二度目の愛を貴方に捧げる息が弾む。金糸の髪が激しく揺れる。
黒いシャツに、濃紺のズボン。シンプルな服装。しかしあまりに端正な横顔に皆が振り向くけれど、当の本人は脇目も振らず走っていく。
目的地の扉が見えた。青年は一旦立ち止まる。扉の横、通信機のランプは緑なので、オートロックはかかっていない。全くまたか…。彼らしいと言えばそうだが、相変わらず危機意識に欠ける人に、頭を抱えたくなる。
が、今はそうじゃない!それは後で良い。
青年は先ほどの駆けてきた勢いのまま、開扉ボタンを
押した。待ちきれず、扉が開き切る前に身体を押し入れ。
「兄さん!」
ドンッと足を踏み込み、道場破りでもするかの如く呼んだ。あまりある勢いに、普通なら驚くところ、呼ばれた当事者は、部屋の奥、静かに背を向け佇んだままだ。その手には本があり、視線は落とされたまま。
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