「例えば、アオキは小生が浮気をしていたらどう思いますか?」
言われた問いかけに、思わず目の前の恋人を凝視しながら、固まった。唐突な質問の意図が掴めない。え、いやまさか、このひとに限ってそんなことをする訳が。
今の自分は、一体どんな顔をしているのか。余程複雑な顔をしていたのだろうということだけは自分で予測がついた。現に、自分の顔を見遣っていたハッサクさんが、少しだけ慌てたように、両手を彼の顔の前で大きく振り出す。その少し幼げな仕草は、けれどハッサクさんによく似合っていた。ちょっとだけ自分の眼が細まって、それに安心したように、彼が言葉を続ける。…本当に、一体自分はどんな顔をしていたんだ。
「いえね、アカデミーで生徒が話していたのを聞いたのですよ。恋人が浮気をしていたらどうするか、とね」
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