色鮮やかな海の端にて「こんごうさんからお話を伺ってました。よろしくお願いいたします」
緊張した面持ちで挨拶をしにやってきたもがみを前に、つい昨日まで隣にいたくまのもはたかぜから話を聞いたと言っていたなと思い起こす。世話役にはもっと適任がいるだろうに何故揃いも揃って俺なんだと思いながらも、こういう時頼りになるむらさめは不在だ。兄から何を聞かされてきたのかは……聞かずにおこう。幼少期のエピソードなどが出てきた時には居たたまれない。
「よろしく。ところで接岸こっちで良かったのか? 二番艦が首を長くして待っていたが」
「まだ少し。どんな顔して会えばいいのかわからないもので」
そうか、と応えつつ視野の端に全力で駆けてくる人影を捉える。当人が気付くのは時間の問題だ
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