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    sasagi6767

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    sasagi6767

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    供養と迷った…。
    相手が浮気したらどうする?みたいな話でいちゃつく二人をやろうと思ったら、
    何だか薄暗くなって、着地点が不明になりました…。だから今未完です。全然完成しないので、此処に…。

    #アオハサ
    Aoki/Hassaku

    「例えば、アオキは小生が浮気をしていたらどう思いますか?」

     言われた問いかけに、思わず目の前の恋人を凝視しながら、固まった。唐突な質問の意図が掴めない。え、いやまさか、このひとに限ってそんなことをする訳が。
     今の自分は、一体どんな顔をしているのか。余程複雑な顔をしていたのだろうということだけは自分で予測がついた。現に、自分の顔を見遣っていたハッサクさんが、少しだけ慌てたように、両手を彼の顔の前で大きく振り出す。その少し幼げな仕草は、けれどハッサクさんによく似合っていた。ちょっとだけ自分の眼が細まって、それに安心したように、彼が言葉を続ける。…本当に、一体自分はどんな顔をしていたんだ。

    「いえね、アカデミーで生徒が話していたのを聞いたのですよ。恋人が浮気をしていたらどうするか、とね」
    「………はあ」

     なんだそのろくでもない会話。いや、そう言う話をするのは別にどうでもいいけれど、ハッサクさんを巻き込まないでほしい。そんなことを思いながら、打った相槌は我ながら雑になった。ハッサクさんが、苦笑するように少しだけ目を細めて、また話を続けた。

    「大体の生徒が、浮気をしたら殴って別れる、と言う意見でした」
    「はあ。で、貴方もそうなんですか?」

     別に、アカデミーの生徒が浮気に対してどんな考えを持っているかには、たいして興味などない。けれど、ハッサクさんがどう考えているかには、俄然興味が湧いた。相槌もそこそこに、少し食い気味になりながら、彼の返答を求める。…ハッサクさんが、少しだけ眉を下げて、穏やかに、静かに笑った。…あ、と内心で声を漏らす。彼が、こんな風に静かに、何かを諦めたように笑うときは、…大抵自分にとって碌なことではない。

    「いえ、小生は貴方が幸せなのが一番ですのでね。貴方の幸せが小生には無く、別のところにあると言うのなら、…貴方が幸せになるほうを選びます」

     返ってきた言葉に、…ああ、と、喉奥でため息を吐いた。ああ、ほらやっぱり。なんでこのひとはこうなんだ。自分の幸せが、貴方の元にしかないことなんて、貴方が一番知ってるでしょう。知らないなんて言わせない。そもそも、浮気なんて裏切りだろうが。何で裏切られて、相手の幸せを選ぶんだ。願うんだ。貴方は、この世界で一番、幸せになる権利があるのに。そして、貴方を一番幸せにするのは、自分なのに。それ以外の誰も認めないのに。

    「………貴方の、そういう物わかりの良すぎるところ、自分は嫌いですね」

     色々な思考が千々に巡って。暫くの長考のあとに、出てきた言葉はそんな言葉だった。彼のように、静かに言ったつもりだ。けれど、矢張り感情が滲んだようで。自分の言葉にか声色にだろうか、目の前の彼が、困ったように小さく笑った。自分が、ハッサクさんの言葉に納得していないことが、彼にも分かったのだろう。いや、きっと口にする前から、…自分が納得しないことになんて、分かっていたのだろう。それでも、きっとハッサクさんは口にしたんだ。自分が浮気をしたら、幸せを願って身を引くと。…ああ、本当に、本当にこのひとは。

    「もっと、浮気したら殺してやるくらい言ってください。幸せを願って身を引かれるより、そのほうが自分は嬉しいです。」

     今度は、思ったことが口へと直結した。長考もせずにそう言うと、彼の優しげに蕩ける蜂蜜のような目が、驚いたように丸くなる。どうやら、自分のこの思考は、彼には予想外だったようだ。少しぽかんとしたようなその表情は、いつもよりも幾分も幼い。…好いな、可愛い。こんな顔が見られるなんて、少し得をした。頭の片隅で、そんなことが浮かんで少しだけ口の端が上がる。

    「…それはまた、過激ですね。貴方がそのような考えだとは、少し意外です」
    「そうですか?…いえ、自分がそうだというのではなく。貴方にはそのくらいに思っていて欲しいという話です」

     口調まで、予想外だと言いたげに驚かせて。けれどふんわりとした声で、彼が言う。それに、そんなこと当たり前でしょう、と言い掛けて、それは何となく飲み込んだ。…いや、別に自分は、ハッサクさんが浮気をしたとしても殺そうとは思わないが。…いや、思わないが。その状況を想像しかけて、…それだけで全身の血液が逆流しそうになって、慌ててその想像を打ち消す。ハッサクさんを殺そうとは思わないが、…相手は殺すかもしれない。そんな思考が一瞬過ぎって、…否定しきれない自分に、自分で驚いた。

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