忘れるなんてできねぇよな今日はバレンタイン。
あいつは案の定、他校の女子からチョコレートをもらっている。
直接渡す奴もいれば、あいつに渡せないとかで、カネダやダフに押し付けている奴もいた。
両手にチョコを抱えるタミヤを見ながら、カネダとダフは「さすが、タミヤ君…」「すごいね。やっぱりタミヤ君モテるよね!女子に興味ないのが、あれだけどね」と羨ましそうに話しかけている。
「うーん、ありがたいんだけど、こんなにもらってもな〜。タマコと一緒でも食べきれっかな〜」
ケッ!
あいつは人気があることを鼻にかける奴じゃないのはわかってても、少しイラッとしてしまう。
「あ、これ僕たちからも!」
そう言って、カネダは1つの箱を渡す。
「僕とカネダから!友チョコって奴だよ」
「男ではあるけど、タミヤ君にいつも助けてもらってるから渡したくて…」
恥ずかしそうにする2人だが、やっぱり不安なのかタミヤの顔をチラチラ伺っている。そりゃ、男から貰ったら幼馴染2人とはいえ流石のタミヤも引くだろ。
そう思っていたが、反応は想像とは違い
「ありがとう!まさか、お前らからもらえると思わなかったぜ!これはタマコにも内緒で食べるわ!」
嬉しそうに2人に礼をいい。他のチョコレートとは大事そうにカバンにしまっていた。
男3人で何やってんだ。イライラする。
なぜか、他校の女子どものチョコレートよりもあいつら2人のチョコレートが妬ましく、それを喜んで受け取ったあいつが憎らしくなってきた。
今日は光クラブは休みだとゼラに言われていたので予定は無い。アインツである俺は休みの日だってゼラのために働きたかったが、直接ゼラから「たまには休息も必要だ。だから今日は基地に来てはいけない。いいな?」と釘を刺されているのでいくわけにはいけない。そして何より、タミヤがもらったあの2人からのチョコレートが気になって仕方がなかった。
「ニコ、話ってなんだ?」
俺は放課後、相談があると言ってタミヤを空き教室に呼び出した。タミヤは教室に入ると今日もらったであろうチョコの入った紙袋と荷物を机に置いた。
「ニコが相談なんて珍しいな。何かあったのか?」
不思議そうに俺の方に向いて言う。
「あぁ、ちょっとな…。相変わらずたくさんもらったんだな」
俺は紙袋を見た。そうすると、タミヤは紙袋を手に取って「そうなんだよ。季節ってはやいよな〜。もらって気持ちは返せないのは申し訳ないけど、タマコと食べようかなって」といってこっちに紙袋を開いて、「ニコも食べるか?」って聞いてきた。
そう、お前はいい奴だよ。だからたくさんのやつから愛される。だが、おまえはそれを理解できてない。だからお前は気持ちを受け止めてはくれるが、お前から特別をくれることはない。ひどいやつじゃない分かるがの皮肉にも平等さが残酷なんだ。
その紙袋のチョコレートたちも愛された証拠だが大事には食べるが執着がない。そんなもの貰ったって仕方ない。だが、一つだけそうじゃないチョコレートがある。
「貰っていいのか?」
「おう、好きなの取れよ」
俺は開かれた紙袋ではなく、タミヤの鞄の方に手をかけ、目当てのものを探す。予想外のことにタミヤは、唖然とし、そうしてる間に俺はアレをカバンから出した。タミヤも我にかえり慌てて俺を止めにきた。
「おい!ニコ!俺のカバンじゃなくて…「これくれよ」」
俺が選んだのは、お前の親友たち(ダフとカネダ)のチョコだ。タミヤは慌てた様子で「それはダメだ!こっちの紙袋の方ならいいから」と渡してくれと手を伸ばしてくる。やっぱり、このチョコは紙袋のものとは異なることはたしかだ。
伸ばされた手を掴み強く引っ張り、よろけたタミヤを壁に叩きつけた。壁にぶつかった衝撃で痛がるタミヤをよそに俺はラッピングをとり、チョコを出した。
「おい!ニコそれ返せよ!それはダフた…っ!?」
言いかけたところに俺はそのチョコをタミヤの口に咥えさせ、反対側から食べていく。
タミヤの唇にぶつかりそうになったところで、タミヤの口から残りのチョコをとり、口に入れた。
タミヤの顔を見ると真っ赤な顔をして、何か言いたそうに口をぱくぱくさせていた。
そんなタミヤを見て謎に優越感が芽生え、さっきまであったイライラが消えていった。
「チョコうまかったぜ、大好きなダフたちに味の感想言ってやれよ」
そうタミヤに行って俺は教室を後にした。