Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    たつほ

    @krokro_ron

    好きなものを好きなだけ

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 32

    たつほ

    ☆quiet follow

    NOPD

     愛しいと言う気持ちとは何だろうか。
     不機嫌そうな顔をして隣に立っている男をチラリと横目で見て思う。彼にとっては不本意な流れで自分と共にいる事になってしまい隠すことのない不機嫌さをみせている。自分以外の相手だと、こんなあからさまに表情を変える事はない。それが彼が自分に心を見せているのだと思うと嬉しい。こんな事を言ったらもっと彼の眉間の皺は深くなるのだろうけれど、きっと「甘えている」のだ。自分には感情を隠さず見せてくれている。そうしても良い相手なのだと甘えているのだ。
     ふふ、と小さく笑えば不満そうな目がこっちを睨む。
    「可愛いね、ボーラ。」
     盛大なため息と舌打ちが返される。その反応に更に笑みを深めれば気色悪いと暴言が返ってくる。
     好きの反対は無関心だと言う。それがアンドロイドにも適応されるのかはわからないが。彼は事あるごとに私に突っかかって来るのだ。そんなに嫌なら無視でもすれば良いのにと思うのだけれど彼はそうしないのだからきっと甘えているのだ。
    「ねぇボーラ、これが終わったら一緒にお酒でも飲みに行かないかい。」
     自分が任された仕事をこなす為、手元のキーボードを見たままに誘ってみる。答えは分かりきっているのだけれど、なんとなく今の間を持たす為に口にしていた言葉だった。
    「……終わって俺がそんな気分だったら、な。」
     作業をしている手がとまる。思わず見上げた彼の表情は見えなかった。
     こんな気まぐれがあるから彼の事が堪らず愛しいとプログラムされただけのkokoroが跳ねるのだ。
    「なら、今の作業を頑張って終わらせないとね。」
     静かな空間に私が生み出すキーボードの音と、聞こえるはずのない弾む心臓の音が聞こえる気がした。



    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💴💴💴💴💴👏😭💞
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    エヌ原

    DONEアイドルマスターSideM古論クリスに感情があるモブシリーズ4/5
    図書館の女 玄関に山と積まれた新聞の束を回収して、一番最初に開くのはスポーツ新聞だ。うちの館ではニッカンとスポニチをとっている。プロ野球も釣りも競馬も関係ない、後ろから開いて、芸能欄のほんの小さな四角形。そこにあの人はいる。
     最初に出会ったのはこの図書館でだった。私は時給980円で働いている。図書館司書になるためには実務経験が三年必要で、高卒で働いていた書店を思い切ってやめて司書補になり、前より安い給料で派遣として働き始めたのは本をめぐる資本主義に飽き飽きしてしまったからだ。
     べつに司書になったからって明るい未来が約束されているわけではない。いま公共の図書館スタッフはほとんどが今のわたしと同じ派遣で、司書資格があるからといって、いいことといえば時給が20円上がる程度だ。わたしはたまたま大学図書館に派遣されて、そこから2年、働いている。大学図書館というのは普通の図書館とはちょっと違うらしい。ここが一館目のわたしにはよくわからないけれど、まあ当然エプロンシアターとか絵本の選書なんかはないし、代わりに専門書とか外国の学術誌の整理がある。でもそれらの多くは正職員がきめることで、わたしはブックカバーをどれだけ速くかけられるかとか、学生の延滞にたいしてなるべく穏当なメールを書けるかとか、たまにあるレファレンス業務を国会図書館データベースと首ったけでこなすとか、そういうところだけを見られている。わたしもとにかく3年を過ごせればよかった。最初はほんとうにそう思っていた。
    8911