結局じゃがいもパンケーキは睡眠後のおやつになった。 俺は思わず頭を抱えた
元々猫のように気まぐれで自由なやつだとは思っていた。何回か彼に尻尾や耳を幻視したこともある。でもこれは確実に幻ではない、はずだ。なんで、「りと!なんか朝起きたら生えてきたんよ」これは夢なのか、、、「これちょー可愛いと思わんとりあえず家の中こやー!」彼の家に入ってソファの彼の隣に座る。目の前ではゆらゆらと揺れる金色の尻尾と彼の目と同じようにくるくる変化してピコピコ動く猫の耳。「ねぇ、ポー、それ、どうしたの」明らかに人体には存在しない耳の方を触りながら恐る恐る尋ねてみる。ふわふわしていて柔らかくて少し暖かい。幻覚じゃなかったみたいだ、「ちょっとリトくすぐったいしー だからなんか生えてきたっていっとるし!」ふわふわした耳が逃げるように動いて手を引く。「てかリトにも生えとらんそれ犬の耳違うん?」「え」慌てて頭を触るとそこにはいかにも犬の耳です。みたいな感じのふわふわの耳がついていた。「え」朝は、無かったはずだ。珍しく一日フリーだったからどうせならとばっちり支度を整えてポーの家に向かったのだ。ポーランドみたいにヘアオイルを使ったりしたわけじゃないけど櫛を通しはしたのだ。その時には耳はなかったからポーランドみたいに起きたら生えてたとかじゃない。原因として考えられるのはポーランドに会ったことくらいだし、でも一番最初に会った時はついてなかった。猫のしっぽと耳の衝撃で頭を思わず抑えたからよく覚えている。「リトー?どしたん」プププと笑いを堪えているポーランドが下から覗き込むように顔を見てくる。「いつ生えたんだろうって」「リトも起きた時と違うん」「起きた時は生えてなかったし来るまで生えてなかったんだ、だからポーランドに会った時に生えたんだと思ったけどポーランドに会った最初は生えてなかったんだよね」自分の耳を触ってみる。ふわふわしてそれでちょっとくすぐったい。「会っただけじゃーならないと思うんよ。おれ今日買い物行ったし、そこでハンガリーに久々にあったんよ!」俺の耳と髪をわしゃわしゃされる。ちょっとくすぐったいけど悪い気はしない。お尻にバシバシ何かが当たる感覚がして振り返るとくるみ色の尻尾が左右に揺れていた。ちょっと恥ずかしい、、、っていうか、「ポーランドその格好で買い物行ったの!?」わしゃわしゃ髪をかき混ぜられる。「そー、買い物行かんと家にちょうどじゃがいもなかったんよ」「何食べたいの」「ポテトパンケーキ」「わかった、作るよ。」嬉しそうに尻尾がぴーんと伸びてゆったり左右に揺れる。そうだ、そうじゃない、「猫耳とか出したまんま言ったの!?」彼は腕を上げるのが疲れたのかわしゃわしゃするのをやめた「いんや、隠してたんよでも丁度ハンガリーに会っていろんなとこでけもみみが伝染してるって教えてくれたんよ。」「他の国でも!?」「各国で伝染しとるって言ってたしーそーだと思うしーでもハンガリーさんはかかってなかったんよ。でもイタリアとかドイツとか、アジアとかまで広がってるらしいし原因不明なんよ」各国に広がってるのに原因不明とか怖すぎないか、、、?「国民とかは大丈夫なの?俺のとこは国民は何もなかったと思うけど。」というかいきなり耳が生えたとなればたとえ他国の話でも俺の耳に入っていてもおかしくはない、、「なんか国の化身だけにしか伝染しないらしいんよー、、」「国の化身だけしか?」「そ!そんでG8の連中が中心となって原因調べてるってハンガリーが言っとったしー、具合悪くなったりもしてないからそんなに気にすることないと思うんよ、」それでいいのか、、、、まぁ、この機会にまとめて休暇を取るのも悪くない。そろそろお昼ご飯の準備をしたほうがいいかな、じゃがいもを潰すくらいはやっといたほうがいいかもしれないし、、「リト!お手!」頭で考えるより先に動いて差し出された右手に手を重ねた。「???!」「リトおっかしーし!」わしゃわしゃと褒めるように撫でてくる手は決して不愉快なものじゃなくて、むしろちょっと、いやかなり嬉しくて尻尾がまた左右に激しく揺れてしまう。「い、いや、なんか考えるより体が動いちゃって、本能ってやつかな、、、、」この体はまだよくわからないことだらけだけど一つわかることがある。ポーランドにめちゃくちゃ揶揄われそうな体質ってことが。ほら、あの表情は何か仕掛けてこようとしている。やられてばかりじゃちょっと癪だ、「ちょっと待ってて」「?うん、」確かこの棚にあったはず、時々遊びにくる黄色の猫と茶色の猫用に、猫じゃらしが。急いで駆け戻る。なんだかテンションがおかしい気がするけれど頭があんまり回らないからそんなこと気にも留めなくなる。「ほら!ポーランド!」急いで戻った俺の手には猫じゃらし。あいつの手にはどこから取り出したのか犬のおもちゃみたいな縄が握られていた。仁義なきワンニャンバトルが始まったのである。
結局散々遊び倒して疲れて同時に気絶するように眠りこけて引き分けになってしまった。寝て起きるとケモミミは無くなっていて夢かとも思ったが違うとばかりに床で寝たことの腰の痛みと俺たちが遊んだ猫じゃらしと縄が残っているのだった。
あとからエストニアやラトビアから知った情報だけどケモミミは触れることで感染するらしい。俺がポーランドの家に遊びに行った日、不幸なことにラトビアは既にプロイセンから伝染していたロシアからの”ぎゅっぎゅっ”で伝染したようだ。
世界会議の休憩時間はまだ少し余っている。たまたま席が近かったから椅子に座ったまま会話をする。
「結局何だったんでしょうね、あれ。」そうなのだ、結局不明のままだったのだ。「イギリスさんとかの仕業だったりしますかね、あの人見えないお友達いるみたいですし、」ラトビアも兎耳がもうとれたようで片鱗は全く残っていない。「どうだろうね、」不意にぞくりと寒気がする「日本くんの仕業だったみたいだよ、うふっ」「「「ロシアさん!?」」」「日本くんの家ではよくあることらしいんだけど触れたら感染するから大陸側にも広がっちゃったみたいだね。早く会ってお話ししたいな」いきなり現れたロシアさんに俺たちは首を縦に振るしかないのだった。