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    wonkob

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    私はモブ職員が好き

    タイトル未定(ロマぐだ♀) 宴会が催されている食堂から出て、薄暗い廊下をひとり黙々と進む。今日までの疲れが押し寄せてきたのだろうか。ウルク熱からは完全に復活したものの、少し酒を飲んだだけでいつもより酔いが回ってしまった。
     今日をもって座に還るサーヴァントとは違い、私たちスタッフは明日の査問会からが本番といっても過言ではない。はやめに休ませてもらうと抜け出す私を咎める人は誰もいなかった。おそらくほかのスタッフたちも、頃合いを見計らってマイルームに帰るだろう。
     あと数日で、カルデアは新しい体制となる。マリスビリー・アニムスフィアの思い描いた理論はここで証明終了となる。新たな所長が就任し、最後に残されていたAチームの蘇生もはじまり、スタッフの大多数はこの雪山を下りて新たな地へ行くことになるのだ。
     人理保障なんて胡散臭い命題を掲げた組織に参入して十数年。アニムスフィアが懸念していたように人理の灯火が消えて一年。魔術王でも人類悪でもなく、ただの人間でしかない魔術師の手によって私たちはその歩みを止めることになるのだから呆気ないと思う。それどころか、文字通り死ぬ思いで人理修復を成し遂げたというのにありもしない嫌疑をかけられて、公式の立場としては裁きを待たなければならないのだから皮肉もいいところだ。生きている人間がいちばん怖い、なんてありふれた教訓が身に染みるようで愉快な気持ちにはなれない。
     いつものように吹雪いているであろう窓の外を見やる。日が沈み、真っ暗になった窓には景気の悪い顔をした私が映り込んでいる。
     私たちの無実を晴らすための証拠作りにおいて誰よりも頼りになるのはダ・ヴィンチさんとホームズさんに違いないが、それでもふと考えてしまう。ドクターがいてくれれば、と。彼がいてくれれば、少なくとも私たちの不安材料の二個はずいぶんと軽くなったはずなのだ。
     ドクターが個人的にも気にかけていたマシュ・キリエライトと、人類最後のマスターである藤丸立香のことを、こんなにも心配せずに済んだに違いない。
    「……こういう事後処理は、あなたの得意分野だったじゃない」
     これに関しては自分より上の階級だとか、かつて恋していた相手だとか関係ない。むしろ彼に恋をして、諦めたからこそ余計に思うのだ。私はいなくなってしまった男への何度目かの恨み節を言い放ち、また廊下を歩きはじめる。しかしその歩みはまたすぐに止まった。
     緩やかにカーブした廊下の先。大きな窓枠に腰をかけ、先ほどの私と同じように吹雪いているであろう外を無言で見上げる少女がいる。
    「藤丸さん?」
     彼女との距離はかなりあったが、とっさに私の口から出た彼女の名前は静かな廊下に思いのほか響いた。大げさなほど肩を跳ねさせた藤丸さんがこちらを向く。
     太陽を彷彿とさせる大きな瞳が私を捉える。私がさらに近づくと、彼女は窓枠から下りて穏やかに相好を崩した。その人当たりのいい笑顔はいつもと変わらないようだった。
    「ごめんなさい、驚かせてしまって」
    「いえ、わたしのほうこそ、ぼーっとしていたから過剰に反応してしまって。恥ずかしいなぁ」
     首筋を撫でる仕草をして、藤丸さんは所在なさげに大きな窓枠に寄りかかる。
    「パーティはもう終わったんですか?」
    「まだ続いてるわ。私は少し疲れてしまったから抜けてきたの」
     お疲れさまです、と藤丸さんは軽く首を傾けて苦笑に近いものを口元に浮かべた。王や酒豪が多くいる宴の騒がしさは、彼らのマスターである彼女のほうが私よりよほど知っているのだろう。
    「藤丸さんは疲れてない? 冥界に行って帰ってきたわけだし。パーティでもサーヴァントの方々に囲まれていたし」
    「そこそこ、って感じです。出てきた理由も、清姫や頼光さんとお別れの挨拶をしてたら、ちょっとふたりが止まらなくなっちゃって。落ち着くまで待機って言われたからなんです」
     藤丸さんに強い愛情を向けているふたりのバーサーカーの名に「あぁ……」とうっかり複雑な相づちが出てしまう。私を含めたスタッフの何人かが会場である食堂の隅でひそかに明日の作戦会議をしているのと並行して、おそらくそれなりに騒がしいひと悶着があったのだろう。その光景は想像するに容易だった。
     だが、スタッフの私たちでさえ思うところがたくさんあるのだ。ともに戦場を駆けたマスターの見送りをできないまま退去せざるを得ないサーヴァントたちの名残惜しさは、理解できるような気がした。
    「藤丸さんも、カルデアから退館するのよね」
     声のトーンに迷いながら紡いだ私の言葉は、どこか湿っぽい響きをしていた。藤丸さんはゆっくりと頷いた。
    「はい。この景色も見納めです」
    「……元の生活に帰るの?」
    「みなさんのおかげで。Aチームがあるから藤丸立香はお役御免!って言われましたし」
     藤丸さんの口調は明るく、未練などどこにもないみたいだ。
     それはいいことなのか、残念なことなのか。私にはよくわからないし、そもそもそれを考える権利は私にない。
     人理修復中、私は一度だけドクターに打ち明けたことがあるのだ。
    「ドクターは、人類最後のマスターが藤丸さんじゃなくて、キリシュタリア・ヴォーダイムだったら……彼じゃなくても、せめてAチームの誰かだったらって考えたことはありますか」
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    🍏🥝🍣現遂🍣🥝🍏

    PAST〈法庶04〉
    【ふたりハミング】
    いま見たら全年齢じゃなくて法庶だなと思った。
    あと、ほせ殿にサラッと高度な事?をさせてる気がする。
    通りすがりに一度聴いただけの曲、その場で覚えて、知らないその後の部分に即興で別パートメロディ作って一緒に歌うって……
    でも、この二人で歌ったら声とか意外と合いそうで妄想が楽しいです。
    徐庶が最初は法正の事が苦手だったって場面設定もあまりやってなかったかも
     「♪♩♬♩♫〜〜……」
     書庫の棚の前に立って資料整理をしていた徐庶は、何となく曲を口ずさんでいた。何日か前に街で耳にした演奏が印象的だったのか、メロディが自然と鼻歌になって出てしまう。沢山あった仕事が片付いてきて、気が抜けていたのかもしれない。
     ふと気配に気付いて横を見ると、いつからか通路側に法正が立っていて徐庶の方をじっと見ていた。外の光で若干逆光になった彼の姿に少したじろぐ。
     この人に鼻歌を歌ってる所なんか見られてしまうなんて……

     徐庶は法正のことが少し苦手だった。
     諸葛亮と彼の反りが合わず空気がギスギスした時は仲裁役になる場面もしばしば、用があって何言か言葉を交わしたこともある。しかしそれ以上はあまり関わりたくないと、苦手意識を持つ男だった。
    1964