。
「アスカ?」
声をかけてみるとアスカは泣きながら苦しげに呻き息を荒くしている。最近よく眠れていないとは聞いていたけどこういうことだったのね……
てっきりゲームのしすぎて寝不足だったのかと…
「うっ………うう…」
アスカは泣きながら胸元を抑えて苦しげに助けを求めている。
こんなアスカ見たくない。そう思った時にはあたしは着ていたジャケットをアスカにかけ抱きしめていた。
「アスカ大丈夫よ。大丈夫……」
「…あ…う…」
「怖くない…怖くないからね」
催眠術のように何度も話しかけ続けるときつそうだったアスカの顔が徐々に柔らかくなっていく。あたしが悪夢にうなされてた時よくこうやって加持にしてもらったっけか。
寝相が悪すぎてろくにしてもらえなかったけど。
「ミサ……ト……」
「全部1人で抱え込まなくていいのよ。あたしがいるからね……」
声をかけながら安心するように背中をさすると段々と安定した寝息が聞こえるようにあたしはほっとひと段落してソファーに腰かける。
いつもアスカを抱きしめると、とくんとくんとアスカの心臓の鼓動が聞こえてきて生きてると感じられる。
アスカの体あっかいなぁ……
やばい眠くなってきた……
でもその前にアスカをベッドに寝かせなくちゃ。
眠気を抑えベッドにアスカを寝かせ寝顔を見ながら安心できるように胸元を叩く。
このまま寝かせておけばもう大丈夫だろうと思いあたしはシャワーを浴びようと体を起こした時閉じられたアスカの瞼がひくひくと動きアスカが目を覚ます。
「……ぅ…」
「アスカ?」
「ミサト…」
あたしの顔を見た瞬間アスカはぎゅっとあたしに抱きつき離さない。あたしは何が起こったのか分からなくてあたふたとしながらどうしたのと聞く。
「どうしたの?なにかあった?」
「……た」
「ん?」
「……ミサトが、いなくなる夢見てた」
「え…あたし?」
こくんとアスカは頷くとぽつりぽつり悪夢の内容を説明して途中で泣いたりあたしから離れたくないのか服を握りしめる。
あたしが家を空けた日からずっと悪夢を見るようになりそのせいか眠れなくなってしまったという。理由は分からないけどその夢の最後であたしはアスカの目の前ですっと消えるのだとか。
「……ミサトがいない3日間ずっとこの夢ばかり見てた。だから……早く帰ってきて欲しかった」
「……」
「でも馬鹿よね。こんな夢見て弱音吐くなんて」
自虐的にアスカは呟くがあたしは全然馬鹿だとは思わない。むしろ頼ってくれるなら頼って欲しい。あたしは小さくうずくまる彼女の頭を撫でながらアスカに言った。
「甘えたいなら甘えてきてもいいのよ。あたしは全然迷惑でもないし」
「……そんなこと言ってない」
「でも、そうやってあたしを抱きしめているのはそばにいて欲しいってことでしょう?」
「…」
「遠慮なんてしなくていいの。ね?」
「……」
アスカは照れたのかあたしから背を向けて布団を被る。そんなアスカを見ながらあたしアスカをまた抱きしめるのだった。