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    85_yako_p

    カプ入り乱れの雑多です。
    昔の話は解釈違いも記念にあげてます。
    作品全部に捏造があると思ってください。

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    タケ漣のラブコメです。傲慢なタケルくん。(2023/9/28)

    ##タケ漣

    落ちた アイツが池に落ちた。冗談みたいな落ち方だった。
     池の周り、っていうランニングコースを選んだのは俺だけど、コイツが勝手に落ちただけで──まぁ俺に責任はないが人の心はあるので、助けなければと池を覗き込む。
     すると突然池が光り出した。結構眩しかったけど今は早朝というのもあって、それを見ていたのは俺だけだ。
     光が収まると、そこには女の人がいた。きれいな人なんだろうけど、なんとなく印象に残らない。そんな顔をしている。
     水の中から現れた女は、水の中から現れた女が言いだしそうなことを言う。
    「あなたが落としたのは、あなたのことが好きでたまらない牙崎漣ですか? それとも、あなたのことを好きでも嫌いでもない牙崎漣ですか?」
    「いや、俺は落としてな」
    「どちらですか?」
     俺が落としたわけじゃないけど、似たような話を聞いたことがある。これって選択肢にないやつが正解だったはずだ。だとしたら『俺のことが嫌いな牙崎漣』が答えになるはずだ。なんかムカつくけど嘘を吐くのはよくないだろう。いや、落としてないけど。
    「落ちたのは俺のことが嫌いなアイツだ」
     すると女は首を横に振る。
    「大河タケルが嫌いな牙崎漣なんて、この世にいませんよ」
    「はぁ?」
    「二択です」
     二択だそうだ。今更だけど、なんだこれ。
    「二択なら……俺のことを好きでも嫌いでもないやつだな」
    「わかりました。それでは、これを」
     これを、と言われた瞬間にまた目の前が眩しくなる。光が収まったときには目の前に少しも濡れていないコイツが立っていた。

     それが先日の話だ。あの日以来、アイツの様子が変だ。
     まず俺のランニングにくっついてこない。それだけならどうせどっかで寝てるんだろうと思うけどラーメンの早食いも挑んでこないし、とにかく勝負事を挑んでこなくなった。レッスンには来るが身が入っていないし、俺が何かを言ってもいちいち反応してこない。
     どういうことだろう、と首を捻るにはあの日の出来事が頭から離れない。
     俺は今まで接していたアイツが俺のことを好きでも嫌いでもないと思ったが、本当のアイツは俺があの日選ばなかった、俺のことが好きでたまらないアイツなんじゃないか。
     そうなると、どうしよう。俺がアイツとの日常を取り戻すには、アイツが俺のことを好きだって認めなきゃならない。そして、いまのアイツを否定して、俺自身が俺のことを好きなアイツを選ばなければならない。
     別にアイツに好かれてなくてもいい。突っかかってこないなら楽だ。それなのに、いつも通りじゃないアイツを見てると胸がどうしようもなくもやもやするんだ。

     俺はあの池にアイツを呼び出す。つまらなそうにやってきたコイツに掴みかかって、かなり苦戦しながら池に落とす。池が光る。女が現れる。
    「あなたが落としたのは……」
    「俺のことが大好きなコイツだ」
    「わかりました。それでは、これを」
     これを、と言われた瞬間にまた目の前が眩しくなる。光が収まったときにはあの日のようにコイツがいた。なんだか、ちょっとだけぼんやりしている。
    「……チビ?」
    「ああ」
    「なにして、」
    「ランニングの途中だ」
    「……そうかよ! ならあの自販機まで勝負だ!」
     そう言って駆け出そうとするコイツの腕を掴む。そうか、コイツが俺の求めていた牙崎漣なのか。この、俺のことが好きなコイツが。
    「おいチビ、離しやが」
    「責任、ちゃんと取るから」
    「……ハァ?」
     俺はコイツに好かれることを望んだんだから、責任を取らなきゃならない。だって俺は、俺のことをどうとも思ってないコイツよりも、俺のことが好きなコイツを選んだんだから。
    「……うん、いける」
    「何がだよ!」
     コイツがいままで散々絡んできたのも、俺のことが好きだったからとわかればとたんに可愛く思えてきた。面倒だと思うこともあったけど別にもともと嫌いじゃなかったし、意識して見てみたら美人だし。
    「……俺もオマエのこと、好きかもしれない」
    「も、ってなんだよバカチビ! 意味わかんねぇ!」
     コイツは俺の腕を振り払って走り出そうとしたが、逃す気のない俺の力にすべてが面倒になったという顔をして大人しくなった。
     俺はといえばここからどうしていいのかわからずに、ああ、コイツって俺のことが好きなんだよなぁ、って思いながら真っ白な腕を掴んでいた。
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