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    8myamya7

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    自本丸 姥さに

    微睡みさらさらと、布の擦れるような音が聞こえた気がしてまだ重たい目をそうっと開けば、先に起きていたらしい国広が身支度を整えている姿が目に入った。
    大きな手が小さなYシャツのボタンをゆっくりと留めていく様をぼうっと眺めながら、まだ上手く働いていない頭で今日の予定を思い出す。
    急ぎの仕事は無いし出陣も今日は予定に入れていなかったはず、あるのは遠征と買い出しくらいだろうか、もう少し寝ていたい気もするけどどうしようかな。……と、そんなことを考えているうちにすべてのボタンを留め終えた国広がネクタイを手に取るのが見えた。
    いつもの青いネクタイを、丁寧に結んでいく姿を目に焼き付けるようにじぃっと見つめていれば、私の視線に気が付いたのかぴたりと手を止めて国広がこちらを振り返った。

    「主」
    「おはよ」
    「ああ、おはよう」
    「……支度、続けて良いよ?」
    「ん?ああ、そうだな」

    止めていた手を動かしてネクタイを結び、部屋に置いてある鏡を見ているのか少し調整をしてから淡い水色のベストを身に纏い、身支度を整え終えた国広が改めてこちらに向き直る。
    私から部屋に差し込んでくる陽の光を除けるように顔をのぞき込んでくる国広に、ふにゃりと己の頬が緩むのが分かった。

    「体は平気か」
    「うん、大丈夫、だけどねむいなあ」
    「もう少し眠ると良い、朝餉には起こしてやる」
    「んん、そうしようかな」
    「ああ、おやすみ」
    「くに」
    「なんだ」
    「ちょっとだけ、このまま」
    「分かった」

    眠っている間に乱れてしまっていたのであろう髪を少し整えるように指先で梳いてくれる感覚が心地良くて、とろとろと瞼が落ちてきてしまう。
    今更、隣に体温がないことが少しだけ寂しく感じてしまって、私が再び眠りに落ちるまでで良いからと布団からそっと出した手で床についている方の国広の手を握れば、ゆっくりと握り返してくれた。
    たったそれだけのことが嬉しくて、愛おしくて。

    ふわふわと心地良いあたたかさに包まれてぼやけていく思考の中で、今日の朝餉は何かなとか、国広が当番だから私の好きな玉子焼きがあるかなとか、そんなことを考えているうちにことりと夢の中へと落ちていった。
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