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    ヤマダカナ

    🎤独二 🏐及影 卍とらふゆ

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    ヤマダカナ

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    8/22夏インテにて頒布予定だった独二夏の短編集(コピ本)より
    その2!

    #独二
    onlyTwo
    #どじろ
    plotOfLand
    #ヒ腐マイ
    hypmic bl

    【独二】線香花火が終わる前に 見て、買ってきた。
     そう言って差し出されたのはどこか懐かしさの残る線香花火だった。
     花火セットの中には必ずと言っていいほど入っていて、どちらかというと最後まで残る、いわゆる不人気なのが線香花火だ。
     勢いよく火花が噴き出すタイプの手持ち花火とは違って、控えめにパチパチと火花が飛び散る線香花火は花火の締めに「先に落とした方が負け」などと罰ゲーム要素を加えて消費したりしていた。
    「線香花火だけ買ってきたのか?」
    「だってベランダで爆竹やったら怒るだろ」
    「怒るというか普通に通報されるだろうけど」
    「だから線香花火。これならいいだろ?」
     にっこり笑ったあとに、ベランダに置いてあったバケツに水を入れてテキパキと準備を始め、一二三が育てているプチトマトなどを安全な場所へ避難させた。

     俺には恋人がいない。
     じゃあ今、目の前で嬉しそうに花火の準備をしているのは誰なのかと問われれば、すぐに答えは出てこない。
     ただ、俺に恋人はいないけれど、好きな人ならいる。これで何となく察してもらえるだろうか。
    「独歩、ライターある?」
    「部屋にあったと思うから探してくるよ」
     ベランダの掃き出し窓からひょこっと顔を出した彼は俺の背中に「早くしろよ」と付け加えた。
     決して綺麗な状態とは言えない俺の部屋だが、ライターは意外とすぐに見つかった。日常的に煙草を吸うわけではないけれど、たまにストレスで死にそうになっているときに吸ったりする。本当にたまに、だ。むせることもあるし、それに腹が立って逆効果になることもあるけれど、やっぱり気付けば煙草を手にしているときがあったりする。
    「あったぞ、ライター」
     リビングに戻って見つけたライターを振ると、またもやひょこっと顔を出した彼が嬉しそうに笑って手招きをする。
    「火の玉がベランダに落ちたらやべぇからバケツの上でやろうな。はいこれ、独歩の分」
    「……線香花火って一回やれば満足しそうだけど、何本あるんだこれ」
    「仕方ねぇだろ、単体だったらこれしか売ってなかったんだよ。ほら独歩、ライター点けて」
     急かされ、ライターでカチッと火を点けた。そして二本の線香花火の先端に小さな火の玉が灯る。
    「先に落とした方が罰ゲームな」
    「はは、若い子もやっぱり線香花火の遊び方はそうなのか」
    「逆に他にどんな遊び方があるんだよ」
    「いや、ほら、風情を楽しんだり?」
     俺自身も線香花火に罰ゲーム要素を加えた遊び方しかしたことがなかったのでそれ以上は何も言うことができなかった。
     二つの火の玉は徐々に膨らんでいって、激しく火花が飛び散る。水を張ったバケツの上でやっているので、その火花が水面に反射してとても綺麗だ。
    「すげぇ」
     目を輝かせながらその火花を見ている彼を、そっと盗み見る。こんな俺と一緒に居ても、彼はいつだって笑顔だった。出掛けることが億劫でも、そんな俺の手を引いて新しい世界へと連れ出してくれる。
    「そういえば罰ゲームってなんだ?」
    「うーん、なんでもいいけど。じゃあ秘密を暴露!」
     手元の火花は落ち着いてきていて、終わりが近付いてきているのだと分かった。
     線香花火には火が点いてから終わるまでに何段階かあるらしく、それぞれに粋な名前が付いているらしい。もちろん、線香花火に風情を感じたことのない俺は、その名前を覚えてはいなかった。
     俺が負ければ秘密を暴露することになる。それは、君が好きだと伝える良い口実になるだろう。だけど、俺にとっての線香花火は締めくくりのゲームで、決して想いを伝えるためのものではない。
     だからこれは俺自身の意志で、俺の言葉で、君に伝えなくてはいけないと思う。

    「あのな、俺は、」

     だから、その言葉は線香花火が終わる前に。
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    ヤマダカナ

    DONE2021.10.23
    独二Webオンリーの展示用です。
    独二の日を記念して掲載します!

