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    michiru_wr110

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    michiru_wr110

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    brmy
    戦衣都(学パロ)
    20250809~0811 Aグレッド2展示作品

    こちらの学パロ続編(それぞれ単体でも読めます)
    https://poipiku.com/7185781/10646437.html
    変わらない日常に、ひとつだけ変わったもの――彼との距離。

    #戦衣都
    #brmy男女CP

    当事者の影はじきに重なる(そよいと)(学パロ) あの日から、時間はいつも通りに流れている――はずだったのに。
     でも、新開くんの一言は、確実にわたしの未来を変えようとしていたんだ。

     * * *

     その後の教室内。

     窓際の席で教科書を広げながら、視線を向けていた。追いかけてしまうのは新開くんの背中。あからさまに変化している自分の気持ち、あまりにも現金すぎる……。

     思わずため息をつく私をよそに、廊下側の自席に座る新開くんは、大きな身体を前のめりにしながら前の席の男子に笑いかけ、隣の女子に軽口を叩く。人気者らしい自然体で、誰にでも平等に距離を縮める。いつもの新開くんそのものだ……そんなことは前から知っている。
     けれど、あの放課後の言葉を聞いたあとの私にとっては。

    ――俺が好きなのは弥代だから。

     耳に残る低い声。掴まれた手首の感触。その一言は、私をすっかりおかしくしてしまった。

     休み時間のたびに実感させられる。例えば、廊下に出たときに聞こえてくる女子たちの談笑。
    「やっぱ新開くんってかっこいいよね~! キックボクシング部でキレッキレな動きだし」
    「しかもめっちゃ頭も良いのに、勉強教えてくれるし」
    「何それ、めっちゃ優しい!」

     何気ない会話なのに、妙に胸の奥がざわつく。

     やっぱり新開くんは人気者だ。
     改めて思い知らされて、その評判を見聞きするたびに過ぎるのは――

    (あの日の告白、実は夢とか幻とかだった……?)

     * * *

     いったん冷静になろう。

     そう決めてすぐ、気持ちを紛らわせようとして寄った図書室の一角。本棚の前で目当ての本を探していると、不意に落ち着いた声がわたしを呼び止めた。
    「弥代」

     ドコドコと跳ねる心臓を抑え込みながら振り向く。胸騒ぎの元凶である新開くんは教科書を片手に、こちらの顔を覗き込んでいた。
    「この間、プリント……ありがとな。助かった」
    「あ、うん」

     確か部活の遠征中に、不在だった間の宿題のプリントを預かり、渡していたのだ。たったそれだけの会話なのに、心臓が忙しなく跳ねる。新開くんはいつも通り自然体の笑顔を見せてくれるのに。何だか私だけ、勝手にぎこちなくなっている。

     返す言葉を探している間に、新開くんはふっと笑った。
    「なんか、今日元気ない?」
    「……そう、かな」
    「ああ。ま、無理に聞くつもりはねーよ」

     軽く手を振って通り過ぎる背中を、私はしばらく見送ってしまった。

     人気のない図書室は怖いくらいに静まり返っていて、空調の風が私の全身を微かに撫でていく。

     その後の帰り、校門の前で同じクラスの女子とすれ違った。明るいストレートブラウンの髪が相変わらずきれいな、カースト上位に位置する女の子。
     気づかないふりをして家路を急いだけれど、彼女からは少なからずこちらへの視線を感じる。

     当然だ。彼女は代わりに新開くんに手紙を渡してほしいと、私に頼んでいたのだから。でも新開くんが来たから、結果的に、彼女の想いを託される役から降りた。
     あの後、彼女が新開くんに告白したといううわさも聞こえてこない。彼女からしてみれば不完全燃焼のままだろう。

     でももしも、あの時新開くんが来なかったら? 私はどうしていただろう。
    (……ううん。そんなの、もう考えても仕方ない)
     ふと降りてきた疑問を振り払おうとしても、胸の奥の重さは消えそうにもなかった。

     * * *

     短い授業を終えた後の土曜日午後。
     体育館横のベンチに座って、私は自分でも理由がわからないままノートを広げていた。

     中からはサンドバッグを打つ乾いた音や、ミットに蹴りが入る重い衝撃音が響く。ここにいるとキックボクシング部の練習音が聞こえてくる、と気づいたのは偶然のはずだった。
     新開くんのことをもっと知ろう。そう決めたはずなのに、何だか落ち着かなくて。

    「……いた」
     やっぱり帰ろうかな、と立ち上がろうとした矢先。声の方を見ると、新開くんが練習着姿でそこに立っていた。額にはうっすらと滲む汗が光り、三分の一ほど中身が減ったペットボトルを片手に笑いかけている。

