君が寂しがるから1人が寂しいとかそういうのじゃない。
キスしたいとか、その先もしたいとかそういう恋のような気持ちじゃない。
ただ、ひとりにしないで欲しい。
人より少し鈍臭くて、臆病でその癖少しでも強く出てもいいとわかると調子に乗ってあとで痛い目を見る。
そんなカネダを僕は14年間ずっと一緒にいる。
もう1人の幼馴染が兄のように引っ張ってくれる存在だとすれば、カネダはそれとは逆に鈍臭さゆえに目を離せない、一緒にいてあげないとなと思う弟のような幼馴染だった。
生まれた時からずっと一緒で、お互いこの2人のことを何でも知っていてそれでいて自分たちの関係に他の子達が入ってくることも、負けることはないと思っている。
だから、こんなことで拗ねることなんて今までなかった。タミヤくんがニコに構いだし、自分以上に嫉妬しているカネダを見てどこか気持ちは落ち着いていた。
それなのに数日経った休み時間、カネダに声をかけようとするとカネダは別の誰かと話していて笑っていた。僕の知らない子。その時はまぁいいやと声をかけるのをやめた。それから、登下校以外はカネダとその子がよく話している場面を見る。話の話題にも必ず名前が上がってきてどこか辛かった。
「それで、その時…」
「その子の話ばっかりだね。カネダ」
思わず出てしまった言葉に、カネダは驚いたようにこちらを見る。それから続けて黒いモヤを僕は吐き出す。
「じゃぁ、その子と話に行けばいいじゃん」
そんなにその子の話ばっかりするなら、そっちに行けばいいじゃん。カネダがえっ!っとこちらを見る。
「どうして?僕、ダフに話したいから話してるんだよ…どうかしたの?」
自分だってわかっている。
カネダの話にその子は何回も出てくるわけではない。
きっとタミヤくんなら、こんなこと言わないだろう。
今度俺も話してみたいなとか言うんだろうなと思う。
それなのに僕は過敏に反応して、カネダに八つ当たりしてしまっている。これではいつもと逆だ。
視界の中のカネダがぼやける。
「ダフ、本当にどうしたの?!具合が悪いの?」
泣いている僕をみて慌てて、僕の額に手を当てたりオロオロするカネダ。
本当は、その子にカネダを取られたようで寂しかった。タミヤくんの時だって本当は僕もニコばっか構っているようで恨めしかった。でもその時は、僕以上にカネダが拗ねてたから耐えれた。でも、今は代わりに拗ねてくれる人はいない。
慌てるカネダを見て「もうちょっと落ち着きなよ」とどこか落ち着いて思う反面、僕の知らないあの子の話がどこかへいって、僕のことを考えてあたふたするカネダにどこか安心を覚える。
「大丈夫だから、そんな慌てないでよ」
僕のためにあたふたするカネダに、今更取り繕える状態ではないのに何でもないような顔をしていつもと同じように話すんだ。