ミサトはどんな時でもあたしを見ている。
あたしが寝ているときでも、どこかに旅行している時でも隣でじっとあたしを見ている。
顔を見て何が面白いのかわからないのに、ミサトは楽しそうな笑みを浮かべながらあたしを見るのだ。
視線を合わせると手を振ったりにこっと微笑んできてあたしは思わずドキッと顔を赤くしてすぐに目線をそらすけど、ミサトはそれでもあたしをじっと見ていた。
視線が気になってたまに何?と聞くとなんでもないわと言ってあたしを見る。あたし自身迷惑では無いけれど何も無いあたしの顔なんか見て何がいいのか分からなかった。
今日は近くの川辺で桜を見ながら古ぼけたベンチで花見をしている。花見をしたいと言い出したのはあたし。桜自体初めて見たし、それにどうせ花見をするならミサトがいいと思っていたから。
買ってきたお弁当を開けて箸を進めながら桜を見る。満開に咲いていて散る時はとっても綺麗。こんな景色をミサトは見てきたんだなと思うと日本にずっと住んできたミサト達がなんだか羨ましく感じてしまう。
お弁当を食べ終えて、デザートに甘い和菓子を食べているとふいに隣から視線を感じる。
隣を見るといつものごとくミサトがあたしを微笑みながら見ていた。
「ねぇ」
「ん?」
「……あたしの顔見て、楽しいの?」
ミサトに恐る恐る聞いてみるとミサトは幸せそうに笑いながら
「楽しいわよ」と答えてくれた。
ベンチに置いていた手にミサトの手が重ねられている。
もしかしたらミサトにとっての幸せはこんなふうにあたしの隣にいることかもしれない。
だとしたらあたしは、思っている以上にミサトに愛されているんだな。
そう思ったあたしはほのかに口元を緩めながら食べかけの和菓子を食べていった。
来年も再来年も、ミサトと花見が出来たらいいな。