4時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。
疲れが溜まった体をぐっと伸ばし弁当を持ってこっそりと教室を離れる。
お昼ということで教室の中は騒ぎ始めててあたしみたいなやつはいづらくなる。
人がいるのは嫌いじゃないけど、騒がしいのは好きじゃない。
こんなタチだからあたしには友達は1人もいないけど。
そんなあたしの唯一の居場所といえば屋上か図書室くらい。
でも図書室だとお弁当は食べられないから普段は立ち入り禁止の屋上で食べる。
人の目を気にしながら屋上へと続く階段を登り、そーっと扉を開ける。
自殺者を増やさないとか言っておいて扉には鍵すらかけていないから侵入するのは楽ちんだ。
屋上に出ると眩しいくらいの日光が差してくる。眩しさに目を細めながら音を立てないように扉を閉じると後ろから突然声が聞こえてきた。
「あら、式波さん」
振り返るとそこにはうちの担任のミサト先生が座っていて物珍しそうな顔であたしを見ていた。
「み、ミサト先生!?なんでここにいんの!?ここ立ち入り禁止じゃ…」
「それを生徒の貴方が言ったら意味ないかもしれないけど…」
「ぐっ…」
先生に痛いところを突かれてあたしは何も言えなくなる。
ミサト先生はにこりと微笑んだあとまあ座りなさいと隣にあたしを座らせた。
「式波さん、いつも教室にいないと思ったらここで食べてたなんてね〜。先生びっくりよ」
「…」
「いつもここで食べてるの?」
あたしの頭の中はバレたという事より、親にこのことを密告されることが怖くて先生の質問に何も答えられない。
「式波さん?どうかした?」
「…先生。…うち、父親が厳しいからこの事は言わないで」
ホントはこんなこと言っちゃ駄目だけど、親にだけはバレたくない。バレたら絶対にいつもより厳しく怒られる。
藁にも縋る思いで言うと先生はそんなことしないわよと笑って頭を撫でた。
「もしバレるのイヤだったら体育教官室で食べなさい。そこだったら大丈夫だから」
「…そしたら先生が変なことしてるって言われるんじゃないの?」
「時々なんだけど、暇つぶしにうちのクラスの女子が来ることあるのよ。他の先生たちもこの事はわかってるから安心しなさい」
「そう…」
そう言ってケラケラ笑うミサト先生を横目にあたしはママが用意してくれたお弁当を黙々と食べた。一人がいいって思ってたけど先生といて悪い気はしないのはなんでだろう。
この事がわかるのはあと少しの話。