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    えすやま

    @617ponio514

    6/29全ての作品をべったーへ移しました。
    今後はべったーに掲載しますので、ここは更新しません。ROM専になります。

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    えすやま

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    優しい桐生さんにちょっと悶々としちゃうゴロ美ちゃんの話。
    ゴロ美ちゃんは宇宙一可愛い。

    #桐真
    kirima
    #桐ゴロ
    paulowniaGrouper

    二人のアフター「桐生ちゃん、お待たせ♡」

     その声に桐生一馬は振り向いて、吸っていた煙草を携帯灰皿に片付けながら改めて声の主の全身を見つめた。

    「嫌やわ、そんな舐めるように見んといて♡ そんなにゴロ美がキ・レ・イ?」

     真島吾朗――ではなくゴロ美はいつものワンピースの上に白色のファーコートを着て、白いバッグを手に持って立っている。

    「ああ……綺麗だ」

     桐生が思ったままの言葉を口にすると、ゴロ美は目を見開いて、すぐに桐生から顔を逸らした。その頬は赤らんでいる。

    「もぉー♡ 桐生ちゃんは正直やなあ♡」
    「本当のことを言ったまでだ。そこ、足元気をつけろよ」
    「うん……ありがと」

     差し出した桐生の腕にゴロ美は両腕を巻き付けて密着して、言われた通りに段差に気を付けてながら歩き始める。

     桐生はゴロ美を本当に女として、真摯に向き合ってくれる。そんな彼の様子にゴロ美は嬉しくもあり、かなり複雑な気持ちになることもあった。
     ゴロ美とアフター(喧嘩)をする時は容赦なく殴るくせに、それ以外では優しい。とにかく優しいのだ。

    (桐生ちゃんはホンマたらしやな……)

     そんなたらしとの本日のアフターは喧嘩ではなく、ゲームセンターにバッティングセンター、そしてカラオケ巡りという桐生提案の内容だ。
     ゴロ美はもちろん喧嘩をしたかったのだが、桐生がそれ以外を提案してきて、ならば、ということでジャンケンで決めようということになり、桐生が勝った。
     女の子とのアフターにバッティングセンターとは如何なものかという疑問はゴロ美には浮かばない。

    「女に二言はないけど……」
    「何だ、まだ不満そうだな」
    「だってぇ……ゴロ美は桐生ちゃんと喧嘩したいん」
    「俺はゴロ美と普通にアフターを楽しみたいんだ」
    「ゴロ美との喧嘩、楽しくないん?」
    「喧嘩も楽しいさ。でもカラオケとかはまた別の楽しさがあるだろ」
    「そりゃそう、やね」

     腕を組んで歩く長身の二人が醸し出す雰囲気はラブラブカップルそのもので、見た目のいかつさ云々にツッコミを入れられる人間はこの神室町に存在しないだろう。
     ただ、酒を飲み過ぎたタチの悪い輩はいつでも居るもので、今夜は三人のサラリーマン風の酔っ払いが因縁を吹っかけてきた。

    「おい! てめぇ、人様にぶつかっておいてスルーか! あぁ!?」

     桐生はハァ、とため息をついた。

    「……ぶつかっていない」
    「っざけんな! こいつの肩イッちまっただろうが!」

     連れの一人がわざとらしく右肩を抑えて喚いている。前にも見た光景だな、と桐生は既視感を覚えながら、

    「触れてもいないが?」
    「いい加減にしろよ! オンナの前でボッコボコにしてやる!」
    「もうええよ、桐生ちゃん。こんなん相手にしてたら時間がもったいないわ」

     そう言ったゴロ美を見た酔っ払いは、舌なめずりしながらゴロ美の足から顔を見て「ゲッ!」と嫌な声を上げた。

    「おまえ、オカマかよ!」
    「…………」
    「うわっ、ゲロ吐きそう!」
    「…………」

     このテの罵声には慣れている。ただ神室町ではゴロ美も有名人なのでこのようなことを言われることもめっきり少なくなっていたのだが。

    「目が腐るぜ! こんなブ……ッ!?」

     酔っ払いの身体が吹き飛んだ。往来の人々の視線が一気に集中する。

    「桐生ちゃん……」

     こめかみに血管を浮き上がらせて、桐生は一気に酔いが醒めたらしい男二人をギロッと睨みつけた。

    「その馬鹿を連れてサッサと行け」
    「はっ、はいいいいっ!」

     ゴロ美は正直、驚いていた。桐生が猛烈に怒っているのが分かる。

    「どないしたん、桐生ちゃん? そんな怒って」
    「……俺が一番許せねぇことをやったからだ」
    「え?」
    「ゴロ美を貶すことだけは絶対に許さねぇ」

     真っ直ぐな目でこんなことを言うのだ、桐生一馬という男は。
     ゴロ美の胸がキュッと痛む。

    (こんなん、反則やで)

    「警察が来た、行くぞゴロ美」
    「あっ、うん」

     桐生がゴロ美の手を握って走り出す。ゴロ美は――蒼天堀の街を走ったあの頃を思い出した。何ともいえない気持ちが込み上げてきた。
     目の前の、グレーのスーツに包まれた広い背中がカッコイイと本気で思う。
     ――あの日、手を引いて走った自分を彼女はどう思っていただろう。

     ゴロ美の視界が滲む。らしくない己の生理現象に、『彼』は戸惑い、慌てて空いた手で拭う。
     こんなにも桐生が優しいのは、ゴロ美が女の子だから。そこに特別な感情は有りもしないのに。
     余計なことを考えてしまう己の女々しさに『彼』は自嘲の笑みを浮かべた。
     桐生の優しさに甘えてしまえ。

     立ち止まった先がラブホテルの前なのは偶然なのだろう、きっと。

    「もう大丈夫だ。予定がちっと狂っちまったが、今からゲーセン行こう」
    「桐生ちゃん」
    「ん?」
    「もうええ」
    「ど、どうした? ゲーセン行きたくないのか? カラオケも……」
    「あっ、ちゃうねん。そんな顔せんといて」

     先程までの覇気はどこへやら、眉尻を下げて情けない顔をしている桐生にゴロ美は思わず噴き出した。

    「ほんま、かわええなあ桐生ちゃんは!」
    「機嫌、損ねたんじゃない、のか……?」
    「ゴロ美はご機嫌よ♡……さっきはありがと」
    「いや……すまなかった、嫌な思いをさせた」
    「何も嫌なことはあらへん。ゴロ美は誰から何を言われても構へんもん。桐生ちゃんだけがゴロ美を見てくれてればええの♡」
    「ゴロ美……」
    「どしたの? そんな壁に顔を打ち付けたら壁が壊れるよ?」
    「ゴロ美が可愛いすぎて死にそうだ」
    「桐生ちゃんが死んだらアカン! 休む!? たまたまホテルがある! ここで休んでく!?」
    「ああ……そうしよう……いや、ゴロ美はその、良いのか?」
    「ええに決まってる♡ アフターはこれからやで♡」
    「そうだな」

     二人のアフターはまだ終わらない。
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