下手な嘘 鬼にした者たちの思考を読み取れることは、便利だが不愉快なことも多い。
目の前で媚び諂っている慇懃無礼な雑魚の内心は恐怖、憎悪、野心、どす黒いものに満ち溢れ、同じ空気を吸うのも不愉快なので、気に入らない鬼は即刻処分した。
そんな配下の中で、唯一、自分に必要以上の恐れを持たず、敬意を持って接してくれる男がいた。
元鬼狩りの黒死牟だ。
主の首を持って、こちらに寝返った男だ。いつ寝首を掻かれるか解らない、信用ならない男だと警戒していたが、この男の胸の内は口に出して言う言葉とほぼ同じであった。
「私が恐ろしくはないのか?」
「その強さには……畏敬の念を抱いております……」
それは世辞などではなく、本心のようだ。
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