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    michiru_wr110

    @michiru_wr110

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    michiru_wr110

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    brmy
    真央衣都
    いつもと違うテイストの服が欲しい衣都に、とある服を勧める真央さん。

    「……で。衣都としては、好みに合いそう?」

    #真央衣都
    #brmy男女CP

    渇望に触れるすべ(まおいと) さて、どうすべきか。開け放って間もない試着室のカーテンの端を、きゅっと握り締め、それから振り返って鏡の中の私を凝視する。

     ゴールドのボタンがあしらわれた五分袖のジャケットと、すとんと落ちたシルエットのテーパードパンツ。紺色のセットアップは、夏のオフィスカジュアルにも、ちょっとしたドレスアップの装いにも応用できそうで魅力的な選択肢の一つだ。Vネックが理想よりも若干開いているのが気になるけれど、手持ちのインナーと併せてカバーできるレベルでもある。
    (悪くはない。むしろいつもなら、色々迷いながらも購入していたと思う)
     再び振り返り、試着室の中からちらりと店内を見やる。開放的な雰囲気を纏ったセレクトショップは若干入り組んだ作りで、ディスプレイエリアとは若干距離がある。オフの日に合わせて連れてきてくれた真央さんの姿は見当たらないので、おそらく自分用の服を見て回っている最中なのだろう。
    (できれば真央さんの意見も欲しい。けれど)
     再び鏡の中の私を見つめて、思案する。
     わざわざ試着室を出て、呼びつけられるほどの度胸は持ち合わせていない。
     服に関する自分のセンスは人並みと信じてはいるけれど、一人での買い物は無難なチョイスしかできない自覚もある。かといって透吾くんに意見を求めようとすれば、色々な意味で収拾がつかなくなる展開も目に見えていて。
     だからこそ、ここの存在を教えてくれた真央さんに声をかけたのだ。
     友達代行の一環で訪れたショップのセンスが良かったと絶賛していたから、直接お店を見てみたいのだ、と。
     あわよくば、プライベート用に目ぼしい服があれば。

     着心地を確認している風を装っているけれど、突っ立っていても埒は明かない。下手をすると店員さんにも気を遣わせてしまうことになるだろう。
    (……もう、これに決めよう)
     結論付けた私は再び振り返り、カーテンの端に手をかける。

    「ああ、悪くないね。そういうのも」

     死角からひょっこりと真央さんが顔を出したのは、その瞬間だった。
    「真央さん」
     間一髪、だった。びっくりした。ものすごく。
     動揺を抑え込むように真顔になった私に気づいているのか否か、真央さんは柔らかな眼差しでつぶさにコーディネートを確認している。俄かに早まる心拍数。いや、我ながら驚きの度合いが大げさすぎはしないか。
    「……で。衣都としては、好みに合いそう?」
     こちらの葛藤をよそに、真央さんは軽い調子で声をかけてくれた。
    「そうですね……今日は、プライベート寄りのものをと考えていたので」
    「そっか。じゃあ、こういうのはどうかな」
     真央さんが差し出したのは、女性もののワンピースだった。
    「……これは」
    「いつもとは違う雰囲気の私服が欲しくて僕を呼んだ。違う?」
     だから、似合いそうな服を探してみたのだ、と。
     察しが良いとは薄々感じていたけれど、まさかそんなところまで見抜かれていたとは思ってもみなかった。
     てっきり、真央さんはご自身の服を見ているものとばかり思っていたのに。この様子だと真央さんは、はじめから私の私服選びに協力する心づもりで連れてきてくれたに違いない。そう考えると気恥ずかしくて、穴があったら奥底まで潜り込んでいただろう。
    「ええと……おっしゃる、とおりで」
     こうして驚きが畳みかけるように連続していく中、真央さんはさらに、とどめとばかりに問いかけたのだ。

    「少しだけど、肌見せには抵抗ある?」
     
     * * *
     
    「うん。やっぱり似合う」

     試着を経て即決した後の展開は目まぐるしかった。
     店員さんを呼んでワンピースを着たままタグを切ってもらい、お会計を済ませてから私の手提げのバッグを回収し。着用していた元の服を収めたショップバッグを店員さんから受け取り。お見送りの店員さんに背を向けた真央さんはスマートに、私の腰を抱いて颯爽と店を後にした。
    (腰が……スースーする……)
     そわそわとして落ち着かないのは、何も私が手持ち無沙汰になってしまったからだけではない。
     選んでくださった深いカーキ色のワンピースは、背後に控えめながら切れ目が入っている。背中の下部からウエストにかけた肌見せは想像よりも上品な印象で、鏡で確認した時は思わず目を見開いてしまった。大人としての気品を纏い、背筋が伸びるような感覚はこれまでに抱いたことのないものだった。
     そして、先ほどからエスコートを続ける真央さんは。私の素肌に直接触れない絶妙な位置へと腕を回し、導いている。
    「ま、真央さん」
    「お腹空かない? 前に話していたパスタの店、近くだから寄っていこう」
    「あ……はい。そうですね」
     ありがとうござます。と告げた言葉に真央さんは目を細め、再び私の歩調に合わせて歩み始めた。

     客観的に見ればデート以外の何物でもない所業。一連の言動にはまだ、真央さんなりの意図が隠れているように思えてならなかったけれど。

     重なった身体越しでは真意を確かめるすべがないので、深入りはせず身を任せることにした。
     それもまた、歯がゆくもどこか収まりの良い、不思議な心地だった。
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    michiru_wr110

    DONEbrmy
    戦衣都 カフェまち2展示作品(開催おめでとうございます!)