    「勉強? 休日まで真面目だな」
    「……たまたまだよ」
    「ふーん」

     彼は隣に腰を下ろし、キャップをひねって一口、水を含んだ。
    「この間の、あれ……考えてくれたか?」

     心臓が跳ねた。こんなタイミングで――直球すぎる問いかけに、息が詰まりそうだ。
    「……考えて、は……いたけど」
    「けど?」
    「新開くんは……本当に、私なんかでいいの?」

     真顔で少しの間、固まった新開くんに気がつき、しまった、と思った。推敲もせず、頭に浮かんだ不安をそのまま口にしてしまったのだから。
     そうか、私は怖かったんだ。彼の言葉を信じて、期待して。後から「やっぱり違った」と、なかったことにされるのが。

    「……弥代は俺のこと、見た目ゴツくて怖えやつだって思っているだろうけど」
    「いや、ちが……」
    「じゃあ好きだって言ってんのに、なんで逃げんだよ」

     息をついてからこちらを見る目は、ひたすらに真っすぐだ。
    「急かしておいてなんだけど、返事考えてるって話ならいくらでも待てる」

     やさしいのに、芯の強さが同居する声。逸らした視線の先で、肩が軽く触れる。
    (また心臓が止まりそう……)
     思いのほか近い距離。

    「でも少なくとも俺は、弥代のこと、他の誰にも取られたくねーんだ」

     あまりにも直球なその言葉に、胸の奥が熱くなる。息の仕方を忘れたみたいで、視線は足元から上げられない。
     彼には責めるような意図なんてない。ただ一貫して、私に純粋な気持ちをぶつけてくるだけだ。

    「そのくらい特別な女だって。俺は想ってるからさ」

     その声音は、焦らせるでもなく、諦めさせるでもない。
     新開くんの声色は、不甲斐ない私の心にどこまでもやさしく耳に残っている。

     * * *

    (だから覚悟を決めようって思ったけれど……やっぱり教室内で話しかけるハードルはまだまだ高いんだよなあ……!)

     週末いっぱいまでうんうん唸りながら考えた。
     土曜の夜、窓の外に灯る街灯の明かりまで、新開くんの声と重なって聞こえた。日曜になっても胸の鼓動は落ち着かず、何度も鏡を覗いては「どんな顔で会えばいいのか」ばかり考えてしまう。

     そして迎えた月曜日。ひとまず新開くんに返事をしようと決めていたのに、こんな時に限って新開くんはなかなか一人にならない。ことごとくタイミングを逃し続けた放課後、しょんぼりしながら玄関へ向かえば、見慣れた大きな背中。

    「し、新開くん……!」
    「弥代?」

     振り返った新開くんは練習着のまま靴を履き終えたところだった。
    「あの、部活は?」
    「今日は外のジムで練習」
    「えと、そうなんだ」
     情けない。今の私があまりにも不審者すぎて。

    「駅まで一緒に行かね?」
     それでも私の様子を察したのか、新開くんは口実を作るように、気安く提案してくれた。
    「……うん」
     ありがたく肯定し、並んで歩き出す。沈む夕陽は背を向けた校舎を赤く染め、長い影が伸びていた。


     最寄り駅手前の横断歩道で、信号が赤に変わる。
    「この間の返事、なんだけど」

     立ち止まってから、呼吸を整えて。私は新開くんの顔を見て、そっと切り出した。
     新開くんにとっては唐突だったのか、一瞬だけ目を泳がせてから、すぐにこちらを見つめ返した。
    「……おう」

     気恥ずかしいけれど、伝えなきゃ。頭の中はそれだけでいっぱいだった。
    「……わたしも、多分……新開くんのこと、好きなんだと思う」

     何とか言い切って、すぐに顔を俯ける。僅か五秒があまりにも永遠に感じられて、直視するのにも勇気がいる。
     本当に、世の中のお付き合いしている人たちも、そうじゃない人もみんな、すごいな。人を好きになって、こんな風に、自分の想いを伝えるなんて。

     新開くんは、無言だった。何かすぐに、言葉が返ってくるものとばかり思っていたけれど。焦れる気持ちと気恥ずかしさがないまぜになったまま、再びそっと、新開くんを見上げる。沈みかけた夕陽が彼の横顔を照らす。何だか神々しいものを見ているみたいだ、と思った刹那――。

     口元がふっとゆるみ、新開くんは屈託ない笑顔を広げてみせた。
    「……そっか」

     新開くんの声色が、さっきと全く違って聞こえる。今は明らかに、抑えきれない喜びの色が乗っていて。
     このまま青信号に変わらなければいい、なんて。考えている自分が信じられなかった。


