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    かみすき

    @kamisuki0_0

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    かみすき

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    綾人蛍
    言わせたい台詞までの前置きが長い

    #綾人蛍
    ayatolumi
    ##綾人蛍

    《綾人蛍》今日のおでかけやめませんか 甘い小麦の香りに、じゅわっとしみたバター。最高の焼き加減に仕上がったさくふわのトーストを齧る。誰も見ちゃいないけれど、気取った表情も忘れずに。
     そんな些細なおめかしに気を遣いながら、ミルクが溶けた柔らかい色の紅茶を一口啜れば、優雅な朝食の完成だ。
     デートの日の朝は、少しだけ背伸びをする。少しでも、綾人に相応しい、お淑やかな大人の女性になれるように。
     そうしておすまし顔の蛍は、その一方で頭の中はぐるぐると悩んでいた。
     今日の服、どうしよう。今日のために新しく買ったワンピースか、綾人が褒めてくれたお気に入りのスカートか。背伸びしてお姉さんらしいワンピースを着たい気持ちもあるけれど、これは綾人の好みだろうか。やっぱり綾人に可愛いと思ってもらえる服がいい。
     昨晩から答えの出ないその選択。考え過ぎて眠れなくなってしまいそうだったから、そのときの気分に任せようと諦めたのだけれど、結局今日の蛍もまだ決めきれないでいた。
     幸い、約束まではまだ時間がある。めいっぱい悩み抜いて、最高に可愛い蛍で会いに行こう。

    「おはようございます」
    「おはよう綾人さん。……え、綾人さん!?」
    「はい」

     はい、じゃなくて。
     いきなり洞天を訪れた綾人が、それが当然であるかのように向かいに腰掛ける。かけられた言葉に流れるように挨拶したけれど、いつの間に。玄関を開けた音すら気づかなかった。
     ぽっかり開いた蛍の口の、端についたままのパンくずを拭い取ってにっこりと眩しい笑顔を見せた。

    「迎えに行くからのんびり寝ててねって約束したのに!」
    「来ちゃった、っていうの、一度やってみたかったんです」

     朝一番に綾人の顔を見られるのは蛍だってとても嬉しいのだけど。たくさん仕事を抱えていることも、今日の時間を捻り出すためにほんの少しだけ無理をしていることも知っている。
     だから少しでもゆっくりしてもらおうと考えてお迎えを提案したのに。きちんと休んだのかと問い質したいところだ。

    「すみません、朝食の邪魔でしたか」
    「ううん、それはいいんだけど」

     そしてなにより、着慣れてくたびれた部屋着に、寝癖もそのままの頭。ぴっちり整った綾人との違いにいたたまれなさでいっぱいになる。おめかしして会いに行くつもりだったはずが。
     とはいえ、早く貴方に会いたくて、と囁かれてしまうだけでもうそんな気持ちはどうでもいい事のように思えてくる。
     だって、あの綾人が、欲のままに行動を起こしてくれるなんて。そうさせているのが蛍だと実感してしまえば、強く言えるはずもないでしょう。
     だらしなく緩みそうになる頬にトーストを詰め込んでみたけれど、蛍の瞬きすら見逃さないとばかりにじっとり見つめている綾人にはきっとばればれだ。
     あまり見られるとやりづらいのだけど、それも本気で嫌がっているわけではないことが知られている以上、やめてくれなんて意見が聞き入れられるはずもない。そろそろ全身穴だらけになりそう。
     そうして皿を片付けるところまでもばっちり見守った綾人は、今度は身支度をする蛍の後ろをついて回る。その視線に少しだけ緊張しながら少しずつデートのための蛍を作り上げていけば、ついに逃れられない悩みに向き合うこととなった。
     ソファの背もたれに並べたままだった服。持ち上げればそれぞれの裾がふわりと揺れた。やっぱりどちらも可愛くて困っちゃう。

    「ねえ綾人さん。これ、今日の服、どっちが可愛いかな?」
    「ふむ……真ん中、ですね」
    「真ん中? もう、からかわないで」
    「からかってなどいませんよ。真ん中が一番可愛いでしょう」

     蛍が拗ねる様子すらお楽しみの一部にしかならないらしい。ひとり愉快そうに目を細める綾人に質問を繰り返したところで、返ってくるのは当然また同じ内容。
     二択なのに、どれ、真ん中って。すぐふざけたこと言うんだから、真剣な相談なのに。
     何倍にも膨れる蛍の頬に、くつくつ笑う綾人の手が近づく。あまりにもかすかな刺激は、指先か、震えた空気か、区別もつかないくらいだったけれど。

    「真ん中ですよ、ほら、真ん中」
    「え、あ……。か……か、らかわないで……」

     その動きに導かれた意識が綾人の意図を拾い上げる。ぱちりとぶつかった視線が、じわじわとその温度を伝えてきた。
     左のワンピースと、右のスカートに挟まれた、真ん中に立つ蛍。
     真ん中が、一番って。
     不意打ちにぶつけられた可愛い、の音に、受け止めきれなかった全身がむずむず痒くなる。火が出そうなくらい熱い顔を、握りしめた洋服で覆い隠した。ふしゅうと一瞬で萎んだ頬は、たぶん、これ以上ないくらい真っ赤に染まっているだろう。

    「せっかくのお洋服が皺になりますよ」
    「綾人さんのせいだもん……」
    「おや、心外です」

     真っ暗な視界でひとり震える蛍を包み込んだ綾人が、追い打ちをかけるように本当に可愛いですねと重ねる。
     やだやだ、いつもはそんなことないのに、なんで今日はこんなに照れ照れになっちゃうんだろう。こんな調子でデートなんかしたらどきどきしすぎてだめになっちゃうよ。
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