    ※モブも出るよ
    ※深海戦隊シンカイジャーについては「星屑セブンデイズ」をご覧下さい。ピクシブにてWEB再録しています。
    ※田中と鈴木については二人が出てくるお話をポイピクへ載せていますので気になった方はぜひ
    ※男同士が普通に結婚できる世界線
    【独二】独歩と二郎とその周りの人たちのお話 第一章 二郎と独歩が付き合っていることを知ってしまった三郎の話 二郎は顔に出やすい。
     昔からそうだった。遊んでいて施設の窓ガラスを割ったときも、お気に入りの傘を振り回して壊したときも、テストで悪い点数を取ったときも。いや、最後のは顔を見なくてもいつも悪い点数なのでやっぱりナシ。
     そんな感じで顔を見ればどんなことを考えているのか、何が言いたいのかだいたいは想像が付くような分かりやすい兄だが、この顔だけは正直見たくなかったし知りたくもなかった。
    「何だよ、三郎」
    「……何でもない馬鹿」
    「はぁ? バカって言う方がバカなんだぞ、バ~カ!」
    「馬鹿はお前だ」
     可愛くねぇな、と口を尖らせながら再び視線をスマホに戻す。もちろん画面は対角線上に座っている僕からは見えないけれど容易に想像ができた。
    7785

    ヤマダカナ

    DONE8/22夏インテにて頒布予定だった独二夏の短編集(コピ本)より
    繋がっていない短編集で、関係性は徐々に近くなる予定でした。
    全6本の短編中、4本だけ書き終わっていましたのでアップいたします。
    楽しんでいただけると嬉しいです。
    途中で終わってしまいごめんなさい。
    【独二】ぜんぶ夏のせいにして 蝉の鳴き声がいつからか生活音の一部になり、気にもならなくなったころ。拭っても拭っても湧き水のように溢れ出る汗をハンカチに吸い込ませてゆく。
     営業成績が特別良いわけでもなく、かと言って全然ダメというわけでもないと自負している平凡な営業社員に営業車など与えてもらえるはずもなく、こうして汗を流しながら外回りをしている。
    「……少し休んでも良いんだぞ」
     嫌になるほど照りつけてくる太陽に向かって何となく呟いてみるけれど、こんなちっぽけな声が届くはずもなく、肌をじりじりと焦がす。
     次のアポまで少し時間があったので耐えきれずコンビニに駆け込むとアイスコーナーの前で見覚えのある後ろ姿を見つけた。
     暑くて一刻も早く冷たいものを摂取したかった俺は、知り合いに構っている余裕などなかったので、気付かないふりをしてアイスコーナーの一番端にあった良心的な価格のソーダのアイスを手に取った。
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    ヤマダカナ

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    ※深海戦隊シンカイジャーについては「星屑セブンデイズ」をご覧下さい。ピクシブにてWEB再録しています。
    ※田中と鈴木については二人が出てくるお話をポイピクへ載せていますので気になった方はぜひ
    ※男同士が普通に結婚できる世界線
    【独二】独歩と二郎とその周りの人たちのお話 第一章 二郎と独歩が付き合っていることを知ってしまった三郎の話 二郎は顔に出やすい。
     昔からそうだった。遊んでいて施設の窓ガラスを割ったときも、お気に入りの傘を振り回して壊したときも、テストで悪い点数を取ったときも。いや、最後のは顔を見なくてもいつも悪い点数なのでやっぱりナシ。
     そんな感じで顔を見ればどんなことを考えているのか、何が言いたいのかだいたいは想像が付くような分かりやすい兄だが、この顔だけは正直見たくなかったし知りたくもなかった。
    「何だよ、三郎」
    「……何でもない馬鹿」
    「はぁ? バカって言う方がバカなんだぞ、バ~カ!」
    「馬鹿はお前だ」
     可愛くねぇな、と口を尖らせながら再び視線をスマホに戻す。もちろん画面は対角線上に座っている僕からは見えないけれど容易に想像ができた。
    7785

    ヤマダカナ

    DONE8/22夏インテにて頒布予定だった独二夏の短編集(コピ本)より
    繋がっていない短編集で、関係性は徐々に近くなる予定でした。
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    楽しんでいただけると嬉しいです。
    途中で終わってしまいごめんなさい。
    【独二】ぜんぶ夏のせいにして 蝉の鳴き声がいつからか生活音の一部になり、気にもならなくなったころ。拭っても拭っても湧き水のように溢れ出る汗をハンカチに吸い込ませてゆく。
     営業成績が特別良いわけでもなく、かと言って全然ダメというわけでもないと自負している平凡な営業社員に営業車など与えてもらえるはずもなく、こうして汗を流しながら外回りをしている。
    「……少し休んでも良いんだぞ」
     嫌になるほど照りつけてくる太陽に向かって何となく呟いてみるけれど、こんなちっぽけな声が届くはずもなく、肌をじりじりと焦がす。
     次のアポまで少し時間があったので耐えきれずコンビニに駆け込むとアイスコーナーの前で見覚えのある後ろ姿を見つけた。
     暑くて一刻も早く冷たいものを摂取したかった俺は、知り合いに構っている余裕などなかったので、気付かないふりをしてアイスコーナーの一番端にあった良心的な価格のソーダのアイスを手に取った。
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