    お付き合い成立後、新開の部屋で過ごす休日の一コマ。
    ⚠ロックカフェバーイベ・スト微バレあり
    ⚠新刊【騒がしき揺籃歌】と同じ世界線・本作のみでもお楽しみいただけます

    * * *

    一瞬だけ目を瞬かせると、なんだか困ったように頬を掻く。
    「……あんまり可愛いこと言ってっと、調子に乗るぞ」
    揺籃歌にはまだ遠い(そよいと)【鍵は開いているから。勝手に入ってくれ】

     LIMEに送られた最新の通知。スマホの画面を時折見つめては、そわそわする自身の想いを再確認する。
     こうしたやりとりをするなんて、何だか恋人みたいだ、と。

     ――いや。実際に新開さんとは、お付き合いをする仲ではあるのだけれど。

     互いに休みの合ったとある平日の昼下がり。
     どうしても必要だった最低限の買い出しを済ませた私は、自室に荷物を置くや否や、足早に寮の階段を駆け上がった。程なくして到着した二〇一号室の扉をノックしてから静かに開けると、食欲をそそる香ばしい匂いが漂う。焦がし醤油のような風味だから……
    (今日は炒飯か何かかな?)
     気を利かせて作ってくれたであろう昼食のメニューに当たりを付けつつ、私は驚かせないよう慎重にキッチンへ足を踏み入れた。
    1610

    michiru_wr110

    DONEbrmy
    戦衣都(+🌹&🧹)
    お付き合い済の戦衣都、主に⚔の破壊力が凄まじそうだ……と妄想した結果

    * * *

    新開さんはどこぞの王子様よろしく、ダンスにでも誘うのかと問いたくなるほど恭しく丁寧に手を取り、かれこれ数分が経っている。
    (私は一体、ドウスレバ……)
    お前のこと、全部に決まってんだろ(そよいと) この状況は彼の、あるいはその周囲の策略だったのかもしれない。

    「綺麗なもんだな」

     至近距離には今、新開さんがいる。私の手を取って、指先を矯めつ眇めつ、眺めている。

     新開さんが釘付けになっている青色のポリッシュは、水の泡を彷彿とさせる爽やかな水色から呑み込まれそうな深海色のグラデーション。小さなパールが光をはじき、親指と薬指には、真っ白な線画で漂うクラゲのイラスト。それらは指先に閉じ込められた水族館を彷彿とさせる素敵な仕上がりではあるけれど――

    (ミカさんへのお土産だったはずなのに、ここまでは聞いてない……)
     水族館のお土産コーナーにさりげなく陳列されていたのが、海の生物たちを模したネイルシール。これは、と思いミカさんや真央さん用に確保して手渡したのが一昨日。複数のポリッシュと渡したはずのシールを携え「その御御御手を拝借するわよ」と休憩室へ連れ込まれ、見事な手際で装飾を施してくださったのが昨夜の仕事終わり。
    1181

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    michiru_wr110

    DONEbrmy
    戦衣都

    味のある大根について
    辛さが喉元通り過ぎれば(そよいと) 七……八…………。
     バーベルを持ち上げる腕が、回数を追うごとに重たくなってくる。
    (オーソドックスなのは煮物かおでんだろうか)
     九…………。
     視界の端にトレーナー、もとい新開さんの姿を認める。余計なことを考えてしまうのは、目の前にのしかかる負荷からの逃避なのだろうか。
    (けれど、この時期ならもっと、さっぱりしたものが食べたい。となると)
     …………十。
    (さっぱり…………大根サラダ?)


    「よし、休憩」
    「ふう……」
     取り敢えずの結論が出たと同時にカウントが終わり、十キロのバーベルを所定の位置に戻す。仰向けの体勢のまま私は、天井の壁の無機質な模様の一点をぼんやりとみつめていた。
     当初は五キロほどで息も絶え絶えだった私が、今は倍の重量をそれらしく動かせる程度には進歩している。とはいえまだまだ初心者の域を出ない重量に違いはないし、まだまだトレーナーもとい新開さんのサポートは必須だけれど。いつものジム内、ほぼ貸し切り状態で行われるトレーニングは定期的に続けている甲斐あって、微々たる成長とともに「ある」寄りの体力に近づきつつある。
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    tang_brmy

    PAST⚠️パソスト公開前に書いたので公式の設定と齟齬があります

    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25044306 の続きのふたりのおはなしというか、起承転結の起に当たるはなし。
    なので、衣都ちゃんが出て来ない吏衣都です。出て来るのは吏来さんとミカさんだけ。
    「その日」に思いを巡らす吏来さんを捏造しました。
    on that day「あら、吏来。いらっしゃい」
    「お疲れ」
     勝手知ったる何とやら。ジム帰りにAporiaに寄った吏来は、案内されるより先にカウンターの隅の席に腰を下ろす。
    「いつもの?」
    「うん、お願い」
     おしぼりを手渡しながらオーダーを確認したミカが、何かにあてられたように目を細めた。
    「機嫌がよさそうね」
    「わかる?」
    「それはもう。詳しく教えて……と言いたいところだけど、聞くまでもなくお嬢のことなんでしょ」
     首を横に振って肩をすくめるミカに、吏来は口の端を上げて答えとする。
    (お嬢のこと貰う約束した――とは、流石に言えないよな)
     たとえ親友と言えど、衣都を良く知る相手に詳しい話をするつもりはない。ただ、彼女とうまく行っているのが伝わればいいと、曖昧に濁す。ミカもその辺りの機微には聡いので、それ以上は何も聞かずに笑って、吏来の酒を作り始めた。
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