     並び立つ新開くんと私の影のすき間が細くなって、私は緩みそうな表情を堪えながら下を向く。
     新たな青春の一ページ目を刻むように。私は新開くんとの距離をもう一歩縮めようと、歩みを進めた。
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    michiru_wr110

    DONEbrmy
    弥代衣都(+皇坂+由鶴)
    捏造しかない・弥代衣都の中に眠る、過去と現在について
    image song:遠雷/Do As Infinity

    『きょう、ばいばいで。また、ママにあえるの、いつ?』
    軽やかに纏わる言霊(弥代衣都・過去捏造) 女は視線でめつけるように傘の骨をなぞり、露先から空を仰いだ。今日という日が訪れなければどれほど良かっただったろうか、と恨みがましさを込めて願ったのに。想いとは裏腹に順調に日を重ね、当たり前のような面をして今日という日を迎えてしまった。

     無機質な黒色の日傘と、切り分けられた青空。都会のように電線で空を区切ることも、抜けたように広がる空を遮るものもない。しかし前方には、隙間なく埋め尽くされた入道雲が存在感を主張している。

     女の両手は塞がっていた。
     片方の手には日傘。そしてもう片方の手には、小さな手の温もり。
     歳相応にお転婆な少女は女の腰にも満たない背丈で、時折女の手を強く引きながら田舎特有のあぜ道を元気に駆けようとする。手を離せば、一本道をためらいなく全力疾走するであろう、活発な少女。しかし女は最後の瞬間まで、この手を離すつもりはない。手を離せば最後、何もしらない無垢な少女はあっという間に目的地へとたどり着いてしまうに違いない。
    3347

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    PAST⚠️パソスト公開前に書いたので公式の設定と齟齬があります

    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25044306 の続きのふたりのおはなしというか、起承転結の起に当たるはなし。
    なので、衣都ちゃんが出て来ない吏衣都です。出て来るのは吏来さんとミカさんだけ。
    「その日」に思いを巡らす吏来さんを捏造しました。
    on that day「あら、吏来。いらっしゃい」
    「お疲れ」
     勝手知ったる何とやら。ジム帰りにAporiaに寄った吏来は、案内されるより先にカウンターの隅の席に腰を下ろす。
    「いつもの?」
    「うん、お願い」
     おしぼりを手渡しながらオーダーを確認したミカが、何かにあてられたように目を細めた。
    「機嫌がよさそうね」
    「わかる?」
    「それはもう。詳しく教えて……と言いたいところだけど、聞くまでもなくお嬢のことなんでしょ」
     首を横に振って肩をすくめるミカに、吏来は口の端を上げて答えとする。
    (お嬢のこと貰う約束した――とは、流石に言えないよな)
     たとえ親友と言えど、衣都を良く知る相手に詳しい話をするつもりはない。ただ、彼女とうまく行っているのが伝わればいいと、曖昧に濁す。ミカもその辺りの機微には聡いので、それ以上は何も聞かずに笑って、吏来の酒を作り始めた。
    3692

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    夏メイ(のつもり)(少し暗い)
    2023年3月20日、お彼岸の日の話。

    あの世とこの世が最も近づくというこの日にすら、青年は父の言葉を聞くことはできない。

    ※一部捏造・モブ有
    あの世とこの世の狭間に(夏メイ) 三月二十日、月曜日。日曜日と祝日の合間、申し訳程度に設けられた平日に仕事以外の予定があるのは幸運なことかもしれない。

     朝方の電車はがらんとしていて、下りの電車であることを差し引いても明らかに人が少ない。片手に真っ黒なトートバッグ、もう片手に菊の花束を携えた青年は無人の車両に一時間程度揺られた後、ある駅名に反応した青年は重い腰を上げた。目的の場所は、最寄り駅の改札を抜けて十分ほどを歩いた先にある。
     古き良き街並みに続く商店街の道。青年は年に数回ほど、決まって喪服を身にまとってこの地を訪れる。きびきびとした足取りの青年は、漆黒の装いに反した色素の薄い髪と肌の色を持ち、夜明けの空を彷彿とさせる澄んだ瞳は真っすぐ前だけを見据えていた。青年はこの日も背筋を伸ばし、やや早足で商店街のアーケードを通り抜けていく。さび付いたシャッターを開ける人々は腰を曲げながら、訳ありげな青年をひっそりと見送るのが恒例だ。商店街の老いた住民たちは誰ひとりとして青年に声をかけないが、誰もが孫を見守るかのような、温かな視線を向けている。
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