「二人で協力して10回好きと言わないと出られない部屋…?」
目覚めてすぐに目に入ったのは「二人で協力して10回好きと言わないと出られない」と書かれた看板。それ以外この部屋には何もない。
ちょっと仮眠するだけだったのにいつのまにか寝てしまってて気づいたらミサトと一緒にこの部屋に投げ込まれていた。
ミサトがなんとかして出ようと銃やパンチで部屋を破壊しようと試みたがすべて失敗に終わっている。
「へ〜、ちゃんと相手の目を見て言わないとカウントされないのね」
「……」
(めんどくさ…)
「アスカ、今絶対めんどくさ〜って思ってるでしょ」
「当たり前でしょ!なんでわざわざ好きなんて言わなくちゃならないのよ!!」
そんなのヤってる時だけで十分だっつーーの!!という言葉は胸の中にしまう。
ただ寝てただけなのになんであたしがこんな面倒事に巻き込まれなければならないのだろう。
あたしの日頃の行いが悪いせいなのか?
そんなあたしを尻目にミサトはウキウキとした表情をしている。
「二人で協力するってことはさ、アスカも言わないといけないってことでしょ?楽しみ〜♡」
「…そうだけど、個人の回数まで指定されてないってことはあたしが1回言うのもありって事とよね?」
あたしの言葉でミサトの笑顔は凍りつき、なんとかあたしに言わせようと言い訳を言い出す。
「え、まあそうだけど…せめて5回ずつ言い合わない?こんな機会ないしさ。ね?」
「やだ」
「なんで?」
「恥ずかしいから」
ミサトはそれでも言わせたいのかぷくーっと頬を膨らませる。
「でもアスカから好きって言葉聞きたい!」
「ぜっったいやだ!!!!」
「ヤダって言っても私がやだ!」
「そんなこと言ってもあたしの気持ちは変わらないの!!!」
「じゃあじゃんけんしましょ!私が勝ったら5回言ってもらうわよ!」
「望むところよ!」
そうして公平にじゃんけんで決めた結果、
あたしが勝ち、あたしが1回ミサトが9回言うことになった。
ミサトは不服そうだけどあたしが勝ったんだから言うことは聞いてもらう。
「聞く方も目をそらしたりしたらやり直しだから目そらしちゃだめよ?」
「わ、わかってるわよ…」
やばい、なんか緊張してきた。
カチコチになりながら待っているとミサトはあたしの目をじっと見て口を開いた。
「私、アスカの事が好き。エヴァに乗って戦ってるアスカも好きだし、いつものアスカも好き」
あ、待ってこれ。聞く方も恥ずかしい…
「優しい所も好きだし、料理してるアスカも好きだし…ツンツンしてるアスカも好きだけど甘えるアスカも大好きよ」
思わず目をそらそうとするとミサトは追いかけるように私の視線を追ってくる。
恥ずかしいし逃げたい。
後ずさりすればミサトは距離を詰めてくる。
「顔もスタイルも好きだし…アスカの全部が大好きよアスカ」
逃げられないようにぐっと顔を掴んで満面の笑みで言葉を言うミサトにあたしは恥ずかしさが爆発してしまった。
「近い!!!」
離れろと言わんばかりにミサトに平手打ちを食らわせるとミサトはきゅ〜んと怯えた犬みたいに頬を抑えながらあたしを見る。
「私に沢山好きって言わせてそれはないわよアスカ…」
「普段こんなに言われることがないんだから仕方ないでしょ!!!!てか、アンタの言ってることほぼほぼセクハラよ!」
「正直に言っただけじゃない〜…」
「…」
叩かれた頬を抑えながら泣いてるミサトを見ているとちょっとやりすぎたかと反省する。
ホントは嬉しかったし、キスされるかもって期待したし…
「……色々と、言ってくれたけど」
なけなしの勇気を振り絞って近づくとあたしはミサトの目を見てこう言った。
「こ、こんなあたしでも好きだって言ってくれるミサトがあたしは大好きだから」
これでもあたしなりに頑張って言ってみたほうだ。とりあえずミサトの頬を冷やさないとと思っているとミサトはボッと顔を赤くしてニヤついてきた。
「え、なに?」
「1回だけなのにそれはずるいわよ…」
「?」
「なんか、負けちゃった気分…」
「なにそれ…」
「こっちの話」
照れながらアハハと笑うミサトにあたしは何がなんだかわからなかったけど、あたしは沢山言えばいいってものじゃない事を今回の事で学べた気がした。